くそっ(使ってはいけない言葉)
広島出身。エリザベト音楽大学卒業後、2001年渡独。デトモルト音楽大学修了。リューベック音楽大学、同大学院を首席で修了。オイレギオ国際コンクール優勝。08年にブレーメ...
Scheiße
シャイセ
くそっ
ドイツ語がとっつきにくい、難しいと思われている理由の一つに冠詞がある。英語のTheにあたるものだが、英語が1つなのに対し、3つある。複数形を合わせると4つ。格変化(が、の、に、を)を含めると16個もある。ドイツ語の最初のほうで習うこの冠詞のせいで、早いうちから心を折られてしまう。
何とか教科書を読み進め、一通り文法をやりすごしてドイツ留学となったとき、その語学レベルはドイツ人の3歳児レベルだったのではなかろうか? というわけで現地でもドイツ語学校に通うことになったのだが、クラスは一番下から2番目。ほぼ初心者だ。
その初心者クラスには自分と同レベルの外国人10人ほどが通っていた。アメリカ人、インド人、イギリス人、イタリア人などなど。日本でのお堅い勉強と違って、現地でのドイツ語は、より実践的になっている。そしていろいろ脱線する。
そこで初めて習った単語が「Scheiße(シャイセ)」であった。英語の「shit(シット)」にあたり、「くそ!」とか、汚い部類の言葉に分類される。日本の語学授業でこの単語を教えていたらびっくりだが、ドイツでは日常会話で出てくるのだから習っておいて損はない。
いや、むしろこう考えるべきか? 宮崎駿監督の映画『天空の城ラピュタ』の終盤で、ヒロインのシータがこんなことを言っていた。「絶対使っちゃいけない言葉だってあるの。滅びのまじない。いいまじないに力を与えるには、悪い言葉も知らなければいけないって」金曜ロードショーなどで放映される日には、パズーとシータがこの滅びのまじない「バルス」を唱える瞬間に、ツイッターで大合唱が起こるほどである。
つまり、私がドイツ留学して間もないころに習った「Scheiße」とは、綺麗なドイツ語を習得するために必要不可欠だったのではなかろうか? 実際問題、適切な場面でタイミングのばっちりあった「Scheiße」を使えるようになるには相当の時間と洞察力を要した。
ドイツの劇場には、舞台上でしてはいけない行為というのがある。その一つが、舞台では絶対に「Scheiße」と言ってはいけない。これはモラルの問題とかではなく、いわゆるゲン担ぎのようなものである。もう一つが口笛を吹く行為。これらはドイツの劇場ではタブーとされている。
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