ハープ自慢その2:弦にじかに触れる指で、表現が無限に拡がる!
アーティストが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は、吉野直子さんによるハープ自慢です。
ロンドンに生まれ、6歳よりロサンゼルスにて、スーザン・マクドナルド女史のもとでハープを学び始めた。1981年に第1回ローマ国際ハープ・コンクール第2位入賞。1985年...
音を消すことにもこだわり、無限大の表現力に
ハープは、音が出る弦そのものを自分の指で直接はじいて音を出すため、ほんの少しのタッチの差で、音色や表現が繊細に変わります。この点がハープの一番の魅力であると同時に、難しい面でもあります。ほかの楽器でも同じことが言えるでしょうが、同じハープを別の奏者が弾くと、音色がまったく違って聴こえることがしばしばあります。
ハープは、弦を一度はじいたら、振動の減衰と共に音が消えていくので、ピアノのペダルや弦楽器の弓のように、音を持続して延ばすことができません。
そして、楽器全体が共鳴するので、はじいたあとすぐに弦を押さえて振動を止めたとしても響きが残ってしまい、短いスタッカートも苦手です。同じ曲の中で和声が変わっていく際に前の響きが残っていると、ハーモニーが濁って聴こえてしまうこともあります。したがって、ハープを弾く際には音を出すことと同じくらい、消すことに注意を払う必要があります。どのタイミングでどの音を消すかで、音楽の伝わり方が左右されることさえあるのです。
このように、本当に細かいところにまで気を遣いますが、そのぶん、こだわればこだわるほど、表現力のパレットが無限大に拡がっていくのがハープの醍醐味なのでは、と思っています。
ハープの魅力を味わう作品
フォーレ:《塔の中の王妃》
近代フランス音楽の巨匠ガブリエル・フォーレ(1845~1924)がハープ・ソロのために書いた重要な2作品の1つである《塔の中の王妃》。ハープの繊細な響きを駆使した、静かながらも内容の深い作品です。
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