手や足を動かして五感を解き放つ!「アルテ親子まつり」
児童文学者で絵本作家の本間ちひろさんによる、詩とエッセイ。
アーティスティックな世界に往ったり、超現実の生活に戻って来たりと、さまざまな世界に触れることを大切にしている本間さんが、8月4日、武蔵野市民文化会館の「アルテ親子まつり」を体験しました。大人になると失われがちな子どもの感覚を堪能!
1978年、神奈川に生まれる。東京学芸大学大学院修了。2004年、『詩画集いいねこだった』(書肆楽々)で第37回日本児童文学者協会新人賞。作品には絵本『ねこくん こん...
最初の太鼓 ほんまちひろ
最初の太鼓を叩いた人は
マンモスの走る地響きを
聴いただろうか
スタッカートという言葉が
生まれる前から
人はきっと
嬉しくなっては飛び跳ねて
切なくなっては
涙のスラーを描いただろう
子どもが音で遊んでる
太古の昔にさかのぼる
イベントを思い描いた武蔵野市役所のワークショップ
武蔵野市に住んでいたとき、 市民が考え提案するワークショップに、無作為抽出で選ばれて参加したことがあった。他の参加者の意見をきいたり、市役所の方と話せたり、とても楽しかった。わたしは、コンサートでよく行く武蔵野市民文化会館が、市民や子どもたちにさらに親しまれるように、楽器の演奏体験や、子ども向けの音楽イベントがあったらいいな、実際あったら行きたいな、と話をした。
すると先日、市役所の方から「今度、市民文化会館で新しい試みとして、子どもが参加できる音楽まつりがあるのですが、市民ワークショップで話されていたのを思い出しまして……」と、ご連絡いただいた。
あのときの市民ワークショップが、この企画に直接関係しているということはないとしても、大好きな武蔵野市民文化会館で、子ども向けの音楽まつりがあるなんて、なんだかワクワクする!
手作り楽器や伝統芸などを体験!
手作りの楽器にくっつける毛糸のポンポンを作っていたら、ポコン、ポコポコンと心地よい太鼓の音が聴こえてくる。
8月の日曜日、ONTOMOの編集者ママと息子ちゃんたちと遊びに来たのは、武蔵野市民文化会館の「アルテ親子まつり」。朝から夕方まで、館内のあちらこちらで音やリズム、音楽を楽しむ14種類のイベントやワークショップがひらかれる。
子どもの声のはざまに聴こえてくる、不規則で心地よい太鼓の音。いったいどんな演奏家が叩いているのだろうと、あとからそのブースに行ってみたら、子どもたちがかわりばんこに太鼓を叩いていた。自由でのびやかな心でいるとき、子どもは、最高のアーテイストだ。
手作り楽器に集中していたら、あっという間にパレードの時間。子どもたちがロビーに集まって、自分で作った楽器を鳴らし、手作り衣装を身につけて、音楽家の演奏に合わせてパレードをする。館内のちょっとした距離だけれど、にぎやかで、楽しくて、見ている大人にとっても、素敵な夏の思い出になる。
「親子まつり」の最後は、ワークショップをしていたアーティストたちが登場する「造形リズムコンサート」。子どもたちは、客席から作った楽器を鳴らしたり、舞台に上がっていろんな楽器を鳴らして、参加する。
編集者ママの息子ちゃんは、コンサートの間、1回目に舞台に上がるときは、喜んで向かったのに、2回目は、ママの膝から動こうとしなかった。どうしたのかな?と思ったら、「オトバケ、こわいよー」。楽しいお話仕立てのコンサートで登場した、音をたべちゃうオバケ「オトバケ」。
たくさんの子どもたちが、舞台の上に向かっているときに、ママの膝から動かないのは、一見すると、乗り気じゃないようにも見えるわけだけれど、本当は、彼は、ノリノリで最高にそのコンサートの世界を満喫しているのだ。
子どもたちと過ごしていると、はっと、教えられることが、たくさんある。
さて、ここで、「アルテ親子まつり」の企画担当の武蔵野市民文化会館の池口大輔さんにインタビューです!
——今回のようなイベントは、初めての試みだそうですが、企画のきっかけなどあれば教えてください。
池口 芸術の楽しみ方、喜びというのは、高度な芸術を受け取り鑑賞するだけでなく、つたなくとも自分で発信することも大きいと考え、参加型を主体としました。フェスとして、ジャンル横断することで、音楽、アート、ダンスなどの身体表現も実は、心から発して、リズム等にのり体を通して、それを表すのは共通している、と感じてもらえればと思いました。そして、「動き、色、音 ~みんなが体験・みんなが発見~」というサブタイトルになりました。
——参加して、想像以上に楽しかったです。主催者側にとっては、こんなに楽しくなるのは、想定内なのでしょうか?
池口 どうもありがとうございます! 想定内なのか……難しい質問ですね(笑)。個別のイベントがひとつひとつ決まっていって、最後のほうに東京造形大学の石賀直之さんとの企画「ステップでスタンプ」「造形リズム・コンサート」が見えたとき、楽しいイベントになる、と確信しました。
——企画するときに大切にしていることなどがあれば、教えてください。
池口 自分が楽しいと思えることと、お客様が知れば楽しいと思うだろうなと思うことがリンクするものを探します。自分が楽しいと思えることから発熱は始まって、発熱でお客様を巻き込んで「知らなかったけど、面白そうだからきたら楽しかったー、知れてよかったー」となったらいいな、と。
そして、公共ホールで許容できる範囲内で、守りに入らず、攻めのほうが楽しい。「ステップでスタンプ」など絵の具で汚れるものは普通NGかもしれませんが、許容できるギリギリをいったほうが楽しいと思います。
☆ ☆ ☆
池口さん、ステキなお話を、ありがとうございます!
では、次に、ONTOMO編集者ママの息子ちゃんにインタビューです(質問者はママ)。
——何が楽しかった?
息子ちゃん ぜんぶ楽しかったに、決まってる!
息子ちゃんは、家に帰ってから、「パプリカ」を歌いながら手作り楽器を鳴らして演奏会をして、寝るときもその楽器をもって眠ったとのこと。
子どもたちが楽しい、ということ。
それが何より最高で、素晴らしい夏の日曜日でした♡
日時: 2019年8月4日(日)
会場: 武蔵野市民文化会館
主催: (公財)武蔵野文化事業団
制作協力: Harmony Fields、(公社)落語芸術協会
事業協力: 株式会社サクラクレパス
チラシはこちら
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