読みもの
2020.10.18
特集「食」& 北欧とケルト、暮らしと音楽 Vol.9

ハロウィン料理、ムール貝、海藻を歌ったアイルランドの伝統音楽3選

ヨーロッパの伝統音楽を日本に紹介している音楽プロデューサーの野崎洋子さんが、アイルランドの伝統音楽で歌われている料理や食材について、特集「食」に寄稿!
ハロウィンや飲み会のときに国民みんなが歌うような曲や、「海藻」を連呼する歌も! アイルランドのローカルな食と音楽を味わってみては?

野崎洋子
野崎洋子 音楽プロデューサー

1966年千葉県生まれ。日本大学文理学部出身。 メーカー勤務を経て96年よりケルト圏や北欧の伝統音楽を紹介する個人事務所THE MUSIC PLANTを設立。 コンサ...

メイン写真:Tourism Ireland提供

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2020年は毎年恒例の「ケルティック・クリスマス」もオンラインでの開催となり(12月12日、13日)、ケルト音楽好きの皆さんも寂しい思いをしているかもしれません。来日公演もほとんどなく、寂しい1年ではありましたが、こんな状況下にこそ、ぜひチャレンジしてほしいのが各国の家庭料理。今回はアイルランドの伝統歌に登場するアイルランド料理をいくつかご紹介しましょう。

ハロウィーン料理「コルカノン」とブラック・ファミリーが歌う伝統歌

まずは、マッシュポテトにねぎやキャベツが入ったポピュラーなハロウィン料理「コルカノン」を歌った伝統歌

ブラック・ファミリーが歌う「コルカノン」(1986年)

ブラック・ファミリーは、日本にもファンが多いメアリー・ブラックという女性シンガーを中心とした兄妹コーラス・グループです。映像は、1986年に地元テレビ番組に出演したときのもの。

メアリーはよく「伝統ある音楽一家から登場した」と形容されることが多いのですが、実際は大都会ダブリンに住む貧しい大家族の長女。決して食べるものに困るというほどではなかったものの、幼少のときはとても貧しく、こういった歌を家族で歌い、厳しい日常を乗り越えてきたそう。

「コルカノン」は伝統的なハロウィン料理で、作り方は簡単。マッシュポテトを作るようにジャガイモを準備(ジャガイモはメークインなどではなく男爵あたりが良い)。そこに、別に茹でたキャベツを刻んで、万能ねぎも入れる。塩胡椒そしてバターや牛乳を入れて、好みの柔らかさに仕上げるのがコツです。

アイルランドのポピュラーなハロウィン料理「コルカノン」。ねぎやキャベツが入ったマッシュポテトは、お肉やお魚料理のつけあわせになることが多い。写真:Tourism Ireland提供

ムール貝とギネスビールと伝統歌「モリー・マローン」

続いては、有名なこのパブ・ソング。

ザ・ダブリナーズが歌う大衆歌「モリー・マローン」

映画『時計じかけのオレンジ』のオープニングにも登場するアイルランドのトラッド・ソング「モリー・マローン」にも、アイルランドのポピュラーな食べ物「ムール貝」が登場します。小型のバケツにドーンと山盛り盛られたムール貝とギネスのビールは、天気のよい午後にテラス席で楽しむには最高の組み合わせ。

「新鮮だよ、新鮮なザルガイ、ムール貝だよ」とダブリン市内で貝を売り歩く若い女の子、モリー・マローンの物語が詞になっています。いわゆる観光客向けの「Irish Drinking Songs」なんていうコンピレーションCDがあったら必ず入っている定番の曲、アイルランドでは歌詞を知らない人はいません。一人が歌えばパブ中が大合唱となる、まさに大衆のための飲み会音楽。

主役のモリー・マローン嬢は銅像となって、ツーリスト・インフォメーションの前に今でも鎮座。ダブリン市内のランドマークの一つとなっています。

上:スコットランドはグラスゴーのレストランで食べた、かなり洒落たムール貝のお料理。グラタン風にホワイトソースで白ワインが進む。

左:ダブリン市内にあるモリー・マローン像。
写真:筆者

海藻を意味する「Dúlamán」

最後の1曲は、「ドゥラモン(Dúlamán)」海藻という歌を紹介します。

古くはエンヤのお姉さんであるモイア・ブレナンが参加するクラナドのかっこいいバージョンや、日本に何度も来日している人気グループ、アルタンの素朴なバージョンが有名だったのですが、最近でもケルティック・ウーマンほか、新しいアーティストも積極的にカバーしています。

クラナド、アルタン、ケルティック・ウーマンの歌う「ドゥラモン」

映像は、私も最近発見したコーラス・グループのバージョンですが、バウロン(アイルランドの太鼓)とのコラボレーションがシャープで、なかなか聴き応えがあります。

The Choral Scholars of University College Dublinの歌う「ドゥラモン」

歌詞には、アイルランドの黄色い海藻は、いい海藻♪……と繰り返しドゥラモン(海藻)が出てきます。映画『ソング・オブ・ザ・シー』でも効果的に使われたので、覚えている人がいるかもしれません。

映画『ソング・オブ・ザ・シー』予告編

アイルランドにおいて海藻は、食べるためのものというよりは、貧しい土壌を改良するための肥料になることが多かったようです。もちろん食べてもいたようですが、それは非常に貧しい者の行為とされ、今でも「日本人は海藻を食べるのか!」と、一方的なシンパシーを抱くアイルランド人も少なくないとか。

しかし最近、海藻は健康食品としての認識が高まり、その地位は格段にアップ。海藻を利用した専門のスパ施設や高級エステも登場し、話題となっています。

写真:Tourism Ireland提供

さて、最後にケルト音楽ファンには嬉しいニュースが1つ。

ケルト音楽の招聘で長年多くのファンを集めているコンサート・プロモーターのプランクトンが、10月15日にケルト文化のサイト「ケルティック・ジャイア」をオープンしました。なんと料理のコーナーもあるということなので、とても楽しみ! プランクトンのスタッフの中でも料理好きで知られる男性が、シチューとソーダブレッドに挑戦しています。必見!

野崎洋子
野崎洋子 音楽プロデューサー

1966年千葉県生まれ。日本大学文理学部出身。 メーカー勤務を経て96年よりケルト圏や北欧の伝統音楽を紹介する個人事務所THE MUSIC PLANTを設立。 コンサ...

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