アートの最先端を疾走するピアニスト/美術家・向井山朋子が制作した短編映画が配信
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
最初から、この人は何かが違う、と感じていた。
アムステルダム在住の向井山朋子さんに最初にコンタクトをとったのは確か1993年頃のことだった。何度か手紙のやりとりをしたり国際電話をしたり、たまに帰国された際に話し込んだりするたびに、たくさんのことを教えていただいた。ジェフスキの「不屈の民変奏曲」がベートーヴェンと深くつながっていること、ヌード写真や子どもの絵本や、ロシアの前衛(ラスカートフやウストヴォルスカヤ)のことなど、音楽に限らずあらゆる領域にわたっていた。
いつの間にか、向井山さんは日本の音楽業界からは仰ぎ見られる孤高のレジェンドになっていった。ほかのどの演奏家とも違う、映像や美術や舞踊と最も自在にゼロからコラボレーションできる最強のアーティストの一人だ。現代最高の振付家イリ・キリアンとコラボレーションしたときには本当に驚いた。2人とも同じオランダが本拠だから、自然といえば自然なのだけれど。
「ピアニスト」だけでなく「美術家」と肩書きにつけるようになったのも、それまでの向井山さんの音楽への姿勢からして、自然な成り行きと思えた。枠を作らない。媚びない。孤のままで、裸であろうとすることで、どんな芸術にも分け隔てなく開かれた状態であろうとする人だから。
そんな向井山さんが、レニエ・ファン・ブルムレン監督(ピーター・グリーナウェイとの協働でも知られる、映像エフェクトの第一人者)と、俳優・ダンサーの森山未來とのコラボレーションで、原美術館(東京都品川区の御殿山にある、現代美術に特化した美術館。1938年建築の洋館)を舞台に制作した音楽短編映画「TWO-in transit Hara Museum」を期間限定で配信する。
2020年はカタストロフィーな1年だった。すごいスピードで規律が損なわれていくそばで、あっという間に新しい秩序が作られていく。いっぽう、多くの事柄は今までと同じように留まったままだ。私たちはトランジット(通過)のなかにいる、成り行きを見守る傍観者であり、舵をとる当事者でもある
新しい時代へと否応なしに変わろうとしているこの時期、コンテンポラリーな芸術家たちが感じているものがどんなものなのか。新しい年の最初のアート体験として、ぜひ自宅でじっくり味わってみたい。
予告編
日時: 2021年1月2日0:00より1月11日23:59まで
視聴料金: 1,200円(購入時より72時間視聴可能)
作品中の使用楽曲:
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン:ピアノソナタ 第38番 Hob.XVI:23 op.13-3 ヘ長調(1773)
ルイ・アンドリーセン:バラの記憶(1992)
ヤニス・キリアキデス:La Mode (2017)
向井山朋子:インプロビゼーション
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