パーソナルブランディング10のステップ(前編)
前回の記事「若き音楽家たちへ(後編)〜ルーティンとブランディング」に多くの反響をいただいたので、改めて原田慶太楼さんが常に掲げているブランディング10のルールを教えてもらいました。音楽家だけでなく、今の時代、すべての人に役に立つパーソナルブランディングの考えかた、必読です。
STEP1. Define your brand and become an expert
あなたのブランドを決め、エキスパートになる
あなたのブランドを決めるというと、音楽家や一部の表現者の話と思うかもしれませんが、SNSの盛んな今の時代、多くの人に必要な技術だと思います。SNSをやらない人でも、自分のブランドを決めるというのは、soul serching(自分探し)の作業ですから、日々の生活に必ず役に立つはずです。
私って何? どういう人間? 自分で自分を辞書で説明するとしたら?
加えて、願望も整理します。
どういう人間になりたい? どういうふうに見られたい? どうしていきたい?
これはほかの誰にも決められないこと。なりたい自分のビジョンを明確にする。
あなた自身のブランドを決めたら、そのビジョンに集中して、そぐわないものはどんどん却下します。自分のブランドに全集中して、極めます。
僕のブランドとしては、若い日本人の作曲家を育成すること、日本人の作曲家を世界に知らしめること、日本初演、世界初演、新しい曲をどんどん振ること。今はこの3点です。「日本人の作曲家に力を入れている」と辞書に説明したいし、「慶太楼のコンサートに行くと、いつも新しい曲があるよね」と人から思われたい。自分で決めた、そのブランドに全集中して活動しています。
商品や企業のブランディングだと広告代理店に依頼してプロがマーケティングしながら進めてくれますが、自分のブランド、パーソナルブランディングの場合は自分にしかできない。what makes you, you(あなたを構成するものがあなた)というとおり、あなたの感性、あなたが求めるもの、自分の要素を見直して自分を知ることからスタートです。
STEP2. Establish a presence
存在を確立する
次のステップとしては、多くの人に見つけてもらえるところに存在感を確立すること。Googleなどの検索サイトであなた自身の名前を入れて、トップに出てくるのはどのサイトですか。友達が投稿した飲み会の写真が上がってきたり、同姓同名の人が上位に来たりしませんか。トップに出てくるのは、自分でコントロールできるものであること。たとえば、自分のホームページであったり、Twitter、Facebook、Instagram、Youtube、TikTokであったり。そうじゃないページが上がってきたら危機感を持ってほしい。
ホームページがトップに表示されるためには、SEO対策も必要ですが、そのためにもURLは大事です。音楽家のように個人名で活動する人だったら自分の名前をURLに使ってほしい。ホームページを無料サイトでつくっても、もちろんいいのですが、無料サイトでつくると、URLにサイト名が入って長くなります。SEO的にも上位に来にくくなります。少しの維持費でURLを買えるのなら、それは必要経費ではないでしょうか。
Twitter、Facebook、Instagram、Youtube、TikTokのアカウント名も統一できたらベストです。それから、SNSは複数やったほうがいいと思います。同じ投稿でいいから、Twitter、Facebook、Instagramはマストじゃないかな。あとは、TikTokをやるかどうか。ホームページのURLも、SNSのアカウント名も統一して、ネット上にフレイムワークを確立してください。
といいながら、実は僕もできなかったんですよ。ホームページのURLは最初から、kharada.comにしていて、本当はすべてのURL、アカウント名をkharadaにしたかった。Twitterのアカウント名には文字数が足りなかったのかな、それで @khconductorにして。Instagramはkharadaが先に取られてしまって、それでやはり @khconductorに。今からでも統一できるものなら統一したいです。
だから、自分の名前のURLとアカウント名は、すぐにでも押さえておけといいたいです。まだホームページをつくる予定がなくても、とりあえず押さえておけばいい。
STEP3. Generate brand awareness through networking & Follow a successful example
成功者に学びネットワークの中でブランドを高める
ブランディングというのは自分のユニークなところ、個性を生かすことだから、何がユニークなのか知るためにも、自分がいる業界のネットワークが大切です。自分だけの世界にいたら、自分のユニークさには気づけません。自分の業界は、どういう業界で、どんな人がいるのか。SNSでつながるのもいいですが、できれば実際に会って話してネットワークを築くといいです。
ネットワークを築くと、尊敬する人、成功している人ともたくさん会えます。そういったキーパーソン、成功例を大いに参考にしてください。
音楽界で例を挙げると、たとえば、ヴァイオリニストのヒラリー・ハーン(HILARY HAHN)。InstagramやTwitterで#100daysofpracticeというハッシュタグをつけ、毎日の練習動画をアップしています。10数秒から数分の、ほんの短い動画ですが、瞬く間にフォロワーを増やし、同じハッシュタグをつけて練習動画を上げる人たちが続出しています。もうすぐseason 7だから700日近く続けているということですね。
ネットワークを築くことで、業界のトレンドにも敏感になれます。コロナ禍で多くの音楽家が取り組んだYouTube配信ももうトレンドという感じじゃない。今のトレンドはInstagramのリール動画かもしれないです。リール動画は写真の何倍も情報量があり、目に留まりますよね。ほんのちょっとした労力で、最大限の効果を上げる、とても良いツールです。ヴァイオリニストのレイ・チェン(RAY CHEN)やピアニストのラン・ラン(LANG LANG)の動画投稿も面白いですよ。
日本人だと、清塚信也や、かてぃん(角野隼斗)も、動画投稿をすることで、多くの人から俄然、親近感を持たれるようになったと思います。ぐんと近づいたんだけど、やっぱりすごい存在で距離はある。近いけれど遠い。そのバランスがとてもうまくいっている成功例です。
STEP4. Remember the 3 Cs of branding “Clarity”
3つのCを覚えておいて “明確性”
あなた自身のブランドを聞かれたときに、「これです」と明確に答えられることも大切です。ステップ3のネットワークの中で見つけた「これです」はなんですか。業界のほかの人とどう違うのか明確に答えられますか。パーソナルブランディングに限らず、成功するブランドというのは、ひとつ明確なメッセージを持っています。
僕は日本デビューした頃「なんでも屋さん」と言われていたのね。シンフォニーもやれば映画音楽も子どものコンサートもやる。でも明確なメッセージがあった。それは、「ボーダーレス」。ジャンルに関係なく、ボーダー(線引き)なく、なんでもできる。それが僕のブランディングであり、アイデンティティ。最近はそれが浸透してきた気がします。
STEP5. Remember the 3 Cs of branding “Consistency”
3つのCを覚えておいて “一貫性”
メッセージを明確にしたら、ブレない。一貫性を持つ。
よくホームページとSNSとあまりにイメージが違う人がいるけれど、それは良くないと思います。あなた自身のブランドを決めて、メッセージを明確にしたら、それ以外のことは投稿しないほうがいい。
ステップ1で「新しい曲をどんどん振る」と僕のブランディングを挙げたけれど、僕のホームページでは “PREMIERES & BEYOND”というタブをつくっています。そこで、日本初演、世界初演の曲に星マークをつけ、作曲家ごとにアーカイブしています。若手育成や日本人の作曲家についても、SNSはじめいたるところで発信しています。
パーソナルブランディング10のステップ(後編)に続きます(4月公開予定)。
日時: 2023年5月15日(月)19:00開演
会場: 東京オペラシティ・コンサートホール
曲目: 城代悠子/《IKUSA》、萩森英明/《東京夜想曲》、松井琉成/交響詩《うつしがたり〈翠〉》、山田竜雅/《祈り》~女声と管弦楽のための~
共演: 藤岡幸夫(指揮)、山田和樹(指揮)、鈴木優人(指揮)、安江陽奈子(ソプラノ)、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、愛知室内オーケストラ
料金: 全席指定5,000円
詳しくはこちら
日時: 2023年5月20日(土)14:00開演
会場: 兵庫芸術文化センターKOBELCO大ホール
曲目: ドニゼッティ/歌劇《連隊の娘》より序曲、「ああ、友よ、なんとめでたい日」、ニーノ・ロータ/トロンボーン協奏曲より第1・第3楽章、ルトスワフスキ/パガニーニ変奏曲、ほか
共演: 谷口耕平(テノール)、辻姫子(トロンボーン)、久末航(ピアノ)、岩見玲奈(マリンバ)、林周雅(ヴァイオリン)、梨谷桃子(ソプラノ)、兵庫芸術文化センター管弦楽団
料金: A席2,000円 B席1,000円
詳しくはこちら
日時: 2023年5月27日(土)15:00開演
会場: アクリエひめじ 大ホール
曲目: 小田実結子/夜明け(Dawn)、上田素生/あまやどり-Listen to the rain-(世界初演)、マイク・モウワー/フルートと吹奏楽のための協奏曲、G.ホルスト/組曲《惑星》より、J.ウィリアムズ/『スター・ウォーズ』より、ほか
共演: 神田寛明(フルート)、播磨国吹奏楽団
料金: 一般3,000円、高校生以下1,000円
詳しくはこちら
日時: 2023年5月28日(日)14:00開演
会場: ハーモニーホールふくい大ホール
曲目: 同上
共演: 神田寛明(フルート)、石丸由佳(オルガン)、播磨国吹奏楽団
料金: 全席指定、車いす席4,000円、※小~大学生半額
詳しくはこちら
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