読みもの
2020.05.22
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第9話

薔薇が美しい季節、音楽を花に例えるアルゲリッチさんを思い出す

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

メイン写真:マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)©三浦興一

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写真:筆者

外に散歩に出ると薔薇の花が美しい季節、ふと、以前インタビューをしたときのアルゲリッチさんの言葉を思い出しました。

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5年前、浜松国際ピアノコンクールの審査員をつとめていらした際、審査員席でどんなピアニストを探していますか? と尋ねたら、アルゲリッチさんはこうおっしゃいました。

「これというイメージは、ありません。こういうものがいいという考えで聴いていたら、すてきなものを見逃してしまうかもしれないでしょう。マーケットで買い物をするのとは違うもの。

それに、ピアニストにはさまざまな個性があります。説得力があり、アーティスティックで、音楽的でなくてはいけないけれど、そこから先に、なにを比べたらいいというの? 花に例えるなら、薔薇とジャスミンを比べることなんてできないわ」

自然が生み出す美しさを比較することなどできない。それを優れたピアニストの個性と重ねた説明に、うわーん、マルタさん素敵! と、私は心の中で叫びました(実際に口にも出したかも)。同時に、「説得力があり、アーティスティックで、音楽的」という点をクリアする、そこが簡単なことではないよね……とも思いましたけれど。

それにしてもアルゲリッチさんって、舞台で花束を受け取ると、だいたいいつも鼻を近づけて香りをクンクンしていらっしゃいますよね。昨年取材でお目にかかったときも、部屋に置かれていた胡蝶蘭をしげしげと観察していました。本当にお花がお好きなのでしょう。

アルゲリッチからあなたへ 音楽の贈り物

別府アルゲリッチ音楽祭を主催するアルゲリッチ芸術振興財団は、4月30日(木)から「アルゲリッチからあなたへ音楽の贈り物」と題して、これまでの演奏会の中から貴重な映像を公開している。内容は随時更新。

 

Vol.2
C. フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)

無料公開期間:
2020年5月20日(木)〜6月3日(水)

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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