ショパンコンクール本選前に来日公演!アレクサンダー・ガジェヴのキャラクター
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
9月8日(水)に浜離宮朝日ホールでリサイタルをする、アレクサンダー・ガジェヴさん。
アレクサンダー・ガジェヴのトップ・トラック
公演プログラムのための文章を書きつつ、6年前の浜松国際ピアノコンクールのときのインタビューを見返していたら、ガジェヴさんについて書きたくなってしまいました。
ガジェヴさんが浜松コンクールで優勝したのは、前々回の2015年、彼が20歳のときです。
最初にバックステージでインタビューしたときは、すました知的ムードでキメていたのですが、徐々に若者らしいハジけた場面を散見するように。それでいてセミファイナル後、本選進出者が選ばれる前のインタビューで、ロシアものを弾くことになっていた自分について、「過去の例からしてロシアものが本選で弾かれる確率は〇パーセントだから、自分が本選に進める確率は……」とか語っちゃう。なんですかそのめんどくさい、じゃなくて論理的なものいいは! という、なかなかクセのある若者です(まあ、見るからにクセありそうですよね)。
そして行なわれた本選のステージ、ガジェヴさんはプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏したのですが、生き生きとしていて、それはもうスリリング。あとで指揮者の高関健さんにお話をうかがったら、ガジェヴ君、リハーサルのときに自分の中で組み立てた考えをいっぱい言ってきたんだけど、本番でやることはぜんぜん違うのよまったく、みたいなことをおっしゃっていました。
ベテラン指揮者を平気で振り回す、さすがです。
浜松国際ピアノコンクール本選終了後のガジェヴさんのコメント
その後、結果発表まで終わったあとのインタビューがまた印象的でした。
子どもの頃から信じられないくらい落ち着きがなくて、1時間ピアノの前に座って練習することなんてほとんど不可能だったという話から、優勝の金メダルがすごく重くて、レセプション中肩が凝って疲れた、みたいなどうでもいい話まで(今まで何度も浜コン優勝者にインタビューしてるけど、そんなこと言ったのこの子だけ……)。
そんな中にさしはさんで、こんなことも語るんです。当時、まだピアニストになるとは決めていないという彼に、政治、経済よりも、今の社会で哲学は一番重要な学問かもしれないから、ピアニスト兼 哲学者を目指したら? と(無責任に)言ってみまして。するとこんな回答が。
「確かに、政治も経済も、根本的にはすべて哲学からきてますからね。第2次世界大戦以降もずっと、私たちの世界はいつも問題を抱えています。多くの人が経済やビジネスに集中している状況でそういうことが起きているということは、明らかに、何か解決策が必要だということですもんね。そこには哲学が必要だ。それにもともと、音楽家は哲学者に近い」
……言います? ハタチのピアニストがこんなこと。
いや、自分も20歳くらいの頃まあまあめんどくさい奴だったので、これ的なこと言ったかもしれないけど、なんというかあんな自由奔放な演奏をするピアニストの口からこんな言葉が出てくるっていうことに、新鮮なギャップを感じたんですよね。
こういう二面性が、おそらくガジェヴさんの音楽の魅力でもあるのだろうなと思いました。
浜松国際ピアノコンクールを第1位で終えたガジェヴさんのコメント
そんなガジェヴさん、10月のショパンコンクールへの出場が決まっていて、その直前の来日ということで、当然プログラムはオール・ショパンです。日本の聴衆は、コンクール前に聴かせてもらえる! 貴重な機会ですね。
ガジェヴさんの第18回ショパン国際ピアノ・コンクール予備予選(7月)の演奏
日時: 2021年9月8日(水) 19:00開演
会場: 浜離宮朝日ホール
曲目: オール・ショパン・プログラム
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- 3つのマズルカ Op.56
- ポロネーズ 第5番 嬰へ短調 Op.44
- バラード第2番 ヘ長調 0p.38
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35「葬送」
料金: 5,000円(指定・税込)
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