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2020.12.14
おやすみベートーヴェン 第365夜【最後の10年】

「弦楽四重奏第16番 ヘ長調」第3、4楽章——重態のベートーヴェンが見舞い客の実業家に献呈

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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重態のベートーヴェンが見舞い客の実業家に献呈「弦楽四重奏第16番 ヘ長調」第3、4楽章

1826年の秋になると、ベートーヴェンの体調が悪化してしまいます。

「ベートーヴェン重態」の噂はウィーンを越えて広がっていた。シュヴァルツシュパーニア館の病床を多くの人が見舞いに訪れ、短い筆談を交わすか、看病にあたっていたシンドラーやブロイニングに容態を尋ねて帰っていった。

2月中旬の見舞い客の中に、かつてレクイエムの作曲依頼をしてきて実業家のヨハン・ネポムク・ヴォルフマイヤーがいた。その要望には応えられなかったが、代わりに「嬰ハ短調」四重奏曲作品131を献呈することにし、マインツのショット社に宛てた2月22日の手紙でその旨を伝えている(BB2262)。しかし、奇妙なことにショット社から出版された作品131はシュトゥッターハイム男爵に献呈されている。ヴォルフマイヤーにはシュレジンガー社から出版された「ヘ長調」四重奏曲作品135が献呈されることになる。ただ、両作品ともベートーヴェンの死後出版であり、出版契約等が変更されたものと思われる。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)204、205ページより

「嬰ハ短調」四重奏曲作品131がシュトゥッターハイム男爵に献呈されることが決まった経緯については、先日ご紹介した通りです。甥のカールが男爵の軍に入隊したのは、1827年1月のことでした。

生涯最後の弦楽四重奏曲となったこの作品。出版も初演もベートーヴェンの死後に行なわれることとなりました。

作品紹介

「弦楽四重奏第16番 ヘ長調」Op.135

作曲年代:1826年7〜10月

初演:1828年3月28日

出版:1827年9月シュレジンガー社(ベルリン、パリ)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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