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2019.03.18
武蔵野市民文化会館/特集「ホールでひとときを」

チケットは瞬殺!? 上質の演奏会を市民が気軽に楽しむために尽力——武蔵野市民文化会館

東京都内だけでも数多くのコンサートが開かれているなか、異色のチラシと独自の企画、低料金で人気を博す武蔵野市民文化会館。コンサートによっては30分以内にチケットが売り切れる。
新宿駅から14分、都心を少し離れてゆったりとした時間のなかで楽しむクラシック音楽はまた格別なはず。自らも武蔵野市民文化会館のコンサートに通っていたのが現在の仕事のきっかけだという、公益財団法人武蔵野文化事業団の事業課長、和田能さんに話を伺った。

取材・文
山田治生
取材・文
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

提供:(公財)武蔵野文化事業団
写真:林 喜代種

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武蔵野市が誇る音楽ホール

武蔵野市は東京23区の西隣に位置する人口約14万人の都市である。中心街である吉祥寺は全国の「住みたい街」のなかで常に上位にランキングされる。

武蔵野市民文化会館は、その吉祥寺駅よりも、三鷹駅に近く、市のほぼ中央の住宅街に位置する。

街路樹を眺めながら、駅からホールに向かう時間もまた楽しい。写真提供:武蔵野市民文化会館

クラシック音楽ファンのあいだでは、手作りチラシと、低価格のチケットで知られる。そして、クラシック音楽だけでも70から80回に及ぶ自主公演の多さが特徴となっている。

大ホール(1252席)と小ホール(425席)があり、都内でもっとも古い室内楽専用ホールの一つである小ホールは、パイプオルガン(デンマーク・マルクーセン&ソン社製)を有し、音響の良さに定評がある。

2018年10月29日に小ホールで行なわれたベルリンRIAS合唱団の公演。
世界的にも注目されている武蔵野市国際オルガンコンクールや、子どもたちを対象にしたオルガンコース(7回のレッスンと発表会)も行なわれている。

武蔵野市民文化会館名物! 手作りのチラシで

武蔵野市民文化会館を運営する公益財団法人武蔵野文化事業団の和田能事業課長はこう語る。

公益財団法人武蔵野文化事業団の和田能事業課長。

「手作りチラシは担当職員が作っています。クラシック・ファンだけでなく、一般の方にも興味を持ってもらえるように、ときには過激なキャッチフレーズも使います(笑)。コンサート情報のメインはこの手作りチラシです」

SNSなどでも話題になる名物チラシ。ひとつのコンサートに別パターンのチラシを作ることも……手作りならではの柔軟な対応を取っているという。

破格? 低価格で初心者も楽しめるプログラム

チケットの値段設定の低さも際立っている。

たとえば、小ホールでの、ベルリン・フィル首席フルート奏者のマチュー・デュフォーのリサイタル(7月30日)は一般2500円、話題の女性トランペット奏者、ルシエンス・ルノダン=ヴァリのリサイタル(7月13日)は一般2000円、松居直美のJ.S.バッハ:オルガン作品全曲演奏会第8回」(6月15日)、「同第9回」(11月16日)はそれぞれ一般1800円。

マルクーセン&ソン社製のパイプオルガンが鎮座、音響に定評がある小ホール。写真提供:武蔵野市民文化会館

大ホールのオーケストラでは、ミヒャエル・ザンデルリンク&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団(7月2日)が、一般S席8000円、A席7000円。この演奏会では、シューベルトの交響曲第7番《未完成》、ベートーヴェンの交響曲第5番《運命》、ドヴォルジャークの交響曲第9番《新世界より》の三大交響曲が取りあげられる。初心者にもおススメである。

青い座席が美しい大ホール。クラシック音楽だけでなく、ジャズ、ポップスなどさまざまなジャンルの自主公演が行なわれている。

武蔵野市民だけじゃない! 「アルテ友の会」でさらにお得に上質な公演を

「チラシの印刷費を抑え、音楽事務所と交渉し、できるかぎり低価格に設定していますので、気軽に聴きに来ていただきたいですね」と和田課長はいう。

また「アルテ友の会」(年会費1000円)に入ると、さらに割引きのサービスが受けられる。

「武蔵野市民を中心に6500名ほどの会員がいます。毎月チラシなどのDMをお送りするほか、公演によって違いますが、基本的に10パーセントの割引きサービスをします。先行予約のサービスはないのですが、ほとんどの公演が会員の皆さんを中心に売り切れます」。

武蔵野市民文化会館の特徴は、このホールならではのユニークな企画やプログラムにある。

「都心とは違う、ここでしか聴けないオリジナリティのある企画を心がけています。お客様の中心は市民の方ですが、市外の音楽ファンも来ていただけるラインナップを工夫しています」。

そのために音楽事務所を通さず、直接、出演交渉をする、独自招聘も行なっている。2年前にはマルティン・ハーゼルベック&ウィーン・アカデミー管弦楽団を招聘し、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏会を開いた。今年は、第8回武蔵野市国際オルガンコンクール優勝者であるアマンダ・モールを独自で招聘し、6月1日にリサイタルを開催する。

第8回武蔵野市国際オルガンコンクールで第1位を獲得したアマンダ・モール。写真提供:武蔵野市民文化会館

駅前の雑踏から離れた、都会のオアシスともいえるホール。駐車場も備えている。近隣にはカフェやギャラリーもある。武蔵野市民文化会館ならではのコンサートを聴きに訪れたい。

ゆったりとくつろげるエントランスは大理石の階段や、豪華なシャンデリアも美しい。
公演情報
アマンダ・モール オルガン・リサイタル

日時: 2019年6月1日(土) 17:00開演

出演: アマンダ・モール(オルガン)

曲目: J.S. バッハ/ 前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548

メシアン:/『キリストの昇天』より第2曲「天国に希求する魂の清らかなアレルヤ」ほか

料金: 一般 2,000円、友の会 1,800円/CD付、25歳以下 1,500円

詳細はこちら

マチュー・デュフォー リサイタル

日時: 2019年7月30日(火) 19:00開演

出演: マチュー・デュフォー(フルート)、浦壁 信二(ピアノ)

曲目: プーランク/フルート・ソナタ FP 164

シューベルト/「しぼめる花」による序奏と変奏曲 Op. 160, D. 802 ほか

料金: 全席指定 一般 2,500円、友の会 2,250円、25歳以下 1,000円

詳細はこちら

ルシエンス・ルノダン=ヴァリ リサイタル

日時: 2019年7月13日(土) 15:00時開演

出演: ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ(トランペット)、沢木良子(ピアノ)

曲目: ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ、クライスラー/ウィーン小行進曲 ほか

料金: 全席指定 一般 2,000円、友の会 1,800円、25歳以下1,000円

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松居直美 J.S.バッハ:オルガン作品全曲演奏会《第8回》

日時: 2018年6月15日(土)14:00開演

出演:松居直美(オルガン)、鈴木美紀子(ソプラノ)、鈴木陽代(コラール日本語訳詞朗読)

曲目: われらキリストの徒 BWV710、幻想曲とフーガ ト短調  BWV542 ほか

料金: 全席指定 1回券 一般 1,800円、友の会 1,500円

2回セット券(第8回と第9回のセット券)一般 3,000円、友の会 2,500円

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ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

日時: 2019年7月2日(火)19:00開演

出演: ミヒャエル・ザンデルリンク(指揮)、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)

曲目: シューベルト/交響曲第7番 ロ短調《未完成》D.759

ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調《運命》 Op.67

ドヴォルザーク/交響曲第9番 ホ短調《新世界より》Op.95

料金: 一般 S席 8,000円、A席 7,000円 友の会 S席 7,200円、A席 6,300円

25歳以下 1,000円(要証明・枚数限定)

詳細はこちら

 

問い合わせ: Tel.0422-54-2011

会場: 武蔵野市民文化会館

武蔵野市民文化会館

[運営](公財)武蔵野文化事業団

[開館]1984年

[座席数]大ホール1252席(オーケストラ・ピット使用時1097席)

小ホール425席

※車椅子スペース:大小ホールとも4席

[住所]180-0006東京都武蔵野市中町3-9-11

[問い合わせ]Tel.0422-54-8822

http://www.musashino-culture.or.jp

取材・文
山田治生
取材・文
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

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