2020.08.28
My楽器偏愛リレー! vol.1 上野由恵
フルート自慢その1:古代から神々が吹くとされてきた“天上の音”
上野由恵 フルート奏者
東京芸術大学附属音楽高校を経て、東京芸術大学をアカンサス音楽賞を得て首席で卒業。同大学院修士課程修了。第76回日本音楽コンクール第1位を受賞。併せて岩谷賞(聴衆賞)、...
フルートの特徴としてまず語られるのは、明るくて華やかな音色ではないでしょうか。私もそのような音色に魅せられて楽器を手にした一人です。しかし、フルートを知れば知るほど、それだけではない魅力に気づき始めました。
これから3回に分けて、その特徴と魅力をお伝えしたいと思います。
続きを読む
まさに“天上の音”
フルートには、弦やリードのような目に見える発音体がありません。マウスピースに一定の角度から息を吹きかけると、管の中にカルマン渦と呼ばれる気流ができ、それが楽器を振動させることで音が鳴ります。音を出すのに必要なのは、小さな穴のみです。フルート奏者は、その穴に吹き込む息の量、角度、スピードを微調整しながら演奏をしています。
こうして生まれた柔らかい音は常に空間と混ざりあい、この世のものともあの世のものとも言えないような、神秘や幻想の世界を表現することができます。インドの女神クリシュナ、ギリシャ神話の半獣神パンなど、古代からフルートを吹くとされる神様がたくさんいるのも、偶然ではないかもしれません。
さまざまな作曲家がこの特徴を捉え、まさに天上を思わせるような場面に、フルートの音色はよく使われてきました。
フルートを吹くインドの女神、クリシュナ
(作者不詳、1895年頃)
(作者不詳、1895年頃)
フルートの魅力を味わう作品
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
「夏の昼下がり、好色な牧神パンが昼寝のまどろみの中で官能的な夢想にふける」というお話を題材として書かれた作品です。フルートの音の中でも特に柔らかい、中音域の音をふんだんに使い、ギリシャ神話の幻想的な世界を表現しています。
原曲は管弦楽のための作品ですが、今回はフルートとピアノによる編曲でお楽しみください。
My楽器偏愛リレー!
2020.12.12
クラリネット自慢その3:名手に出会った作曲家が円熟期に書いた名曲
2020.12.11
クラリネット自慢その2:1人で4役をこなす広い音域と豊かな個性
2020.12.10
クラリネット自慢その1:小さな音を出すのが得意な構造ならではの多彩なピアニッシモ
2020.11.08
ピアノ自慢その3:歌詞の意味が表す世界へ多声のピアノが一瞬で導く
2020.11.07
ピアノ自慢その2:各楽器の音色を引き立て一緒にハーモニーを作るパートナー!
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2021.02.26
シューマンが40代を過ごしたドイツ・デュッセルドルフでの思い出
2021.02.26
ショパン国際ピアノコンクール予備予選から本選までの課題曲と審査方法の全貌を解説!
2021.02.25
オンライン能『船弁慶』が3月31日(水)まで公開中
2021.02.25
電話をめぐる恋人たちの喜劇〜“かけない”スマホ時代に思うこと
2021.02.25
ディズニーの名作映画『ファンタジア』をオーケストラと映像のコンサートで楽しもう!
2021.02.25
戦禍で生まれ、コロナ禍にも通じるストラヴィンスキー《兵士の物語》のメッセージ
2021.02.23
モデラート:「控えめな、節度ある」ってどれくらいの速さ?
2021.02.22
全国の先生が選んだ卒業ソング~人気ランキング2021【中学・高校編】