インターネットと音楽についての法律相談室#4 その動画や画像、使ったらアウト?!
YouTube、SNS、ブログなどで自由に表現ができるようになった昨今。それに伴い、著作権への関心も高まっています。
本連載では、インターネットと音楽についての著作権や関連する法律についての初心者向けの基礎知識を、アート関連のスペシャリストが集まった骨董通り法律事務所の弁護士・橋本阿友子さんに教えていただきます。
今回は、思わぬ落とし穴になる「複製」と「公衆送信」についてお話を伺いました。
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
動画を撮った静止画像をSNS等にアップするのはアウト
――YouTubeを見ていると、匿名のYouTuberが、これって権利をクリアできていないんじゃないの? というような動画や音楽をアップしているのをよく見かけますよね。
はい、そうですね。
――画像にしても、自分のブログに、こんな素晴らしい写真、どこで手に入れてきたの?写真使用料はちゃんと払ったの?許諾は?と気になってしまうようなものを堂々と使っている人を多く見かけます。
編集者の常識からすれば、せめて出典や権利者の名前くらいは記載するものだと思いますが、誰もが発信者になれるようになった今、これはどうみても著作権のある「作品」だというものを、いつの間にか無断でタダで使ってもいいような風潮が広がっているような気がします。これは大丈夫なのでしょうか。
写真もそうですし、テレビ番組や新聞記事をスマホのカメラで撮影し、SNSやブログなどに投稿しているケースもありますね。これらは原則としてはアウトではないかと思います。
――つまり、動画を撮った静止画像もアウトということですか?
映画でもテレビ番組でも、動画の作品は「映像の著作物」と考えられています。その中の一部の動画であろうと静止画であろうと、それをSNS等にアップする目的で撮影する行為は、複製権侵害になります。
自分が印刷して持っておくだけだったら、私的複製といって、図書館で借りた本を自分用にコピーするのと同じで、著作権法がOKだと定めています。
でも、複製したものをブログやSNSに上げると、いろいろな人が閲覧できる状態になります。権利者に対する財産的なネガティブインパクトが大きく、基本的に許されていません。また、ご指摘のように、出典の明示も重要なポイントです。
――スタジオジブリの公式サイトを見ると、作品リストのページに静止画をたくさんアップしてあって、「常識の範囲でご自由にお使いください」とあります。最近は、このように公式に許諾されてオープンになっているものも増えていますから、そういう許諾をよく確認してから、出典を明示した上で使いたいものですね。
おっしゃるとおりです。
「ファスト映画」に類する行為は複製権と公衆送信権の両方を侵害する
――例えば、DVDとして商品化されたオペラの映像から、見どころだけを5分ぐらいつまんで、自分のYouTubeチャンネルに紹介用としてアップした、というのはどうでしょうか?
原則としてNGです。DVDの映像自体が著作物に当たるので、許諾なくその一部だけ取り出して編集したり、それをアップロードすることはできません。全部ではなくても、一部でも侵害になるんですよ。
著作物をアップロードする行為は、複製権とあわせ、公衆送信権という権利が関連します(複製権と公衆送信権の両方を侵害する、という整理となります)。これはDVDの映像に限らないので、先ほどの動画や静止画のアップロードも同様です。
最近では、映画を10分程度に編集したいわゆる「ファスト映画」をネット上に公開した件で、民事裁判において5億円の損害賠償が認められ、刑事裁判でも有罪判決が確定しています。
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。ベーカー&マッケンジー法律事務所を経て、2017年3月より骨董通り法律事務所に加入。東京藝術大学・利益相反アドバイザー、神戸大学大学院非常勤講師、Chordia Therapeutics株式会社社外監査役。上野学園大学では非常勤講師を務める傍ら、器楽コース(ピアノ専攻)に編入し、2022年3月には芸術学士を取得。国内外のコンクール受賞歴を持つ。自身の音楽経験を活かし、音楽著作権を専門としつつ、幅広いリーガルアドバイスを提供している。
https://www.kottolaw.com/attorneys.html
URLの貼り付けは違法ではない
――YouTubeにはその手の編集された映像などがたくさんありますよね。違法なものだらけですね(笑)。でも、自分のブログやSNSの中に、公式YouTubeチャンネルの動画URLを入れると、サムネイルみたいな感じになって、そのブログやSNSの中で再生できちゃうじゃないですか。それはセーフなんですよね?
これが少しややこしいところで、URLの貼り付けは、著作物の複製ではなく、違法ではないと考えられています。
――でも実際、そのブラウザで閲覧するとその文章の間に動画が見えるようになっていますものね。
そうですね。でも実際の動画はリンク先のウェブページから直接送信されているもので、リンクを張ったぺージが送信しているのではないのですね。そのため、複製も公衆送信も行なわれていないと考えられているんです。
――劇場や主催側は宣伝になるから、すでに公式サイトでアップした公式動画(YouTubeなど)だったら、むしろどんどんシェアしてくださいと言っていますし、そのあたりはおそらく黙認なんだろうなと思いますけれど。
でも、やっぱり……私は、例えば5年ぐらい前にシドニーに行ったときに、サウスウェールズ州立美術館があまりにも素晴らしくて、写真撮影が全部自由だったんですけど、接写も自由なのでバシバシ写真を撮りまくったのですが、自分のSNSに上げていいのかどうかわからなかったので、一応問い合わせてOKをもらいました。
その対応は素晴らしいですね。
――できれば劇場なり、著作権を持っている人なりに、ひと言連絡しておくのがマナーだろうと思うんです。
確かに私も係員の方に聞いたりはしますね。ここを撮っていいですか? とか。ただし、明らかにOKという場合はあえて確認しない姿勢も大事だと思います。
「エンタテインメント法実務」(骨董通り法律事務所編、弘文堂)
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