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2025.04.08

角野隼斗アップライトピアノプロジェクト第Ⅱ期始動!自分のために弾くピアノを多くの人に

4月7日・スタインウェイ&サンズ東京にて

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「子どもたちに、音楽をつなぐ」ことをコンセプトに、ピアニストの角野隼斗さんが2023~2025年のツアーで使用した特別なアップライトピアノを貸し出す「角野隼斗UPRIGHT PIANO PROJECT」。

この“かてぃんピアノ”はハンマーと弦の間にフェルト布が設置され、籠ったような幻想的な弱音がとても印象的。角野さんと調律師が試行錯誤しながら作り上げた特別な音です。音を外に向けて飛ばすために出すグランドピアノと違って、アップライトピアノには「自分とピアノの個人的な空間がある。誰かに聴かせるためではなく、自分のために弾くピアノを、多くの人に経験してほしい」と、角野さんはプロジェクト始動の会見で語っていました。

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さて、このピアノがプロジェクト第Ⅰ期で全国17か所を巡ったということで、その報告と第Ⅱ期始動に関する会見が4月7日に都内で開かれました。

第Ⅰ期は2023年7月にスタインウェイ&サンズ東京からスタートし、9月には福井の「越前モノづくりフェスタ2023」へ。続いて山梨の銘楽堂では、ピアノサロンで自分とピアノだけの音空間が生まれました。10月には東京の「KIOI JAZZ WEEK」で、「お気に入りの曲をジャズ風に弾いてみよう」という子ども向けワークショップで活躍。

続いて富山の国宝、瑞龍寺へ。長い歴史の中で、多くの人が座禅を通じて「自分と向かい合う」ことが行われてきた場所です。個人のピアノ教室が主催し、予約制にしたことから遠方からも参加がしやすく、申し込みの半数以上が大人だったそう。昔の台所だった場所にピアノを置き、神聖な空気の中で扉をしめ切って、自分とピアノだけの時間を満喫。

その後は長野の青木村郷土美術館へ。初公開の仏像展とあわせてピアノを設置し、お経とピアノの即興コラボも開催。遠方からも大勢の方が訪れ、初対面同士で連弾する方もいて、まさに「ピアノが人をつなぐ」展開に。

11月には広島の平和文化月間の取り組み「ひろしまストリートピアノ」として開催、12月には東京の玉川高島屋S・Cへ。家族で来られる方が多く、近くに住む高齢の方が毎日聴きにこられたり、年齢の枠を超えたコミュニケーションが生まれました。

2024年3月には広島の三原市芸術文化センターポポロ、4月には山口情報芸術センター、5月には「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024 丸の内エリアコンサート」へ。

続いて新潟の柏崎市文化会館アルフォーレでは、メインホールで観客を入れずにひとりでピアノと向き合う贅沢な体験が可能に。これを機会にピアニストを目指す若い人たちがホールを訪れるようにもなったそうです。

7月は角野さんの日本武道館デビュー公演の会場に展示。京都を経て、8月にはサントリーホールのブルーローズで “かてぃんピアノ” の専属調律師・按田泰司さんによるセミナーが開催。広島を経て、11月には東京都品川区にある朋優学院高等学校へ。現役の高校生たちが学校と交渉して学内に新たに音楽祭を立ち上げ、費用や時期、設置場所などの問題を1つずつクリアしながら、1年半をかけて準備したそうです。「生のピアノの音に触れてほしい、高校生という多感な時期にこそ音楽が必要だ」ということを訴えるものでもあったといいます。

会見に出席した主催者の皆さんには、それぞれ角野さんから、トイピアノが贈呈されました

角野さんは、「このピアノは本当にいいピアノなので、たくさんの人に弾いてもらえたらいいなというピュアなモチベーションだったのですが、どういうふうに活用してくれるのかは、まだ全然見えなかったんです。

でも第Ⅰ期を終えてみて、主催者の皆さんの工夫によっていろいろな形で活用されて、このピアノを通して人と人とのつながりが生まれたことも、本当に嬉しいことだと思っています。イベントとイベントの間にもつないでいくという交流があったのは、ピアノが移動するということ自体もよかったのかなと思います。

子どもから大人までいろんな層の方に自由に、上手いも下手も関係なくこのピアノを楽しんでもらえたというのはいいポイントだったと思うので、第Ⅱ期もたくさんの方にこのピアノを楽しんでもらえたらいいなと思っています」。

最近ストリートピアノで話題になった「誰かに届いてこそ音楽です」という注意書きについて、考えを巡らせていたという角野さん。

「誰かに届かなくても音楽であることに変わりはないし、逆に誰かに届けなきゃいけないと思ってしまったら、ピアノの前に座る勇気が出ないかもしれない。上手くなければ弾いてはいけないとか、そういうことではなくて、誰にでも弾いてほしい。このピアノの音を楽しんでほしいという想いでこのプロジェクトがあるので、ぜひこれからも応援をよろしくお願いします」。

“かてぃんピアノ” の機種はスタインウェイK型。上前板が外されて、透明な板が張られています

また、「子どもたちに、音楽をつなぐ」というコンセプトに関しては、「どういうわけか常々考えている」という角野さん。「このピアノは中身が見えるので、どういうふうにピアノの音が鳴るのかということを視覚的にも理解しながら弾くことができるのは、面白いポイントではないかと思います。

さらに、このピアノのフェルトを噛ませた特別な音は、グランドピアノを演奏する感覚とはまた違うと思うので、音の違いがどうなっているのかということにも注目したらきっと楽しいんじゃないかなと。

僕が音楽の楽しさを子どものころから知ることができたのは親のお陰だと思うし、大人が子どもを何とかして楽しませようとしてくれた結果でもあると思うんですね。なので、僕も大人になりましたけど、音楽をこんなに楽しんでいることを伝えながら、ピアノを全力で楽しんでくれる子どもたちが増えたらいいなと思っています」

角野さんによれば、NHKの番組「街角ピアノ」でニューヨーク編を撮影した際、誰も何の遠慮も恥じらいもなく、弾きたいから弾くんだという感じで、弾き語りをする人あり、ライブみたいに盛り上げる人あり、それに興味のある人は反応するというように、ストリートピアノの雰囲気も日本とはかなり違いがあったとのこと。この “かてぃんピアノ” が日本を巡ることで、どう聴かれるかを気にする前に、まず自分が楽しもう、という「piano for myself」のマインドが広がっていくといいですね。

「角野隼斗UPRIGHT PIANO PROJECT」第Ⅱ期の対象期間は2025年6月~2026年3月に実施される企画で、応募受付は2025年5月1日~25日。なお、7月、8月は子どもや学生向けの企画が優先されます。第Ⅱ期募集に先駆けて、5月のゴールデンウィークには、サントリーホールで開かれる「子ども音楽フェスティバル」に設置。募集企画は「子どもたちに音楽をつなぐ」というコンセプトに賛同し、実現可能で、現場に必要な許可を得ている企画。また入場無料のイベントであること。ピアノのレンタルは無料ですが、東京からの運搬費、調律費、期間中の管理費などは主催者側の負担。設置可能期間は最大2週間で、採択企画数は計10件程度を予定。詳細は公式サイトを参照。

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