歌曲「いずれにしても」——人生を達観したような詩をベートーヴェンが見事に表現
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
人生を達観したような詩をベートーヴェンが見事に表現 「いずれにしても」
シューベルトの歌曲《夕映えの中で》D.799や《孤独な人》D.800の詩人としても知られるカール・ラッペ(1773~1843)の詩に、おそらく1816年の暮れ(あるいは17年の年明け)に作曲されたもの。ギムナジウムの教師もしていたラッペの、人生を達観したような小気味よい詩を、ベートーヴェンは見事に表現している。
「北であろうと南であろうと、おんなじさ。ただ、温かい胸のうちに美とミューズの聖域が栄えるなら、また、神々しい天国が栄えるならば!」
「貧乏であろうと金持ちであろうと、おんなじさ。桃であろうとプラムであろうと。命の木から果実をもぎ取る、君は太い幹から、僕は細い小枝から。味わう楽しみが御馳走の価値を決めるんだ」
「眠であろうと死であろうと! ようこそ双子の兄弟よ! 1日が終わり、君たちは目を閉じる、夢は世間の幸せか不幸せ。短い1日、速く消え去る一生。どうしてそんなに美しく、そんなに急いで飛び去るのだ? 眠であろうと死であろうと」
ヘ長調、8分の6拍子、かなり生き生きと、決然と。21小節の有節歌曲で全7節が歌われる。
解説: 平野昭
ラッペの「北であろうと南であろうと、おんなじさ」「貧乏であろうと金持ちであろうと、おんなじさ」という詩、潔いですね。解説に出てきたシューベルトの歌曲もあわせて聴いてみましょう。
シューベルト:歌曲《夕映えの中で》D.799、《孤独な人》D.800
「いずれにしても」 WoO148
作曲年代:1816/17年(ベートーヴェン46/47歳)
出版:1817年2月15日
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