
サプライズで樫本大進登場!30周年を迎えたベルリン・バロック・ゾリステン

ベルリンをふくむ主に旧東ドイツの12月の音楽シーンから、コンサートのもようをレポートします。

1975年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2000年よりベルリン在住。著書に『明子のピアノ』(岩波ブックレット)、監修を務めた『おとうさんのポス...
30年という歳月は、アンサンブル団体において大きな重みを持つものといえるだろう。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーを主体にした「ベルリン・バロック・ゾリステン」が、12月7日、ベルリン・フィルハーモニー室内楽ホールで創設30周年を祝う記念公演を行なった。
1995年の創設時から残っているメンバーは、この日、司会を務めたヴァイオリンのライマー・オルロフスキーと、すでに引退していながら今回の公演に特別参加したヴァイオリンのゾルタン・アルマージだけだという。オルロフスキーは創設時のリーダーで2017年に死去したライナー・クスマウルやチェロのゲオルク・ファウスト(在1995〜2010)、コントラバスのクラウス・シュトル(在1995〜2017)など、アンサンブルの礎をつくった往年の奏者たちの名を挙げ、地元の聴衆で埋まった客席は懐かしい雰囲気に包まれた。
記念コンサートだけに、このアンサンブルの「ベスト・オブ」のラインナップ。数多くの共演歴をもつトランペットのラインホルト・フリードリヒがテレマン「トランペット協奏曲」ニ長調を、そしてアルブレヒト・マイヤーが同じくテレマン「オーボエ協奏曲」ニ短調を華やかに奏でると、ホールは一気に華やぐ。
「ゾリステン」と名乗るだけあって、個のレヴェルが高いアンサンブルだ。それを示すかのように、テレマン「三つのヴァイオリンのための協奏曲」では、トゥッティのメンバーによるソロも楽しんだ。筆者にとって感慨深かったのは、続くテレマン「ヴィオラ協奏曲」ト長調。2001年に初めてこのアンサンブル、そしてこの曲をヴォルフラム・クリスト(在1995〜2007)による目の覚めるような演奏で聴いたのだが、ベルリン・フィル新首席のディヤン・メイも、それにまったく劣らぬ見事な腕前だった。
締めくくりは、前述のソリストとリコーダーのドロテー・オーバーリンガーが加わったJ.S.バッハ《ブランデンブルク協奏曲第2番》。アンコールではヴァイオリンの樫本大進がサプライズで登場し、ヴィヴァルディ《四季》から〈冬〉のラルゴを奏するというプレゼントまで添えられた。
レオンスカヤが弾くシューベルト「最後の三つのピアノ・ソナタ」
ここ数年、エリーザベト・レオンスカヤ(p)が弾くコンサートは毎回が特別なものになっている。筆者にとっては、ロシアのウクライナ侵攻直後のとくに緊迫した状況下で弾かれたチャイコフスキーとショスタコーヴィチのピアノ・ソナタ、そして昨年彼女へのオマージュ企画で弾かれたベートーヴェンの最後の三つのピアノ・ソナタは、とくに感銘深いリサイタルとして忘れがたい(会場はいずれもベルリン・コンツェルトハウス)。そして昨年12月16日、ベルリン・フィルハーモニー室内楽ホールで行なわれたシューベルトの最後の三つのピアノ・ソナタのコンサートは、極めつきといえる夕べとなった。

11月に80歳の誕生日を迎えたレオンスカヤだが、演奏の力強さに衰えは見られない。それどころか、一段と巨大な風格を備えたようにさえ感じられる。彼女は舞台に現れると、ほとんど間を取らず、すぐに弾き始める(楽章間も同様で、一見そっけなく映るのだが、音楽のみに身を捧げていると見るべきだろう)。が、音のニュアンスは無限で、シューベルト晩年の音楽特有の「もののあわれ」と天国的な可憐さとの対比の妙が際立つことになる。前半の「第19番」ハ短調と「第20番」イ長調だけで1時間20分を要したが、しっかりしたかたちのある豊かなものを聴いたという充実感が残った。
後半の「ピアノ・ソナタ第21番」変ロ長調は、さらに情感の濃い名演。比類のない美と時折立ち上るトリルに象徴される不穏な空気が同居しながら、長大な第1楽章が形づくられる。第2楽章での、旋律に対して雨の雫のように左手で添えられる音形のタッチのやわらかさは、聴きながら永遠の時間に連れ去られるかのよう。後半の二つの楽章でレオンスカヤはふたたび生のエネルギーを横溢させ、力強く締めくくった。
さらにアンコールとして、シューベルト「4つの即興曲」作品142/D 935から「第2番」変イ長調を、これまた珠玉の演奏で聴かせてくれたレオンスカヤ。この日のチケットは早々に完売となったが、今後一回一回のコンサートが聴き逃せない。





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