イギリス国歌《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》による7つの変奏曲——イギリスの音楽出版社経営者との文通から生まれた作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
イギリスの音楽出版社経営者との文通から生まれた作品 イギリス国歌《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》による7つの変奏曲
現在の英国の王はエリザベス女王であるので、曲名は《ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン》(神よ女王陛下を守り給え)で、歌詞内容も女王ヴァージョン。
しかし、旋律は18世紀から変わっていない。実は、これは法律で「国歌」と制定されていないばかりか、いつだれが作曲したかも不明。
ベートーヴェンは、1803年春ころにイギリスの音楽出版社経営のジョージ・トムソン(1757~1851年)と手紙で交流し始め、これがきっかけとなって作曲されたと思われる。
ハ長調、4分の3拍子、14小節の主題。決して優しく愛らしい変奏ではなく、早くも第1変奏から前半が3声部、後半では4声部となるポリフォニックな変奏。第5変奏は3連音符が支配するミノーレ変奏(ハ短調)で、第6変奏は4分の4拍子のアラ・マルチャ(行進曲風)変奏。最終変奏は前半が4拍子で、後半のコーダ部で3拍子に戻る。
解説 平野昭
現在もイギリス国歌として親しまれている旋律が、ベートーヴェンの手によって、聴きごたえのある変奏曲に仕上げられています。ジョージ・トムソンは、8月以降に紹介する予定のスコットランドなどの民謡の編曲を依頼した人物でもあります。
イギリス国歌《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》による7つの変奏曲WoO78
作曲年代:1803年夏(ベートーヴェン33歳)
出版:11804年3月
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly