旭酒造株式會社・桜井博志会長~獺祭の酒造りと音楽に通じる「手作り」の素晴らしさ
音楽家がふだんステージで見せている顔とは違うオフショットを、マリアージュするお酒やお店とともに紹介する新刊『音楽家のマリアージュな世界~エネルギーの源泉をたどる』。この中から抜粋して、いま世間の注目を浴びる企業経営者たちの音楽とのマリアージュをお届けします。そこには熾烈な日々を支えるエネルギー源であり、未来への希望を託された音楽の姿がありました。
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
Part.1 獺祭ストア銀座で(東京・銀座)~オーケストラ理事長として音楽と関わる
東京・銀座四丁目交差点にほど近いビルの1階に、日本酒の「獺祭」を飲ませるおしゃれな店構えの「獺祭ストア銀座」が入っている。
この獺祭ストアに、ある冬の日の朝、ヴァイオリニストで日本センチュリー交響楽団のコンサートマスター、松浦奈々が訪れた。
獺祭を製造・販売している旭酒造株式會社の桜井博志会長はセンチュリー響の理事長でもあり、松浦は会長から誘われて大阪から上京、音楽ジャーナリストの伊熊よし子とともにこの店を訪れた。
店の扉を開けると、桜井会長みずからお出迎え。そしてワイングラスに注がれた獺祭で乾杯!
旭酒造の話や獺祭の作りかたなどを語る桜井会長。一度は当時の社長であった父から勘当されたといい、その父から旭酒造を引き継いだとき、3分の1にまで下がっていた売り上げを、「父への怨念がエネルギー」となって、少しずつではあるが上向きにしていったという。
話を聞いて、松浦はストア内でJ.S.バッハなどを演奏した。音楽と銀座の都会の風景、そして輝く獺祭のグラスが「マリアージュ」し、幻想的な光景にみなが酔いしれる。
演奏が終わって会長が口を開く。
「山口に来ませんか」
山口県岩国市の山中にある旭酒造の本社と獺祭の醸造所を見てもらいたい、そしてそこでもぜひ演奏してもらいたいとのことだ。
そして二人は山口に。
〈協力〉獺祭ストア 銀座 〒104-0061 東京都中央区銀座5-10-2 GINZA MISS PARIS 1階 TEL:03-6274-6420
Part.2 旭酒造株式會社本社へ(山口県岩国市)~音楽も酒造も一期一会
旭酒造株式會社の住所は山口県岩国市周東町獺越2167-4、岩国市の中心からかなり離れた山の中だ。社屋の横を東川が流れ、本社の対岸には隈研吾設計の「獺祭ストア本社蔵」が建ち、その間を同じく隈研吾の設計による芸術的な久杉橋が結ぶ。
その地を訪れた松浦奈々と伊熊よし子は会長による出迎えのあと、使い捨ての白い服に着替え、靴も履き替えて、醸造の現場に向かう。
獺祭ができるまでの、「精米」、「洗米」、「蒸米」、「製麹」、「仕込」、「発酵」、「上槽」、「瓶詰」の8工程を見学した。
その「発酵」の場で、松浦奈々がマスネ《タイスの瞑想曲》を演奏。酒造と音楽のマリアージュ、思ってもいなかった見学となった。
そのあと、本社内にある会長の自宅で座談会を行い、会長と東京での再会を約束して帰路についた。
〈協力〉旭酒造株式會社 〒742-0422 山口県岩国市周東町獺越2167-4 TEL:0827-86-0120
Part. 3 東京で再会(東京・銀座)
夜の銀座。数寄屋橋交差点と四丁目交差点の間の路地を入ったところにあるビルのB1階に「夢酒(むっしゅ)みずき」はあった。ここは旭酒造の社員がプロデュースしている店でもあり、「獺祭」を大きく掲げている。そのなかの個室で桜井会長は待っていた。
山口での思い出を語る3人。出された料理は、宝石のように美しい料理ばかり。また獺祭との組み合わせが絶品だ。
「松浦さん、ここでもなにか演奏しませんか」と会長。
急きょ、店の中央に演奏スペースが作られ、松浦はJ.S.バッハ「メヌエット」を演奏。彼女は「バッハの音楽には手作りの獺祭に通じるものがある」と語る。こうして東京での再会の夜は更けていった。
〈協力〉夢酒みずき 〒104-0061 東京都中央区銀座6-7-6 ラペビルB1 TEL:03-5537-1888
ONTOMO MOOK
伊熊よし子監修、『音楽の友』/Webマガジン「ONTOMO」編
音楽家は演奏会などが終わったあと、お酒や食事を楽しみながら、その緊張をほぐす人が多い。お酒にも詳しく、グルメも多い彼ら・彼女らのいわばオフショットを紹介し、その音楽性はもちろん、ふだんステージや現場で見せている顔とは違う一面を、マリアージュするお酒やお店とともに紹介。それらを通して音楽家の魅力あふれる人間性、彼らの音楽活動に取り組むエネルギーの源を伝える。
また、「食」以外では、「オーディオ」や「美容」、「楽器」など、さまざまな観点からアーティストのエネルギーの源泉となるものを取材。読者がそれぞれの源泉を感じ、至福なひとときを過ごしていただけるような1冊。
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