読みもの
指揮者の沼尻竜典さんの「ベルリンの壁」崩壊時にドイツ留学していた話から

日本におけるバッハ研究に多大な貢献をしながら、2018年に急逝した礒山雅さん。「まんがでみるバッハの生涯」は、ミュンヘン留学から帰国した直後の1984年に雑誌「音楽の友」11月号に寄稿されました。
バッハという大作曲家の壮大な生涯を鮮やかに簡潔に描き出した決定版! 工藤恒美さんの味わい深いイラストとともに、お楽しみください。
ヨーハン・ゼバスティアン・バッハは、1685年3月21日、テューリンゲン地方(現東独)、ヴァルトブルク城のふもとの町、アイゼナハに生まれた。バッハ家は同地方を中心に根を張る大音楽家一族で、父のヨーハン・アンブロージウスは、町楽師だった。

3月23日、バッハは町の中央にそびえる聖ゲオルク教会で洗礼を受けたが、この教会では、代々のバッハ家の音楽家一族のうちでももっとも才能にすぐれていたといわれるヨーハン・クリストフが、オルガニストをつとめていた。礼拝のたびに彼のオルガンを聴き、また父や周囲の音楽家たちの演奏に接して、バッハは、小さいころから、音楽への愛情をかき立てられたことだろう。

7歳のころ、バッハは、教会裏のラテン語学校に入学した。かつてルターも学んだこの学校で、彼は、ルター主義の精神に基づく教育を受けはじめる。彼はすばらしいボーイ・ソプラノの美声の持ち主であったといわれ、成績も、3歳上の兄をしのいでいた。







