指揮者 飯森範親さんと聴く大作曲家たちの名を冠したウィーンのスピーカー
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
ウィーンアコースティクスの「ハイドン」、「ベートーヴェン」、「リスト」
日本を代表する指揮者の飯森範親さんは、オペラ、交響曲、協奏曲、宗教曲など多様なジャンルのアルバムをリリースしてきた。録音作品を世に送り出すうえで、スピーカーは飯森さんにとって重要な存在である。
「CD制作のモニター用で使うスピーカーは、あらゆる音が忠実に聴こえる必要があります。しかし、音楽的にリラックスしながら聴くには、モニタースピーカーだと少し聴き疲れしてしまいます。モ ニター用と鑑賞用、両方に使えるスピーカーはないかなと探し続けています」
そう語る飯森さんに、音楽の都ウィーンで生まれたスピーカー、ウィーンアコースティクスの「Haydn SE Signature」「Beethoven Concert Grand Reference」そして「LISZT Reference」という、大作曲家たちの名を冠した3つのスピーカーを試聴してもらった。「Haydn SE Signature」(以下「ハイドン」)は、2022年11月発売の新モデル。小さいが、上位機種にあたる「Beethoven Concert Grand Reference」(以下「ベートーヴェン」)と同モデルのシルクドーム・トゥイーターを搭載。より現代らしい反応の良さと広がりを持たせたコンパクトなスピーカーだ。ペアで48万4千円。
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学 院修士課程修了。Macquaqrie University通 訳翻訳修士課程修了。音楽誌、オーディオ 誌、書籍、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジンなどの執筆・翻訳のほか、司会、 演奏、セミナー講師の仕事に従事。書籍に『ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんな にも愛されるのか』(共著、音楽之友社)、『ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック』(カワイ出版)等がある。
桐朋学園大学指揮科卒業。国内外のオーケス トラを数多く指揮、東京交響楽団特別客演指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、ドイツ・ヴュルテンベルク・フィルハー モニー管弦楽団の音楽総監督(GMD)として 活躍。現在、パシフィックフィルハーモニア 東京音楽監督、日本センチュリー交響楽団首席指揮者、山形交響楽団桂冠指揮者、東京佼成ウインドオーケストラ首席客演指揮者、中部フィルハーモニー交響楽団首席客演指揮者。2023年4月より群馬交響楽団常任指揮者に就任予定。
「ベートーヴェン」は、ベートーヴェンの生誕250周年にあたる2020年に発表されたモデル。ユニットのフラットコーンが最大の特徴。 音源再生時のわずかなタイムラグも発生させることがない。豊かな低音域と、スムーズでまろやかな倍音を伴った高音域を実現させている。ペアで165万円。
「LISZT Reference 」(以下「リスト」)はウィーンアコー スティクス最新のスピーカーで、ウーファーは新素材を用いたフラットコーン。トゥイーターとミッドレンジスピーカーは同軸でまとまりのある音を生成。首を振るように設計されているため、好みの指向性に変えることができる。ペアで286万円。
飯森マエストロ、3機種の特性を語る
3つの機種に、飯森さんはどのような感想を持たれたのだろうか。まずは「ハイドン」 から印象をうかがった。「こんなに小型なのに、とて もバランスがよく優秀。 48万円という価格は、このクオリティなら決して高くはないと思います。ハイドンの交響曲は、とくに弦楽器がとても綺麗に再現されていました。一般の家庭ではそこまで大きなボリュームでは聴かないだろうから、BGMよりやや大きめくらいの音量なら、《火の鳥》のような大編成のオーケ ストラを聴くのにも申しぶんありません。6畳くらいのオーディオ・ルームなどには快適ですよね。日本の住環境では心地よいサイズだと思います」
続いては「ベートーヴェン」。 飯森さん自身は、このスピー カーがいちばんピンときたようだ。「ディテールもしっかり聴こえるし、音楽的にも聴かせてくれる。モニター用と鑑賞用の二つの用途を兼ねるという意味で、このスピーカーには可能性を感じました。
ハイドンの交響曲は、オーケストラの質量がちゃんと感じられ、自分が指 揮台で聴いている音と近い再現力がありました。《火の鳥》も音の位相がクリアに感じられて臨場感があり、当時のロシアのオーケストラならではのサウンドを味わうことができました。
スピーカーとしては平面的なコーンを搭載したユニークな形をしていますが、とても立体感がある。中央まで近づいて聴いてみましたが、真横でも音の奥行きを感じられました。トランペットは音量が大きくても遠くから聴こえ、 オーボエは目線が少し手前になる感じ。楽器間の距離感がとてもよく再現されました」
クリーン電源
価格:¥1,265,000
寸法:幅438mm×高さ170mm×奥行372mm
重量:16.3kg
右上:CD35(PRIMARE)
CD プレーヤー
価格:¥528,000
寸法:幅430mm×高さ106mm×奥行382mm(385mm:突起物含む)
重量:10.6kg
右下:I35(PRIMARE )
インテグレーテッドアンプ
価格:¥660,000
寸法:幅430mm×高さ106mm×奥行382mm(420mm:突起物含む)
重量:10.5kg
ステレオパワーアンプ
価格:¥594,000
寸法:幅430mm×高さ145mm×奥行382mm(400mm:突起物含む)
中:V5 TITAN(IsoTek)
クリーン電源
価格:¥770,000
寸法:幅220mm×高さ147mm×奥行350mm
重量:11.0kg
色:シルバー、ブラック
ハイエンドモデルの「リス ト」についてはどうだろう か。 「車にたとえるなら、フェラーリやランボルギーニですね。 反応がよくて、スピード感がすばらしい。トゥイーターとミッドスピーカーの部分を動 かすと、指向性がすごく変わ りますね。高音の倍音などは、 自分に向けるとかなりダイレクトに聴こえます。とくに木管楽器の高音域がとてもクリアに聴こえました。ポテンシャルが高く、十分に鳴らしきるには調整が必要かもしれない。今回もパワーのあるアンプを準備してもらいましたが、グレードを上げればそれだけの真価を発揮するスピーカーだと思います」
2022年末に、飯森範親さんの提案でアライアンスの締結が実現した日本センチュリー交響楽団(セ ンチュリー響)とパシフィックフィルハーモニア東京(PPT)。両楽団の合同定期演奏会が2023年6月に開催される。角野隼斗をピアノ独奏に迎え、ジョン・アダムズ《Must the Devil Have All the Good Tunes?》、そしてR.シュトラウス《アルプス交響曲》を披露する。 「アダムズの作品は、日本人演奏家による日本初演です。 ミニマル的な要素があり、とてもドラマティ クで楽しい曲です。 角野さんはグルーヴ感をもって演奏してくれると思うので、とても楽しみです。 R.シュトラウス《アルプス交響曲 》は編成の大きな作品です。日本センチュリー交響楽団とパシ フィックフィルハーモニア東京という二つの楽団が、ステージ上で一緒に演奏するにはふさわしい曲ですね。過去にR.シュトラウスが暮らしていた家に特別に入れていただいたことがあるのですが、彼の部屋からはツークシュピッツェというドイツでいちばん高い山が見えます。僕も頂上まで何度か登ったことがあります。湖が見えて、とてもきれいな場所です。山の天候は変わりやすく、朝から夕方までの1日の変化が激しいです。朝はとても清々しくても、午後3時には雲ゆきが怪しくなり雷鳴が轟く。まさにこの《アルプス交響曲》が描く作品の展開通りなのです。ぜひ南ドイツを一緒に散歩していただくイメージで 、演奏をお楽しみください」
日本センチュリー交響楽団・第274回定期演奏会
日時: 2023年6月10日(土)14:00開演
会場: ザ・シンフォニーホール
パシフィックフィルハーモニア東京・第157回定期演奏会
日時: 2023年6月11日(日)14:00開演
会場: サントリーホール
出演: 飯森範親(指 揮)、角野隼斗(ピアノ)、センチュリー響とPPTの合同演奏
曲目: J.アダムズ《Must the Devil Have All the Good Tunes?》、R.シュトラウス《アルプス交響曲》
問い合わせ: センチュリー・サービス 06-6848-3311(10日)、(一社)パシフィックフィルハーモニア東京 03-6206-7353(11日)
試聴音源
飯森が特別客演指揮者を務めていたモスクワ放送交響楽団との1993年の録音。オーケストラの広がりあるサウンドを、マイク4本のみのこだわりを持って収録。
日本センチュリー交響楽団によるハイドン・プロジェクトのCDは、現在 Vol.18まで進行中。Vol.15は2019年8月9日、 大阪、いずみホールでのライヴ録音。
ONTOMO MOOK
伊熊よし子監修/音楽の友、Webマガジン「ONTOMO」編
音楽家は演奏会などが終わったあと、お酒や食事を楽しみながら、その緊張をほぐす人が多い。お酒にも詳しく、グルメも多い彼ら・彼女らのいわばオフショットを紹介し、その音楽性はもちろん、ふだんステージや現場で見せている顔とは違う一面を、マリアージュするお酒やお店とともに紹介。それらを通して音楽家の魅力あふれる人間性、彼らの音楽活動に取り組むエネルギーの源を伝える。
また、「食」以外では、「オーディオ」や「美容」、「楽器」など、さまざまな観点からアーティストのエネルギーの源泉となるものを取材。読者がそれぞれの源泉を感じ、至福なひとときを過ごしていただけるような1冊。
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