
「第九」で学ぶ!楽典・ソルフェージュ 第8回 和音1. 和音の度数と種類

音大受験生や音大生はもとより、楽器や歌、音楽鑑賞を楽しむ人までを対象にした、楽典とソルフェージュの連載。国民的人気曲「第九」を題材に、楽しみながら耳を育て、スコア・リーディングにも挑戦! 楽典の学びを実践するエクササイズで、表現力やアンサンブル能力を磨きましょう。
今回から和音に入ります。これまでの音程、音階を応用して、音楽の根底を支える和音の基礎を学びましょう。
【楽典】
和音とは、高さの異なる2つ以上の楽音が同時に響き、合成された音のことをいいます。
・和音は、通常3度ずつの音程を積み重ねて作られています。この状態を基本形といい、その構成音を、低い音から根音、第3音、第5音etc.と呼びます(譜例1)。
・広い音域にわたる和音を判別するときにも、基本形に戻して考えます。
譜例1

1.三和音と和音の度数
三和音は3つの音からなる和音です。長調と短調の音階の上に三和音を作っていきましょう(譜例2)。
短調では、和声短音階を用いることが多いです(自然短音階を使うこともあります)。音階の各音を主音から順にⅠ、Ⅱのようにローマ数字で記し、その上に作られる和音をⅠ度、Ⅱ度のように呼びます。
譜例2

2. 和音の機能
それぞれの和音には調性の中での固有の役割「機能」があります。とくに重要であるⅠ、 Ⅳ、 Ⅴを主要三和音といいます。
主要三和音の機能

3. 四和音
四和音は4つの音からなる和音です。三和音に根音から7度上の音が加わるため、七の和音という言い方が一般的です。とくに多く使われる和音としてⅡ7、Ⅴ7、Ⅶ7の和音(譜例3)が挙げられます。
ⅡはⅣと同じSに、ⅦはⅤと同じDに属しています。
譜例3

4. 和音の種類
三和音は、根音と第3音、根音と第5音の音程により判別します。
七の和音は、三和音の種類と根音から第7音の音程により判別します。
それぞれの和音は固有の響きの特徴がありますから、音楽の性格や、緊張と弛緩などに深く関わっています。
譜例4

【エクササイズ】
1. 和音の種類を答えよう
譜例2の長調、短調の各音度の三和音、譜例3の四和音(七の和音)の和音の種類を答えましょう。固有の度数に対応する和音の種類を覚えると、響きに対する感性=和声感覚を高めることができます。
譜例2

譜例3

答え:
譜例2
ハ長調:Ⅰ→長三和音、Ⅱ→短三和音、Ⅲ→短三和音、Ⅳ→長三和音、Ⅴ→長三和音、Ⅵ→短三和音、Ⅶ→減三和音
ハ短調:Ⅰ→短三和音、Ⅱ→減三和音、Ⅲ→増三和音、Ⅳ→短三和音、Ⅴ→長三和音、Ⅵ→長三和音、Ⅶ→減三和音
譜例3
ハ長調:Ⅱ7→短七の和音、Ⅴ7→属七の和音、Ⅶ7→減五短七の和音
ハ短調:Ⅱ7→減五短七の和音、Ⅴ7→属七の和音、Ⅶ7→減七の和音
2. ピアノで弾いて、歌ってみよう
2.で答えた和音の響きをよく聴きながら、根音から順番にピアノで弾いたり、歌ったりしてみましょう。
3. スコアから和音を答えよう
次の楽譜は、「第九」第4楽章80小節からのチェロ・コントラバスの旋律と、その他の楽器に分けて大譜表に要約したものです。この部分はニ長調です。
①~⑤で使われている和音の度数と機能、種類を答えましょう。

答え:
① Ⅴ7/D/属七の和音、②Ⅰ/ T/長三和音、③Ⅳ/S/長三和音、④Ⅴ/D/長三和音、⑤Ⅰ/T/長三和音
4. 聴いて確かめよう
楽譜の和音を歌ってから、その部分を聴いてみましょう。主要三和音でD、T、S、D、Tと進み、調性のニ長調を明確に示しています。そしてこの後、92小節から歓喜の歌のテーマに入ります。
(46:11~)
いかがでしたか? 低音のメロディと、それに相槌を打つ和音が、確信をもって歓喜の歌へ進んでいく力強さを感じさせますね。
次回はもう少し和声に踏み込んでいきます。





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