読みもの
2021.12.09
編集部日記 Vol.22

《くるみ割り人形》の主人公はクララ? マーシャ? マリー?

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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こんばんは、ONTOMO編集部のざっきーです。

クリスマスといえば、バレエ《くるみ割り人形》! ということで、月末には新国立劇場バレエ団の《くるみ割り人形》を観に行く予定です。

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幼いころからバレエを習っていたせいか、序曲を聴くと、「今年も冬になったか~、そろそろクリスマスか~」 という気持ちになります。

ところで、昨日《くるみ割り人形》の主人公「クララ」について、ONTOMO編集部で激論が繰り広げられました。観に行く公演によって、「クララ」が「マーシャ」だったり、「マリー」だったりするのです。

いったいどういうことなのでしょうか?

気になって今日調べてみると、原作であるE.T.A.ホフマンの『くるみ割り人形とねずみの王さま Nußknacker und Mausekönig』(1816年)では、主人公の名前は「マリー」。バレエ版の振付を担当したマリウス・プティパが参照したとされるアレクサンドル・デュマ訳のフランス語版(1845年)でも、「マリー」。

フランス国立図書館(BnF)のサイトでデュマの翻訳した『くるみ割り人形 Histoire d’un casse-noisette』が見られます。主人公の名前はマリーと記されています。ちなみに、訳される際、年齢をはじめさまざまな部分が改変されています。

どうやら、1892年にプティパ演出でバレエ化されたときに、「マリー」から「クララ」へと名前が変わったようです(森田稔『永遠の「白鳥の湖」』という本に、初演時の台本の日本語訳がのっています)。同書によると、ロシアの上演記録では、レニングラードで1929年に上演されたロプホーフ版では「クララ」から、ロシア語のマリー(マリア)の愛称である「マーシャ」に代わっていたそうです。その後、同じくレニングラードで1934年に上演されたヴァイノーネン版(こちらも主人公は「マーシャ」)が後世に残り、今のロシア系のバレエ団に引き継がれています。

今年日本で見れる《くるみ割り人形》でも、新国立劇場バレエ団の演出では「クララ」、東京バレエ団やロシア国立モスクワ・クラシック・バレエでは「マーシャ」になっています。

決して舞台上で役柄の名前が呼ばれることのないバレエですが、主人公の名前にも注目して観に行くと、あらたな発見があるかも?!

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