ヴァイオリン自慢その1:ハートの近くに「私自身の心」と抱きかかえて奏でる
アーティストが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は、ヴィオラの川本嘉子さんよりバトンを受け取った千住真理子さんによるヴァイオリン自慢です。
2歳半よりヴァイオリンを始める。全日本学生音楽コンクール小学生の部全国1位。NHK交響楽団と共演し12歳でデビュー。日本音楽コンクールに最年少15歳で優勝、レウカディ...
ハートに抱きかかえて演奏する唯一の楽器
ヴァイオリンという楽器に出会った2歳3ヶ月の頃、私は大好きなお人形を抱え込むように、その不思議な形の楽器を抱きしめた記憶があります。壊れるのを心配した母に、たびたび取り上げられた記憶もあります。
人間は、大切なものを胸に抱きかかえます。赤ちゃんでも、愛しいひとでも、大切な何かでも、本能的に胸に抱きよせるのです。
そんな、抱きよせる動作から入ったからか、私は物心つくと同時に、ヴァイオリンという存在がかけがえのないものになっていたのです。
まだ2歳の頃の私は、弾くわけでなく、弾けるわけでもなく、ただ兄たちが顎の下に構えて音を出している姿を、ずっとみていました。羨ましくて、なんでも兄たちの真似がしたかった妹だったのです。兄たちが外に遊びに行くと、こっそりその不思議な形の楽器に近づいて、真似をして抱え込みました。
ハートの近くに抱きかかえる構え方が、今でも本当にステキだと思います。心が、そのままヴァイオリンへ移行するようなイメージに、さまざまな空想が生まれました。ヴァイオリンこそが私自身の心なのだと、少女の頃にはそんな夢を抱き、秘密の会話を音に乗せていました。そんなときにはなおさら、私はヴァイオリンをぎゅっと抱え込みながら奏でているのです。
そうやって大切に大切に演奏する楽器こそが、ヴァイオリンなのです。
ヴァイオリンの魅力を味わう作品
我が母の教え給し歌
低音から始まり高音につなげていく温もりある音を、楽器を意識的に深く抱えることで音色が丸くなります。ハートが楽器に染みていく感覚が好きです。
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