フランチェスコ・トリスターノさんのカッコよさと、ユザーンさんと共演した過去
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
古楽からロマン派、テクノまで。卓越したセンスで、枠にとらわれない音楽活動を行なうピアニスト、フラチェスコ・トリスターノさんの新譜『オン・アーリー・ミュージック』がリリースされました。
「古楽には早朝の日の出のような修復力がある」というメッセージとともに収められた楽曲の数々。クリアな音から、いろいろな色が感じられます。
ライナーに「古楽は生来の強烈なリズムを持っていて、私はそのグルーヴ感が大好き」とありましたが、彼のルネサンス・バロック音楽の演奏は、縦揺れのパワーもあり、しかし清潔感もあって、聴いていて飽きません。
あわせて自作も収録されていますが、冒頭の「トッカータ」から最高にクールです。
この方のやることって、なんでこういちいちカッコいいのでしょう。今回のアルバムも、パッケージには、日の出の頃のゴールデンアワーのイメージと思われる美しい色の大判のポスター的なものが入っています。普通じゃないことをサラッとするこの感性。
それでいて「ぼくのことは“フラくん”と呼んで」とか言う、ほんわかキャラでもある(実話)。
私が初めてトリスターノさんのインタビューをしたのは、もう十数年前のこと。
開かれた感性、演奏から溢れ出す卓越したリズム感、さらには自作曲でピアノのフチを叩いたりしている様子を見て、タブラ奏者のユザーンさんと共演したらいいのに、と前々から思っておりました。それぞれに坂本龍一さんとの接点もあるし、重なりそうで重ならない二人。
U-zhaan & Ryuichi Sakamoto feat. 環ROY × 鎮座DOPENESS/エナジー風呂(Energy Flo)
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私はユザーンさんとは初めてムンバイであってから結構長らくの知り合いで、お姉さんが川越の高校の先輩という縁などもあり(それはあまり関係ないか…)、インドで美味しい魚カレーのお店につれていってもらうなどお世話になったりしています。
それで双方に、「いつか共演したらいいのに」と言い続けておりました。
そして、それがついに実現したのが、2019年にリリースされた『Tokyo Stories』でした。住んでいる身としては、東京ってこんなにクールですっけ? と思うくらい、これまたクールなアルバム。トリスターノさんがいろいろな日本のミュージシャンとコラボしています。そのなかの1曲「パクチー」は、ユザーンさんとトリスターノさんによるものです(タイトルがなぜ「パクチー」なのかはいまだに不明)。
フランチェスコ・トリスターノ&ユザーン「パクチー」〜アルバム『Tokyo Stories』より
タブラ運びをお手伝いするという名目で、私も録音の現場に立ち会うことができました。
ユザーンさんが一人録音ブースでタブラを叩く音を、トリスターノさんがミキシングルームで確認する場面もあったのですが、超楽しそうにノってテーブル叩いてしまっている様子など、目にしていてすごくうれしかったですね。化学反応ってこうやって起きるのか、と。
温泉とラーメンが大好きなトリスターノさん、最近予定されていた来日が延期となり、さぞ残念がっているだろうと思います。私たちも新譜と『Tokyo Stories』を聴いて、またの来日を楽しみに待ちましょう。
『Tokyo Stories』MV
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