家族のために書かれた名曲〜バッハから兄へ、ドビュッシーから娘へ……家族愛を聴く
2020.12.10
メシアン「トゥランガリーラ交響曲」~発音要注意! サンスクリットの直訳は“馬の遊...
青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...
タイトルの《さまよえるオランダ人》だけを見ると、なぜオランダ人? どこをさまよってるの? といいたくなります。このワーグナーの歌劇(1843年、ドレスデンで初演)、もとのタイトル Der fliegende Holländer (The flying Dutchman) を直訳してしまうと、「空飛ぶオランダ人?」となり、ますます誤解が深まりそうですが、この場合のflyingは「放浪を繰り返す」という意味で用いられています。
7年に一度しか港への寄港ができない幽霊船の船長(オランダ人)を、自分がその哀れな船長を救わねば! と使命感に燃えた女性の献身的な愛によって救う、というお話。ワーグナーはこの「女性の献身的な愛」という主題に、生涯を通じてこだわり続けました(作曲家自身の好みだった、ということでしょうねえ……)。船上で嵐にもまれた作曲家自身の経験は、第3幕の劇的な音楽にもそのまま活かされました。
そういえば、フランス語のタイトルは、オランダ人が乗る「幽霊船 Le Vaisseau fantôme」と、そのものズバリの名称で呼ばれています。タイトルをめぐる事態はさらにややこしくなりそう……。