ストラヴィンスキー《春の祭典》〜どんなお祭り?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
日本では、豊作や豊漁、厄払いを目的にしたものだったり、祇園祭のように疫病退散を目的にしたお祭りなど、それぞれの願いごとに合わせたお祭りが行われます。
さて、ストラヴィンスキーの作品名にあるこの「春の祭典」とは、どんなお祭りなのでしょう。
場所は明確に示されていませんが、舞台はおそらくロシアの西の末端、現在のリトアニアあたりだろうと言われています。
2つの部族が争い、太陽神が怒り、その怒りを鎮めるべく乙女をいけにえにするという話で、曲名の指す「祭典」とは、いわゆる人身供養のお祭りのことを指します。このストーリーは、ストラヴィンスキー自身の「乙女たちが死ぬまで踊り続けるのを村の長老たちが輪になって見る儀式」というアイデアを元に作られました。
ストラヴィンスキーは、暴力、神への信仰、いけにえという内容を、複数のロシア民謡を用いながら試行錯誤を重ね、不協和音や不規則なリズムによって構成された奇抜な音楽で表現しました。
下:《春の祭典》自筆譜、第2部「いけにえ」終曲より。あまりにも複雑な拍子とリズムのため、作曲者自身によって青鉛筆で大きく、それぞれの拍子が書かれています。
革新的だったのは音楽だけではありませんでした。土着民族の衣装、そしてバレエダンサーのニジンスキーによる、腰を曲げてよちよち歩いたり、茫然と立ち尽くして動かないような、当時では考えられない(今でもあまり見ない)ような振り付けも、観客たちに衝撃を与えました。
その結果、この前代未聞の作品に対して、賛成派の聴衆と反対派の聴衆に分かれて激しい暴動が起こり、演奏中にもかかわらず音楽が聴こえなくなってしまったそう。たしかに、当時はまだ後期ロマン派の音楽が根強い時代でしたからね……。
しかし、ある意味でお祭りのような暴動を経てもなお演奏され、今では多くの聴衆をやみつきにしている《春の祭典》。ストラヴィンスキーのしてやったりな表情が浮かびます。
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(初演を指揮したモントゥーによる初録音、1929年)
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(作曲者による初録音、1940年)
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(ピリオド楽器での録音、2014年)
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