ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門第3位入賞!五十嵐薫子さんにインタビュー
去る9月から11月にかけて、オンラインによる予選、ジュネーヴでのセミファイナルとファイナルが行なわれた第76回ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門。優勝はカナダの17歳、ケヴィン・チェンさん。そして第3位には、日本の五十嵐薫子さんが入賞しました。
このコンクールは今回から、セミファイナルでリサイタルと室内楽に加え、アーティスティック・プロジェクトという課題が取り入れられました。これは、入賞後2年間で実践したいプロジェクトをプレゼンテーションするというもので、そこにはピアニストは今や音楽的才能だけでなく、「人をインスパイアする」ヴィルトゥオーゾであることが求められるというコンクール側の考えがあるとのこと。
セミファイナルのリサイタル(60〜75分という指定で、長い!)についても、自身で書いたプログラムノートを提出する必要があり、これらも審査の対象となります。
そんな多岐にわたる課題をこなし、すばらしい演奏で聴衆を魅了して見事入賞を果たした五十嵐さんに、演奏後に結果を待つ間、コンクールの思い出、そして音楽への想いについて伺いました。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
ホームステイ先で自然を眺める時間が癒しに
——五十嵐さんがコンクール中に滞在したホームステイ先は、すごく大きなお家だったそうですね。
はい、すごかったです。門があって、家に着くまでそこから何十メートルもあって。私は、3つ建物があるうちのまる1軒を借りていました。先祖代々そこに住んでいらっしゃるようですが、お城のようでした。
——すごいですね、“なんとか何世”みたいな……。
まさにそういう感じです! 壁に肖像画がかかっていました(笑)。
——ヨーロッパのそういう場所で生活するだけでも、良い経験になりそうですね。
本当にそうでした。プライベートビーチの湖版みたいなものがあり、そこにはボートがあって。でもプールもあるんです。
——普段日本で勉強していらっしゃいますが、こうしてコンクールでヨーロッパの暮らしを経験することで、音楽的に影響を受ける部分はありますか?
日本、それも東京に住んでいると、街が大きく、人も多くて、とても進んだ環境の中に身を置いている感覚があります。でも、ただぼーっと過ごすとか、自然を眺める時間があまりありません。
今回はコンクール期間中でしたけれど、朝晩、湖でぼーっとしていたらすごく癒されて、肩の力を抜いて練習でき、そういう時間を持つことって大切なんだなと思いました。
——湖はいいですよね。チャイコフスキーなんかがやたら湖のほとりで作品を書いている理由がわかりますよね(笑)。
確かに。みんな精神的に行き詰まってくると湖に行くのかもしれません(笑)。
きっとピアニストになるのだろうという根拠のない自信があった
——ところでファイナリスト紹介の動画で、ピアノを弾き続けてきた背景にはおじいさまの影響があると話していらっしゃいました。そうして弾いてくるなか、ピアニストの道を決意した瞬間はあるのでしょうか。
小さいときから人前で弾くのがすごく好きだったんです……練習は全然好きじゃなかったのですけれど(笑)。自分から真剣にたくさん練習するようになったのは高校3年生から大学生の頃ですが、それまでは根拠のない自信があって、きっとピアニストになるのだろうと思いながら過ごしていました。
ピアノが嫌になったこともありませんし、いつ決心したというよりは、その方向にまっすぐ進んできたという感じです。
五十嵐薫子さんのファイナリスト紹介動画
——コンクールでも幅広いレパートリーを弾いていらっしゃいましたが、普段、ピアノで思い描いている音を出すために心がけていることはありますか?
まず第一に大切なのは、どういう音を出したいかのイメージを持つことです。ただ子どもの頃に陥りやすかったのが、頭の中の音を追いかけすぎて、本番で自分が出している音をうまく修正できなくなるということ。理想の音と、実際の音をつなげることについては、練習を重ねたり、録音を聴いたりして、差をどんどん縮めていく努力が必要です。それについてはまだまだ勉強中です。
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