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2020.09.17
おやすみベートーヴェン 第277夜【作曲家デビュー・傑作の森】

「4本のトロンボーンのための《3つのエクヴァーレ》」——旅先リンツで結んだ親交から生まれた葬儀用作品

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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旅先リンツで結んだ親交から生まれた葬儀用作品「4本のトロンボーンのための《3つのエクヴァーレ》」

1812年の末、ベートーヴェンは薬剤師として成功していた弟ヨハンと、未婚の母であったテレーゼ・オーバーマイヤーの結婚を諦めさせるためにリンツに滞在しています。1ヶ月に及んだ滞在で、さまざまな説得を試みたベートーヴェンですが、結局は2人の結婚式を見届けることとなりました。

一方、リンツの街はウィーンの大作曲家の来訪に好意的で、公の演奏こそなかったものの、さまざまな出会いもありました。

ベートーヴェンはリンツ大聖堂音楽監督のフランツ・クサーヴァー・グレッグル(1764-1839)と親交を結んでいる。グレッグルは音楽家であると同時に美術書と音楽書を扱う書店の経営者でもあった。さらに音楽教育に関する多くの著書を残した研究者でもあり、『オーストリア国家音楽新聞』の発行者でもあった。

(中略)

熱狂的なベートーヴェン音楽の支持者を自認するルートヴィヒ・ニコラウス・フォン・デーンホフ伯爵の夜会では、ピアノの即興演奏を繰り広げた。大聖堂楽長グレッグルの要請により葬儀の際に演奏する「4本のトロンボーンのための《3つのエクヴァーレ》」WoO30を作曲し、プレゼントしている。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)134-135ページより

エクヴァーレとはラテン語で「イコール」であり、古くは「同じ声/楽器で演奏される作品」の意味でしたが、この時代のオーストリアでは「複数のトロンボーンで演奏される葬儀用の作品」を指していました。

この《3つのエクヴァーレ》は、1827年3月29日、ベートーヴェン自身の葬列でも演奏されることになります。

作品紹介

「4本のトロンボーンのための《3つのエクヴァーレ》」WoO30

作曲年代:1812年11月(ベートーヴェン41歳)

出版:1888年

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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