読みもの
2020.08.19
曲名のナゾ Vol.7

ワーグナー《さまよえるオランダ人》〜直訳すると「空飛ぶオランダ人」?

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

ミヒャエル・ディーマー《さまよえるオランダ人》(1939年以前)

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タイトルの《さまよえるオランダ人》だけを見ると、なぜオランダ人? どこをさまよってるの? といいたくなります。このワーグナーの歌劇(1843年、ドレスデンで初演)、もとのタイトル Der fliegende Holländer (The flying Dutchman) を直訳してしまうと、「空飛ぶオランダ人?」となり、ますます誤解が深まりそうですが、この場合のflyingは「放浪を繰り返す」という意味で用いられています。

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7年に一度しか港への寄港ができない幽霊船の船長(オランダ人)を、自分がその哀れな船長を救わねば! と使命感に燃えた女性の献身的な愛によって救う、というお話。ワーグナーはこの「女性の献身的な愛」という主題に、生涯を通じてこだわり続けました(作曲家自身の好みだった、ということでしょうねえ……)。船上で嵐にもまれた作曲家自身の経験は、第3幕の劇的な音楽にもそのまま活かされました。

そういえば、フランス語のタイトルは、オランダ人が乗る「幽霊船 Le Vaisseau fantôme」と、そのものズバリの名称で呼ばれています。タイトルをめぐる事態はさらにややこしくなりそう……。

 

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

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