コン・フォーコといえば、ピアニスト福間洸太朗さんを思い出す
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
ある言葉を見ると、特定のなにかを毎回思い出す、みたいなことってありますよね。
実は私、発想記号の「コン・フォーコ」(火のように、熱烈に。fuocoは火とか情熱という意味)を見ると、毎回、ピアニストの福間洸太朗さんを思い出します。
あんな、暑苦しさからは程遠い、さっぱりした雰囲気の方をなんでと思うかもしれませんが、それは単純に、5年ほどまえ福間さんが「コン・フォーコ」をテーマとしたリサイタルをされていて、そのときのインタビューが妙に記憶に残っているから。
このときのプログラムは、ショパンの「24のプレリュード」を中心としたもの。このプレリュードの第16番が「プレスト・コン・フォーコ」で書かれていて、そんな「抑えきれないような熱烈な感情や怒りをぶつけたくなる瞬間」をピークに音楽をつくっていくと、また新しい作品の魅力が浮かび上がる、というようなお話でした。
福間洸太朗が演奏する「24のプレリュード」第16番
そのインタビューの中で、たぶん私は、「福間さんがコン・フォーコになる瞬間ってありますか?」という、少し変なことを聞いたんですね。
それで、答えの内容がなんだったかはよく覚えていないのですが、福間さん、「頻繁にはないですけど、〇〇のときには、フォコりますねぇ」みたいなことをおっしゃったんですよ。
ふぉこる!!
なんでしょう、この、新しい言葉の使いかたが生まれた瞬間のような感触は。その後のリサイタルで、福間さんが16番のプレリュードを弾いているとき、「わー、フォコってるなー」と心の中でつぶやいてしまったことは、いうまでもありません。
ただその後、日常で「ふぉこる」を使う機会は、未だない……。
というわけで、話は突然変わりまして、福間洸太朗さんの最新アルバムです。今回はオール・バッハ。
福間洸太朗『バッハ・ピアノ・トランスクリプションズ』
コロナ禍でみんなが不安を抱えるなか、SNSでみなさんはどんな音楽が聴きたいかと尋ねたところ、J.S.バッハという答えが多く返ってきて、ちょうど福間さんご自身の気持ちとも合致したとのこと。
しかし、そこで普通のJ.S.バッハ鍵盤作品集でなく、すべて他の作曲家が編曲した楽曲を集めるというのが、福間さんらしいオリジナリティあふれるところ。心に寄り添うような音楽が、福間さんのクリーンで整った音で、優しく、ときにずっしりと奏でられていきます。
当然、フォコる場面はまったくありませんので、安らかな時間のお供に、ぜひ。
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