歌曲《あきらめ》——行進曲調の律動感にのせて切ない気持ちを歌う
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
行進曲調の律動感にのせて切ない気持ちを歌う 歌曲《あきらめ》
8分の3拍子ながら、どこか行進曲調の律動感をもつニ長調の歌曲。ベートーヴェンは、ドイツ語で歌唱法を指示している。「歩いているような動きあるテンポで。感情をこめて、しかし、決然として、しっかりアクセントを付け、話すように」と。
詩はパウル・フォン・ハウクヴィツ伯爵(1791~1856)によるもので、早くも1814年暮れから15年の春にかけて使われていたスケッチ帳に作曲の着手が窺え、1816年暮れには4声部の合唱(重唱)のスケッチも見られるが、これは完成されず、独唱曲として最終的に1818年3月までに完成させている。
4小節の前奏と後奏のついた全49小節の通作歌曲。「消え去れ、消えろ、我が光(灯)よ! お前が必要とするものはここから去ってしまった、二度と見つからないだろう。これからお前はそれなしで生きてゆかねばならない」「かつてお前は楽しげに燃えていた、だが、今や空気は盗まれてしまった。空気が絶えれば、炎はさまよい、それを求める。でも見つからない。消え去れ、我が灯(光)よ!」。
解説: 平野昭
あきらめようとしている気持ちが切々と歌われていますね。スランプ期とも言われるこの時期は、小さな歌曲の作曲が続いていますが、ベートーヴェンの表現力は十分に感じることができます。
歌曲《あきらめ》WoO149
作曲年代:1816年末/17年初頭(ベートーヴェン46/47歳)
出版:1818年3月31日
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