流行りのラジカセを使いこなそう!良い音で聴くためのノーマル・カセットテープ入門
今、ラジカセが流行っています。今どきのラジカセはデジタルにも対応し、カセット入門にも最適。そこで、最新のラジカセにベストマッチなノーマルテープについて、メジャーブランドの80~90年代のものを中心にご紹介します。
ラジカセが流行っています……というのは以前もお話ししました。
1970年代、当時の若者たちの間で流行した大きくてゴツいステレオラジカセが、今どきの何でも小型化された昨今では新鮮なのでしょうか。
そんな流行りを取り入れたレトロなスタイルの最新ラジカセが、ネットでも流行っているようです。
カセット入門に最適なラジカセですが、じつはこうしたラジカセにはメタルテープやハイポジション(クローム)テープは使えないことは、ご存知ですか?
今どきのラジカセはデジタルにも対応
昨年、クラウドファンディングMakuakeでラジカセのプロジェクトが立ち上がりました。ドウシシャという、これまでもサンスイ・ブランドのラジカセ(以前ご紹介しました)などを販売していたメーカーのものです。
その最新モデルとしてオリオン・ブランドの70年代風の大型ラジカセ・スタイルを踏襲したSCR-B7が提案されたのです。
結論から言うと目標の5480%、1600万円以上の支援を受け成立。その後SCR-B7は2万円程度で市販もされています。
オリオン電機はかつて存在していた家電メーカーで、ブラウン管テレビやビデオデッキで知られていました。ドウシシャはそのブランドを獲得し、自社製品をオリオン・ブランドで販売しているというわけです。
正直に言ってしまえば、かつて世界を席巻した70年代、80年代の日本メーカーのラジカセには音ではかないません。しかし新製品という安心感、BluetoothやSDカード、USBメモリに対応しているというデジタル対応はなんと便利でしょう!
私もこのラジカセを使っていますが、8割方はBluetoothスピーカーの代わりです(笑)。そして、ストリーミングとBluetoothを使えば、マイベストカセットを作るのも簡単! 改めてカセットの楽しさを実感しています。
最新ラジカセのカセットはノーマルを選ぼう
ところで、カセットといえば最近、中古のメタルテープやハイポジションテープを高いお金を出して買う方がいます。
ただし、こうした最新のラジカセには使えません。録音再生はできますが、設定が合っていないしヘッドの性能も充分でないので、少なくとも実力は発揮できません。最新のラジカセに使用できるカセットテープはノーマルテープのみ、なのです。
もっとも、現在一般的に新品で入手できるカセットテープはノーマルだけなので、わざわざ高価なメタルテープやハイポジションテープを買う必要はないのです。
「でももっと良い音で聴きたい(録音したい)」という方もいらっしゃるでしょう。そういう方には、より良いノーマルテープがオススメです。
ノーマルテープにもグレードがある
現在、手軽に入手できるカセットテープは、メジャーブランドではマクセルの「UR」というテープだけです。100円均一などでも買えますが、そのほとんどはかつての国産カセットのように高性能(高音質)のものではなく、会話や会議などを録音するためのものです。
つまり、ノーマルテープでも高音質のものは中古やネットオークション、リサイクルショップで買うことになるのですが、それでもメタルやハイポジよりもずっと安く買えます。
そこでここからは、メジャーブランドのノーマルテープを80~90年代のものを中心に紹介していきましょう。なおここに紹介しているテープは一例で、同じモデル名でも年代によってデザインや性能は変わっています。
TDKはかつてシェアトップの安定感
TDKは今では電子部品メーカーですが、かつては世界トップの磁気テープメーカーでした。
左列のものは上から「AE」(初代)、「AD」(4代目)、「AD-X」(4代目)、右列が「AR」(5代目)、「AR-X」(2代目)となっています。
70年代、TDKのベーシックなテープは「D」というグレードでした。その高音質版が「AD」(1977年登場。以下年数は初代登場年)です。「D」はその後「DS」(1983年)という派生モデルが登場。その後継モデルが「AE」(1985年)です。
「AD」の上級モデルが「AD-X」(1981年)。さらにハイポジに匹敵する高性能ノーマルテープとして登場したのが「AR」(1983年)。その上級モデルがAR-X(1985年)になります。
正直、「AD」以上のテープは最新ラジカセではトゥーマッチ。「AE」でも充分ですし「AD」なら最高です。
ソニーは洗練されたデザインが魅力
カセットデッキ、ラジカセ、ウォークマンとハードで人気を博していたソニーは、カセットテープでもTDKとシェアを争うメーカーでした。
左列のものは上から「(新)HF」(2代目)、「HF-S」(初代)、「HF-X」(初代)、右列が「HF-ES」(3代目)、「HF-Pro」(3代目)となっています。
最初のHFは1972年に登場。その後HFはグレードごとに「AHF」(1978年)「BHF」「CHF」(いずれも1979年)の3つに分かれます。
その後「CHF」は「HF」(1983年)、「BHF」は「HF-S」(1983年)、「AHF」は「HF-ES」(1984年)に受け継がれ、ユーザーの多様化に合わせて「HF-X」(1987年)が「HF-S」と「HF-ES」の間に、HF-ESのさらに上に「HF-Pro」(1985年)が登場と、ラインナップを拡大しました。
「HF」はソニーのベーシックグレードですが、充分音楽録音に耐える実力派。また「Gokkigen!」(1985年)、「What’s up?」(1985年)、「A-la?」(1988年)、「EXIST」(1988年)、「HIPPOP」(1988年)といったような企画系のビジュアル派カセットが販売されましたが、これらは「HF」や「HF-S」のテープを使用していました。派手なデザインですが、音楽を高音質に録音できる実力がありました。
マクセルは日本のカセットの代名詞
TDK、ソニーに次ぐ3番手のブランドだったマクセルは、じつは日本で初めてカセットテープを国産化したと言われていて、今でもカセットテープを生産している唯一のメジャーブランド。つまり日本のカセットは最初から最後まで(まだ終わってませんが)マクセルとともにあったと言っていいでしょう。
左列のものは上から「UR」(3代目)、「UDⅠ」(2代目)、右列が「UDⅠ-S」(1代のみ)、「XLⅠ」(3代目)となっています。
マクセル初の音楽専用テープはUD(1970年)です。その後上級モデルUD-XL(1974年)が登場。UD-XLは1976年にUD-XLⅠとUD-XLⅡ(ハイポジション)に分かれます。1978年に「XLⅠ」と「XLⅡ」となり、1983年に「UDⅠ」と「UDⅡ」が登場。
また「UDⅠ」には「UDⅠ-R」(1985年)、「UDⅠ-S」(写真のモデル)、「UDⅠ-N」(1987年)といった派生モデルも登場しています。また写真はありませんが「XLⅠ-S」(1980年)がノーマルの頂点としてラインナップされています。
先にも書きましたが「UR」は現在でも新品で、量販店などで手に入ります。また「UDⅠ」も2000年代まで作られていて、中古市場でも相当流通していますが、とても高性能。安定感も抜群です。
ノーマルテープの実力は侮れない
一般的にカセットテープはメタルを頂点に、ハイポジション、ノーマルと価格帯は下がります。しかし最初に登場したノーマルが国産化されたのは1966年、メタルが登場したのは1979年。つまりノーマルは10年以上長く研究されてきました。
またカセットテープがオーディオマニアの間で使われ始めたのも、ノーマルの音楽専用テープが登場したため。ここで紹介したカセットテープはいずれも音楽の録音に充分な性能を持っているのです。実際、現在のオーディオマニアには「ノーマルしか使わない」というマニアも少なくありません。
ぜひノーマルテープの実力を知っていただきたいと思います。
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