大阪を拠点にする4団体のオーケストラが集結! 万博開催を記念した特別プログラム
大阪を代表する4楽団(大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団)がそろう1年に一度のオーケストラの祭典「大阪4オケ2025」。11回目の今年は「大阪・関西万博開催記念」と銘打って行なわれ、各楽団とも邦人作曲家の作品をまじえた選曲となった(5月10日・フェスティバルホール)。
大阪芸術大学卒業後、大手情報誌に勤務。映画を皮切りに音楽、演劇などの記事の執筆、配信を行う。2010年頃からクラシック音楽を中心とした執筆活動を開始。現在はフリーラン...
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
大阪フィルハーモニー交響楽団~ノーブルな中に深いドラマ性
開幕を飾ったのが音楽監督の尾高忠明を迎えた大阪フィルハーモニー交響楽団である。武満徹「《波の盆》組曲」では、弦楽合奏とビブラフォーン、チェレスタなどが織りなすタケミツ・トーンの美しさを大フィル独特の厚みある響きと繊細な質感で表現。またブリテン《4つの海の間奏曲》では、ノーブルな中に深いドラマ性を感じさせる演奏で存在感を示した。
関西フィルハーモニー管弦楽団~熱気にあふれたパフォーマンス
首席客演指揮者、鈴木優人とともに登場したのが関西フィルハーモニー管弦楽団。1曲目に気鋭の作曲家、萩森英明による《東京夜想曲》を取り上げ、都市の夜景を俯瞰するようなイマジネーション豊かな響きを聴かせた。
続くバーンスタイン《シンフォニック・ダンス》では、中盤のマンボで楽団員全員が “マンボ!” のシャウトとともに立ち上がって演奏。手拍子で反応する客席と一体となった、熱気にあふれたパフォーマンスを繰り広げた。鈴木と関西フィルの良好な関係をうかがわせるような、本公演のハイライトの一つともいえる演奏だった。
大阪交響楽団~外山雄三への敬愛に満ちた“和のビート”
20分の休憩をはさんで登場したのが常任指揮者、山下一史を迎えた大阪交響楽団。R.シュトラウス《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》に続いて披露したのは、同団の名誉指揮者で作曲家でもあった故・外山雄三の《管弦楽のためのラプソディ》である。おりしもこの日、5月10日は外山の94回目の誕生日に当たり、〈あんたがたどこさ〉から〈八木節〉まで、敬愛と共感に満ちた“和のビート”は再び大きな熱気となってホールを包んだ。
日本センチュリー交響楽団~新音楽監督・久石譲の作品も
トリを務めたのが新音楽監督、久石譲を迎えた日本センチュリー交響楽団。その久石の《Adagio for 2 Harps and Strings》は、マーラー「交響曲第5番」第4楽章〈アダージェット〉を意識して書かれたという柔らかな色彩感にあふれたミニマル作品だ。
そして最後に置かれたのがストラヴィンスキー《火の鳥》(1945年版)。耳慣れた1919年版の終結部とは異なる力強い弦の響きで「終曲の賛歌」を締めくくり、4時間弱に及んだコンサートは幕を閉じた。
各楽団とも演奏のあとには指揮者をまじえてのトークタイム。そこから定期演奏会のペア・チケットが当たる抽選会へ、という大阪ならではの“緊張と緩和”が楽しい。
2015年の第1回開催以来、年ごとのテーマによっては窮屈さを感じる演奏も見受けられた「4オケ」だが、今年は日本のクラシック音楽受容の大きな節目となった「70年万博」へのリスペクトの中、各楽団の持ち味が活かされた印象。そこに十分な聴きごたえを覚えつつ、では2025年の万博はなにを音楽にもたらすのだろう、という思いも感じた演奏会だった。
〈日程・会場〉5月10日・フェスティバルホール
〈出演/曲目〉①大阪フィルハーモニー交響楽団、尾高忠明(指揮)/武満 徹「《波の盆》組曲」、ブリテン「歌劇《ピーター・グライムズ》」から〈4つの海の間奏曲〉②関西フィルハーモニー管弦楽団、鈴木優人(指揮)/萩森英明《東京夜想曲》、バーンスタイン《ウェスト・サイド・ストーリー》から〈シンフォニック・ダンス〉③大阪交響楽団、山下一史(指揮)/外山雄三《管弦楽のためのラプソディ》、R.シュトラウス「交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》」④日本センチュリー交響楽団、久石 譲(指揮)/久石 譲《Adagio for 2 Harps and Strings 》、ストラヴィンスキー「バレエ組曲《火の鳥》」(1945年版)
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