
京増修史さん(ピアノ)、「もう一度聴きたい」と思われるような演奏家でありたい

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、20の質問を通して演奏家たちの素顔を紹介していきます。第17回は、ピアニストの京増修史さんにご登場いただきました。

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
1996年生まれ。昨年の第19回ショパン国際ピアノコンクール本大会に出場し、大きな注目を集めた逸材。4歳でエレクトーンに触れたのを機にピアノを始め、故・石川哲郎氏(音楽評論家・『音楽の友』筆者)のもとで研鑽を積み、東京藝術大学および同大学院を修了。穏やかな物腰の奥にある、音楽への熱い情熱。ピアノのみならず多彩な引き出しを持つ、京増さんから目が離せません。

宮城県仙台市出身。4歳からピアノを始める。東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を首席で卒業し、安宅賞、夢大クラヴィーア賞、アカンサス音楽賞、同声会賞、三菱地所質を受賞。また同大学大学院修士課程音楽研究科修了時、藝大クラヴィーア賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。第18回(2021年)、第19回(2025年)ショパン国際ピアノコンクール本大会に出場。
現在はソロ演奏の他、器楽、声楽、合唱の伴奏、アンサンブルなどの活動も積極的に行い、後進の指導にも当たっている。ピアノを石川哲郎、田代慎之介、津田裕也の各氏に師事
音楽と物語の共通点は「余白」
Q1 小学生のころ、好きだった教科は?
音楽と国語が好きでした。
国語の教科書に載っている作品はよい物語が多く、おもしろいですよね。大人になったいまでも覚えています。『ごんぎつね』はとくに好きな作品でした。
算数や理科と違って、国語や音楽には答えが一つではない「余白」がありますよね。その解釈の広さにおもしろさを感じていました。
Q2 自身をどんな性格だと思う?
ものすごくネガティブで不安症、あまのじゃくな性格です。でも頑固なところもあって。友達は少ないタイプだと思います(笑)。
Q3 好きな食べ物は?
「茶色いもの」です。唐揚げ、チャーハン、餃子、ラーメンなど…… そのなかで健康的な食べ物は納豆くらいでしょうか(笑)。
先輩がたから「脂っこいものは20歳代の若いうちに食べておけ!」と教わったので、とんかつだったらヒレよりロース派です。
Q4 嫌いな食べ物は?
パクチー。基本的にクセのあるものが苦手ですね。
完全に「子供舌」で、シイタケ、グリーンピース、枝豆も得意ではないです。
Q5 本番前の勝負メシはある?
ないですね。バナナを食べたりはします。緊張するとあまり食べられないので、本番後にガッツリ食べます。

最近の練習ルーティンは『ハノン』
Q6 好きな作曲家は?
気分で変わりますが、最近はショパンを演奏することが多いので、その練習に疲れるとモーツァルトやシューベルトを聴いてリラックスしています。温かい音楽が好きです。
モーツァルトは小品とか変奏曲、シューべルトは歌曲がすてきですよね、即興曲も好きです。
Q7 合唱の伴奏もされているのですか?
はい。いろいろなご縁があって、学生時代から合唱や歌曲の伴奏をしています。
歌が好き。でも自分が歌うのはNGです(笑)。聴くのと、伴奏をするのが大好きなのです。
ショパンをはじめ、クラシック音楽において「歌」はすべてに通じるものだと思います。歌の呼吸や息づかいなどはとても勉強になり、演奏する際にも大きく活きています。
Q8 いつか演奏してみたい曲は?
いくらでもありますが(笑)、師事していた石川哲郎先生が愛奏していたJ.S.バッハ《フーガの技法》や《ゴルトベルク変奏曲》のような大曲に挑戦したいです。室内楽の経験も積んでいきたいですね。
Q9 憧れの演奏、演奏家は?
ベートーヴェン演奏だったらアルフレート・ブレンデル、モーツァルトだったらマリア・ジョアン・ピリスです。
Q10 練習にルーティンはある?
とくにありませんが、最近は『ハノン』を使って、スケール、アルペジオなどの基礎をやり直しています。年齢を重ねるにつれて指が動かなくなっていくのを感じていて…… 時間のあるときに技術を磨くようにしています。
Q11 音楽や、ピアノの勉強を「辛い」と感じたこと、時期はある?
しょっちゅうありますよ!
思いどおりに弾けないときもたくさんあるし、コンクールでも否定されたように感じる経験を何度もしてきましたから。
昨年のショパン国際ピアノコンクールでは、「コンクール」だと思わないようにして、自分の思う音楽の本質を大切に、練習を重ねました。
Q12 座右の銘は?
「努力に勝る才能はない」です。
僕は才能型ではなく100パーセント努力型、人の数十倍ぐらい練習しないとダメなタイプ。この言葉は中学時代の学校の先生がおっしゃっていたのですが、なるほど! と納得した言葉でした。

バカリズム脚本の作品が大好き!
Q13 長期のお休みがあったら、なにをしたい?
旅行! 自然豊かな場所に行って、時間の流れを忘れたい。できれば電波の届かないところでデジタルデトックスをしたいです。
昨年の夏に熊本に行ったのですが、夜空の星がとてもきれいで、星座をみるツアーにも参加しました。とてもよかったです。
Q14 好きな本は?
ミステリー小説が好きですね。東野圭吾作品はたくさん読んでいます。
とくに「加賀恭一郎シリーズ」が好きです。犯人を捜しだす過程が切なくて、悲しいのです。ドタバタ劇よりも人間模様が繊細に描かれる作品が好きですね。
Q15 感動した美術作品は?
数年前、ルーヴル美術館で見たレオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』。作品と対峙して、なにか吸い込まれるような、特別な力を感じましたね。
Q16 好きなドラマは?
バカリズムさんの脚本作品が大好きです。とくに『架空OL日記』は何度も繰り返し観ています。
このドラマには、「起承転結」がほとんどありません。OLの日常を切り取っているだけ。不思議なのはOL経験のない僕でも「あるある!」と共感してしまうところです(笑)。
3度目に観たときに気づいて鳥肌が立ったのですが、バカリズムさん演じる主人公だけ、劇中で一度も名前を呼ばれない。ほかの登場人物はあだ名で呼び合っているのに、彼(彼女)だけは名前が出ず、役名も単に「私」なのです。この驚きの仕掛けが、自然な流れのなかで突然伏線回収として出てくる。その構成力にも脱帽です。
来年からのバカリズムさん脚本の連続テレビ小説も楽しみにしています。
Q17 趣味は?
ディズニーランド&シー。年に2、3回くらい行きますが、それでは足りないので、最近はYouTubeでトーク番組やVLOGも見て楽しんでいます(笑)。
ディズニーの世界観、そして妥協しない姿勢やプロフェッショナルなショーは、同じ舞台に立つ者としてひじょうに勉強になります。僕たちのピアノ・リサイタルも大きな括りでいうとエンタテインメントであり、一度つかんだら離さないリピーターを生む力は、音楽家としても目指すべきところです。
Q18 会ってみたい作曲家は?
やっぱりショパンに会いたい。自身の作品だけが課題曲になっているショパン・コンクールをどう思っているか、あとショパンが現代のピアノに出合ったらどんな弾きかたをするのか気になります。
Q19 これまで音楽、ピアノを続けてこられた理由は?
憧れている先生――石川哲郎先生がいたからだと思います。ずっと先生の背中を追いかけてきました。練習はつらいですが、たくさんの人に聴いていただける機会が増え、一流のピアノ、ホールで弾ける瞬間には「いままでがんばってきてよかったな」と報われるような気持ちになります。
Q20 20年後、どうなっていたい?
生きているかな?(編集部註:ショパンの享年は39歳)。演奏だけではなく、教えることにも興味があるので、その方向でもうまくいけばよいなと思います。作品や作曲家に謙虚であること、尊敬の念をつねに持っていることを大切にするように習ってきました。その気持ちが何十年経っても変わらず持てていたらよいなと。
そしてなにより、いま演奏会に来てくださっているお客さまが20年後も変わらず聴きに来てくださっていたらうれしいです。
話は戻りますが、ディズニーはリピーターが多数ですよね。僕もリピーター90パーセント超えを目指して、何度でも聴きたいと思ってもらえるような演奏家でありたいと思っています。

日時:2026年2月11日(水)18時
会場:なかのZERO 大ホール
出演:和田一樹(指揮)、京増修史(p)
曲目:ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」
問合せ:liberal.ensemble.orchestra@gmail.com
詳細はこちら
京増修史のデビュー・アルバムとなる新譜『Chopin: 24 Preludes, Op.28』がkKy recordsからリリース。プロデュースは。ヴァイオリニストの﨑谷直人。1月28日発売。
詳細はこちらから
『音楽の友』2026年1月号(12月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、京増修史さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!
「音楽の友」2026年1月号記事詳細はこちら





関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest














