プレイリスト
2020.10.15
おやすみベートーヴェン 第305夜【不滅の恋人との別れ】

トライチュケのジングシュピール《凱旋門》への終曲合唱《成就せり》——フィデリオ・コンビによる愛国的な作品

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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フィデリオ・コンビによる愛国的な作品 トライチュケのジングシュピール《凱旋門》への終曲合唱《成就せり》

1814年からオペラ《フィデリオ》の最終稿のリブレット改訂でベートーヴェンと親しくしていた、ウィーンでもっとも人気のあった劇作家トライチュケは、ウィーン会議期間に外国から訪れる王侯貴族の前で、オーストリアの優位を印象づけて、誇示するような愛国的なジングシュピール《凱旋門》を1815年7月に上演した。

 

このジングシュピールのためにベートーヴェンは、作曲中のチェロ・ソナタの筆をいったん止め、7月上旬の短期間にオーケストラ伴奏によるバス独唱と混声四部合唱のための終曲合唱《成就せり》を作曲した。

 

バス独唱による「成就せり(すべてが終わった)! われらが祈りは主に届いた、主は民の願いをお聞きになられた、お守りくださった。成就したのだ」と歌い、合唱は「成就せり!」を繰り返す。

解説: 平野昭

この曲も、長く続いたウィーン会議のための作品です。祝祭的な雰囲気に溢れて、バス独唱に合唱が続く構成は後の「第九」第4楽章の歓喜の歌も思わせます。曲の最後にはハイドン作曲、現在のドイツ国歌である「神よ、皇帝フランツを守り給え」が引用されています。

ゲオルク・フリードリヒ・トライチュケ(1776〜1842)
ライプツィヒ生まれ、ウィーンに没した劇作家、翻訳家で鱗翅目(蛾と蝶)学者でもあった。
作品紹介

トライチュケのジングシュピール《凱旋門》への終曲合唱《成就せり》WoO97  

作曲年代:1815年7月(ベートーヴェン44歳)

出版:1815年7月(ピアノ版)

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