ハンガリーのニューイヤーコンサートは 民族舞踊やサプライズなどで超盛り上がる!
ニューイヤーコンサートといえば、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は各地で行なわれ、しかもその地域ならではの内容が盛り込まれたご当地イベントでもあるのです。今回は、ハンガリーで2つのニューイヤーコンサートを指揮した金井俊文さんに、民族舞踏や地元のダンスグループとのコラボレーションを紹介してもらいました。
ハンガリーの首都ブダペストを本拠とし、ハンガリー国立ブダペストオペレッタ劇場アシスタント指揮者を経て、2021年よりハンガリー・ソルノク市立交響楽団正指揮者。2016...
民族舞踊パロターシュやおなじみのアリアで聴衆と一体となって楽しむ
新年の幕開けを祝うニューイヤーコンサート、それは古今東西、オーケストラや劇場にとって年間でもっとも大切な公演の一つで、その土地の特色が現れる催しでもある。私が本拠を置くハンガリーでもそれは同じで、かつてグスタフ・マーラーが音楽監督を務めたハンガリー国立歌劇場では元日にベートーヴェンの「第九」が、またドナウ川沿いにあるバルトーク芸術宮殿ではハイドンのオラトリオ《天地創造》が演奏される。このように、恒例行事としてのプログラムもあれば、毎年趣向を変える団体など、方針はさまざまである。
コロナウィルスに続き、ヨーロッパは深刻なエネルギー問題を抱えており、ハンガリーでもここ数年、ニューイヤーコンサートの中止、もしくは規模の縮小を余儀なくされたが、今年は数年振りに以前の姿を取り戻し、光栄にも2つのオーケストラのニューイヤーコンサートの指揮を任された。
最初に指揮したニューイヤーコンサートは、北東部にあるハンガリー第3の都市、ミシュコルツ市に本拠を置く国立ミシュコルツ交響楽団。公演はヨーロッパの伝統的な建築様式で建てられ今年創立200周年を迎えるミシュコルツ国立劇場で行なわれた。
ここでは毎年恒例として、シュトラウス一家によるワルツやポルカ、そして20世紀前半にオーストリアとハンガリーでオペレッタの文化を花咲かせたハンガリーの代表的作曲家、フランツ・レハールとエメリッヒ・カールマンの作品を散りばめたガラコンサートが披露される。 聴衆の多くがオペレッタのアリアや二重唱の歌詞をよく知っていて、口ずさんだり、待ってましたとばかりに手拍子を挟んでくる。聴衆参加型のコンサートに会場はプログラム前半から一体感に包まれた。
なかでも民族舞踏団によるカールマンのパロターシュ(Palotás)の踊りは圧巻だった。 長年続く伝統的なプログラムにより、会場が祝祭的な雰囲気に満ちあふれるところが、ここでのニューイヤーコンサートの魅力だと感じた。
パロターシュ(Palotás)はハンガリーの宮廷舞踏。パロタ(Palota)はハンガリー語で「宮廷」を意味する。チャールダーシュ(Csárdás)が大衆の踊りとするならば、パロターシュは貴族や地位の高い人達が踊る舞踏である。出だしこそは気品に満ちた踊りだが、後半はマジャル魂に火がつくアップテンポで情熱的な踊りへと変貌する。
エメリッヒ・カールマン:喜歌劇《悪魔の騎士》第3幕より「パロターシュ」
ダンスグループやイリュージョンとのコラボレーションで華やかに
翌週は正指揮者を務めるソルノク市立交響楽団のニューイヤーコンサート。ここでは毎年プログラムの内容を変え、聴衆にサプライズを与えることを企んで(楽しんで)いる。
2024年は地元のプロフェッショナルダンスグループ、アクロバティックアクター、イリュージョンとのコラボレーション。次々に登場するパフォーマーの演技と共に、ジャズとアメリカやラテンのダンスナンバー18曲を演奏し、レビュー形式の舞台を支えた。
ソルノク市交響楽団はシンフォニー・オーケストラだが、今年は初の試みとして、管打楽器セクションによるビッグバンドが結成された。現代のオーケストラはどんなプログラムでも演奏するスキルが求められる。2500人収容の市のスポーツスタジアムでの公演は、オーケストラとしての新しいチャレンジや情熱が満員の聴衆へ伝わり、ハンガリー国内でも注目されるコンサートとなった。
冬の長いヨーロッパにおいて、クリスマスホリデーから年明けまでの期間は誰にとっても楽しみであり憩いの時間である。ぜひ皆さんもこのシーズンにヨーロッパ各地のニューイヤーコンサートに足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと伝統と工夫を凝らしたご当地ならではのコンサートに出会えるはず!
関連する記事
-
ウィーン・フィル×ムーティの「第九」200周年記念公演が映画に!
-
小林海都、鈴木愛美が本選へ! 第12回浜松国際ピアノコンクール第3次予選結果
-
シューマン「神と並ぶほどに愛してやまない君にすべて知ってもらいたい」結婚前にクラ...
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly