
ルツェルン音楽祭のベルリン・フィルとコンセルトヘボウ管

期間:2026年8月13日~9月13日
取材・文=笠羽映子
Text=Eiko Kasaba
2026年夏に欧州で行われた音楽祭から、スイスのルツェルン音楽祭のもようから、笠羽映子さんがレポートします。
著名客演オーケストラのうち、今年はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(指揮:キリル・ペトレンコ、8月26・27日)とロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(指揮:サントゥ=マティアス・ロウヴァリ、8月28日)の演奏会を聴いた。前者の第2夜ではアウグスティン・ハーデリヒが独奏を務めたベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」がオーケストラともぴったり合い絶妙。ザルツブルク音楽祭でもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(指揮:クリスティアン・ティーレマン)とブラームス「ヴァイオリン協奏曲」を弾き、今夏ルツェルンのスター芸術家としても数々の演奏会に出演、現在最も活躍し評価されている一人だ。むろん、第1夜のエルガー《エニグマ変奏曲》とチャイコフスキー「交響曲第4番」、第2夜後半のスクリャービン「交響曲第3番」も秀逸で、同楽団の圧倒的な実力に感嘆。28日は、ルツェルンですでになじみ深いヴィキングル・オラフソンが、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」で個性的な演奏を聴かせたが、筆者にはいま一つ説得力に欠けた。他方後半、ロウヴァリはプロコフィエフ「交響曲第5番」で実力を遺憾なく発揮し、フィンランドの指揮者層の厚みを痛感した。
LFCOが現代音楽の多彩な世界を繰り広げる

ピエール・ブーレーズが創設したフェスティヴァル・アカデミーに付随したルツェルン・フェスティヴァル・コンテンポラリー・オーケストラ(LFCO)は、今年も日本をふくむ世界各国から約120名の新進音楽家が参加し、現代音楽の多彩な演奏を繰り広げた(参加費は市民有志の支援などで無料。コーチ陣も充実していて、今年は夕方に路上や広場で、LFCOが現代音楽の多彩な世界を繰り広げる無料の様々な催しも開催し、市民や観光客を魅了)。8月29日のアカデミー最後の管弦楽演奏会(指揮:ペーター・ルンデル)では、招待作曲家マルク・アンドレの聴取の限界に挑む「クラリネット協奏曲」が盟友イェルク・ヴィトマンの独奏で披露され、リザ・リムのロシュ委嘱作(国際的な作曲賞「ロシュ・コミッション」の委嘱作品)《カルニクスを伴ったオーケストラのための協奏曲》が、鉄器時代ケルトの戦闘トランペット:カルニクスを復元した楽器を使ったマルコ・ブラウによる驚異的な演奏で初演され、ジョン・アダムズ《ドクター・アトミック・シンフォニー》は、今年のテーマ「アメリカの夢」とも関連し、作品精神を理解した熱演だった。30日午前は、M.アンドレの超絶技巧を要する独奏曲をコントラバス奏者フランク・ライネッケとクラリネット奏者ヴィトマンの演奏で聴き、午後は室内楽演奏会としてエリオット・カーターやスティーヴ・ライヒ等の作品、ジャラル=カルヴァート・ネルソンの新作《危険にさらされた夢》、最後にクラリネット奏者ドリーン・ケッチェンズのリード、シモーネ・ケラーとジェシー・コックスのサポートで、「ニューオリンズの通りを思って」と題した参加者を巻き込んだパフォーマンス。ネルソンの警告を秘めた創作、ケッチェンズの身に沁みるクラリネットの響きは、聴衆に音楽の本質を今一度問いかけた。企画関係者に敬意を表したい。
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