水辺の風景と鐘の音の街 ジュネーヴと、リスト《ジュネーヴの鐘》
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
美しい水辺の景色が見られるジュネーヴ
先に、ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門で入賞した五十嵐薫子さんのインタビューでもお話が出てきましたが、スイスは水の豊かな国。湖や大きな川が多く、ジュネーヴのような都市でもあちらこちらで美しい水辺の景色を見ることができます。
私もコンクール取材中は、滞在先から少し歩いたころに有名な大噴水のあるレマン湖があったので、散歩に行きました。
元は実用的な目的のためにできた噴水らしいですが、今は観光名所として存在しているそう。今のご時世、とくに冬場で水力発電の量が少なくなる時期は、電力不足解消のため、稼働時間が短くなるらしいです。
また、このレマン湖からの澄んだ水が流れるローヌ川と、山間部を通ってきた水が流れるアルヴ川が交わる、ラ・ジュンクシオンというポイントも近かったので、毎朝この場所からの眺めを目標にジョギングをするのが日課になっていました。
二つの川は、水質が異なるため色が違い、さらに温度も異なるのですぐには混ざり合わず、このような光景が見られるのだそうです。上から見ても、下から見ても、不思議な美しさ。
さらに私はコンクールの空き日、ジュネーヴから電車で2時間ほどのオルテンという街に、チリ人の友人を訪ねて遊びに行ってきました。彼女の家の裏にもアーレ川という大きな川が流れていました。この川はやがてライン川に合流するそうです。
夏になると、防水バッグに着替えとタオルをいれてザブンと川に飛び込み、バッグにつかまって流されながら遊び、レストランのあるところで岸に上がって服を着て食べて帰ってくる、という遊び方があるそうです。ものすごく楽しそう。
スイス、オルテンの街を流れるアーレ川。やがてライン川に合流します。 pic.twitter.com/KtftlRIjUN
— 高坂はる香(音楽ライター) (@classic_indobu) November 7, 2022
ジュネーヴで1日中鳴り響く鐘の音
そしてスイスでもうひとつ、とてもよく触れることになるのが、鐘の音。上の川の動画でも、うっすらと鐘の音が響いているのがわかるでしょうか。
この私のチリ人の友人は、10年ほど前からスイスに住んでいますが、最初はこの頻繁な鐘の音が煩わしく、「スイスの人は隣人の出す音とか車の騒音にはすごく神経質なのに、なんでこの大音量の鐘の音は気にならないのか」と疑問に思ったそうです。
そう言いながら10年も暮らしているのですから、今はどうなの?と聞いたら、「慣れた」と言っていました。それじゃあ子どもの頃からここで暮らしている人が気にしないのは当然ですね……!
ジュネーヴでも、おそらくサン=ピエール大聖堂から響いてくる鐘の音を頻繁に耳にしました。
リストが愛人のマリー=ダグー伯爵夫人とスイスを旅した時の印象に基づいて書かれた「巡礼の年 第1年 スイス」には、《ジュネーヴの鐘》という曲があります。
「巡礼の年 第1年 スイス」より第9番《ジュネーヴの鐘》
教会の鐘の音をテーマにした作品といえば、ラフマニノフの前奏曲《鐘》が有名ですが、《ジュネーヴの鐘》のほうを聴くと、やはりロシア正教の鐘の音とは別ものだよね、とつくづく感じてしまいます。
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