声楽のこれからに「希望よ、来たれ!」〜東京二期会によるオペラのガラ・コンサート
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
コロナ禍において、歌の公演は感染リスク対処に気を使うところが多く、とくに合唱を伴うオペラなどは、公演再開にむけて試行錯誤が続けられているようです。
そんななか、東京二期会もまずはコンサート形式の公演から再開。本来ならベルクのオペラ《ルル》を上演していたはずの7月11日、東京文化会館で、豪華歌手勢が揃い、スペシャル・オペラ・ガラ・コンサートが行なわれました。
掲げられたタイトルは「希望よ、来たれ!」。9月に控える新シーズンの幕開けを飾る演目、ベートーヴェンのオペラ《フィデリオ》で、ヒロインのレオノーレが歌い上げるセリフです。オーケストラは東京交響楽団、指揮は沖澤のどかさん。燕尾服姿にレオノーレ感漂います。
3列目まで空席、一つおきに席が空けられた大ホールは上階まで聴衆が入り、多くの人が生の歌声を待ち望んでいたことがわかります。
すばらしい歌い手が次々と名アリアを歌うガラ・コンサートですから、もちろん聴きごたえは十分。しかし同時に、一人ひとりの歌をもっと聴きたい……という、ある意味の欲求不満も少々。
バリトンの黒田博さんがロッシーニ、「私は町のなんでも屋」を歌いながら袖から飛び出してきたときは、こうしてまた舞台上で歌手たちが動き回り、手を取り合い、ときには刺されて地面に倒れながら歌いつづけるオペラの舞台が恋しくなりました。
大トリとなった、テノールの福井敬さんによるプッチーニ「誰も寝てはならぬ」は、圧巻。良い歌声の持つパワー、それに包まれる心地よさを改めて感じる時間でした。
(それと余談ですが、自粛期間中だったことと関係あるのかは不明ながら、バスの妻屋秀和さんの髪がものすごく伸びていて、ワーグナーのオペラの神々みたいになっていました)
実験や検証が進み、適切な対策がとられることで、オペラから喜びを受け取ることのできる日々が、少しずつ戻りそうです。
<第1部>
- ベートーヴェン オペラ『フィデリオ』 序曲
- ベートーヴェン オペラ『フィデリオ』より 「悪者よ、どこに急ぐのだ~希望よ、来たれ!」(ソプラノ 木下美穂子)
- プッチーニ オペラ『トスカ』より 「星は光りぬ」(テノール 城 宏憲)
- ロッシーニ オペラ『セビリャの理髪師』より 「今の歌声は」(メゾソプラノ 中島郁子)
- ロッシーニ オペラ『セビリャの理髪師』より 「わたしは町のなんでも屋」(バリトン 黒田 博)
<第2部>
- モーツァルト オペラ『魔笛』 序曲
- モーツァルト オペラ『魔笛』より 「イシスとオシリスの神に感謝を」(バス 妻屋秀和)
- ベルク オペラ『ルル』より 「ルルの歌」(ソプラノ 森谷真理、ダンス 中村 蓉)
- プッチーニ オペラ『トゥーランドット』より 「誰も寝てはならぬ」(テノール 福井 敬)
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