ヴィオラ自慢その1:辛辣なジョークをよそにアンサンブルで豊かな倍音に包まれる
アーティストが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は、ハープの吉野直子さんよりバトンを受け取った川本嘉子さんによるヴィオラ自慢です。
1992年ジュネーヴ国際コンクール・ヴィオラ部門で最高位(1位なしの2位)。1996年村松賞受賞。1997年第7回新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、2015年東...
私たちがヴィオラジョークを言われても笑顔な理由
ヴァイオリンと見た目はほぼ変わらないヴィオラですが、一回り大きくて音程は5度低く設定されています。人の声域で言うとアルトからテノールです。
16世紀頃は、擦楽器のヴァイオリンやチェロのことを総じてヴィオラと呼んでいたようです。というと親分かと思いきや、室内楽や合奏になるといつも縁の下で支える役割ばかり。ヴィオラは中音域で、ヴァイオリンやチェロが入ると聴き取りにくくなるため、ロングトーンやキザミで和声を作る役割を職人のように弾いています。
たまにメロディ? と思い、少し嬉しくなると“裏メロディ”で「私より目立たないでね!」と主役の人からあしらわれてしまう始末。
ヴァイオリンを盗まれないようにするには?
「ヴィオラのケースに入れておく」
脳移植を行なう病院で金額を尋ねると、
「この物理学博士の脳は1万ドル、こちらはNASAのトップ科学者の脳で1万5千ドル。ああそうそう、ヴィオラ奏者の脳もあります。こっちは5万ドルです」
「えっ? 5万ドル? ビオラ奏者が?」
「ええ。新品同様でしてね」
かなりスパイスが効いています(笑)。
でもでも! 私たちは決して怒りません。だって耳元で豊かな倍音がいつも鳴っているんですから! ウットリ幸せ時間を過ごしています。
だから酷いヴィオラジョークを言われてもニコニコしている。懐の深い倍音に育まれて穏な人生を送っています。
でも、ほかのパートより忙しくないぶん、冷静にほかの楽器を分析していたりするので、気をつけてくださいね。
ほかの弦楽器にはない特徴としてもう1つ、サイズに規定がありません。身体に合わせて選べるので、小柄な女性は38cmくらいの大きめのヴァイオリンのようなものを弾いている人もいますし、アメリカのメジャーオーケストラでは、45cm以上の楽器を弾かないと入団が許されないところもあります。
音色も人それぞれで、渋い音や華やかな軽い音を出す人もいます。最近はメジャーになってきたおかげか、ようやく女性奏者も増えてきました。
ヴィオラの魅力を味わう作品
チャイコフスキー:弦楽セレナーデより第3楽章「エレジー」
サブメロディ、キザミの伴奏の末、ヴィオラだけの心の叫びのようなソリ(ヴィオラパートのソロ)。それからテーマに戻り、メロディを弾きます。
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