2020.10.30
おやすみベートーヴェン 第320夜【不滅の恋人との別れ】
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第3楽章——後世の作曲の前に立ちはだかる巨大な壁
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
後世の作曲の前に立ちはだかる巨大な壁 ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第2楽章
ベートーヴェンの全ソナタの中でも特別な作品として語られることが多い《ハンマークラヴィーア》。それはなぜなのでしょうか。
平野 この曲だけ「ハンマークラヴィーア」という呼び名が残ったのは、恐らくリストやシューマンなど後続の作曲家が高く評価したことも関係しているでしょう。
小山 確かに、この曲はリストやクララ・シューマンも演奏していますし、非常に高く評価していますね。
平野 さらに重要なことは、このソナタを彼らが体感したことで、ピアノ・ソナタを書くことをやめてしまったということなのです。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)96ページより
ベートーヴェンの後の世代の作曲家たちは、ピアノ・ソナタの発表にかなり慎重でした。シューマンとショパンは3曲、リストは1曲、ブラームスも若いころに3曲。この《ハンマークラヴィーア》は、後世のドイツ作曲家に立ちはだかる巨大な壁だったのかもしれません。
作品紹介
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》op.106
作曲年代:1817年〜1818年(ベートーヴェン47歳〜48歳)
出版:1819年9月アルタリア社他多数同時出版
おやすみベートーヴェン
2020.12.16
弦楽五重奏曲断章ハ長調——最終回! 穏やかな雰囲気に包まれた未完の絶筆作品
2020.12.15
《大フーガ》(4手)変ロ長調——最高傑作の内容を余すところなく反映させたピアノ連...
2020.12.14
「弦楽四重奏第16番 ヘ長調」第3、4楽章——重態のベートーヴェンが見舞い客の実...
2020.12.13
「弦楽四重奏第16番 ヘ長調」第1、2楽章——弟ヨハン邸宅の美しい環境で書かれた...
2020.12.12
「弦楽四重奏第14番 嬰ハ短調」第5〜7楽章——カールの将来についてベートーヴェ...
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2021.03.01
ユーフォニアムが柔和に響く「未来派」の絵画
2021.03.01
ベートーヴェンが劇音楽を付けたゲーテの戯曲『エグモント』〜魅力的な英雄の主張とは
2021.02.28
能における「鬼」の存在とは?能面師・宇髙景子さんに聞く深淵世界
2021.02.26
シューマンが40代を過ごしたドイツ・デュッセルドルフでの思い出
2021.02.26
ショパン国際ピアノコンクール予備予選から本選までの課題曲と審査方法の全貌を解説!
2021.02.25
オンライン能『船弁慶』が3月31日(水)まで公開中
2021.02.25
電話をめぐる恋人たちの喜劇〜“かけない”スマホ時代に思うこと
2021.02.25
ディズニーの名作映画『ファンタジア』をオーケストラと映像のコンサートで楽しもう!