読みもの
2020.10.16
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第31話

甘党のサリエリの話~食欲の秋、ギルティ・フリーのスイーツのことを考えながら

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

写真:高坂はる香 ※写真のケーキはギルティ・フリーではありません

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

食欲の秋。この季節ならではのくだものやスイーツを見かけると、片っ端から食べてみたくなってしまう今日このごろ。

何年か前から「ギルティ・フリー」と銘打ったスイーツを見かけるようになりました。

続きを読む

ギルティ、すなわち罪悪感。糖質オフや砂糖不使用で、ダイエット中だとか、体型を気にかけている人が食べても罪悪感がないおやつ、だそうです。

しかしわたくし、デパ地下などで「ギルティ・フリー・スイーツ」という文字を見るたび、こう思っていました。

「罪悪」? 太るかもしれないのに食べてしまった「後悔」ならわかるけど、「罪悪」って何に対して罪を感じるの? 「甘いものを食べてしまった、自分はなんて罪深いのだ!」と思うってこと? なんか変じゃない?

あるとき、そんな疑問を友人に投げかけると、彼女はこう答えました。

「私のかわいいボディに対しての罪悪感だよ!」

以来、この「ギルティ・フリー」という命名に、ある程度、納得しています。 

さて、甘党の作曲家といえば、サリエリを思い出します。

イタリア生まれ、ウィーンで活躍したアントニオ・サリエリ(1750-1825)。作曲家、宮廷楽長、指導者、演奏家として活躍した。

モーツァルトの生涯を描いた映画『アマデウス』でも、甘いものに執着心を見せるサリエリの姿が描かれています。なかでも、彼のもとを訪れたモーツァルトの妻コンスタンツェに「ヴィーナスの乳首」というお菓子をすすめる場面は、印象的。

映画『アマデウス』(1984年)

『宮廷楽長サリエーリのお菓子な食卓 時空を超えて味わうオペラ飯』(遠藤雅司著/春秋社)によると、現実のサリエリも、甘いものがかなり好きだったようです。

少年時代、無断で教会に音楽を聴きに抜け出したサリエリは、両親から、今度やったら1週間水とパンだけで過ごす罰を与えると言われます。

すばらしい音楽と引き換えならばそれにも耐えよう、しかし砂糖がなくては嫌だ!……そう考えたサリエリ少年は、クローゼットに砂糖を少しずつ隠し、備蓄が十分になったところでまた無断外出を試みたのだとか。

とはいえ、この企みは両親にバレていて、砂糖は没収されていたため、サリエリ少年は両親に泣きつき、許してもらったそうです。

晩年、教育者としても活躍したサリエリは、お気に入りの生徒だったシューベルトに、たびたびアイスクリームをご馳走していたという話も伝えられています。あの二人が一緒にアイスクリームを食べている姿、想像するとかわいいですね。

『宮廷楽長サリエーリのお菓子な食卓 時空を超えて味わうオペラ飯』遠藤 雅司 著
高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ