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2020.03.19
「音大ガイド」4.音大生の卒業後・就職

(1)データで見る音大卒業生の卒業後・就職(教員・企業・講師・留学他)

音大への進学を検討し始めたときに、もっとも気になることの一つとして、卒業後の進路があると思います。器楽を専攻したからといって、全員が演奏家になっているわけでもなさそうだし、それ以前にすぐに仕事に就く人もいればそうではない人もいるようだし……。そんな疑問について、2019年卒業生のデータをもとに明らかにしていきます!

*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。

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『音楽大学・学校案内』編集グループ 音楽之友社

執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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音大卒業生の進路については、Webサイトにて公開している大学も多くあります。しかし、その集計や公開の方法はさまざまです。進路別のカテゴリー分類は学校によって異なっていますし、全体の比率だけを公開している学校もあれば、卒業生が就職した企業・団体名だけを列挙している学校もあります。

いっぽう、音楽之友社が毎年発行している書籍『音楽大学・高校 学校案内』には、各学校の紹介記事のなかに「卒業生の進路」という項目があり、ほぼ統一のカテゴリー分類にて、進路ごとの人数が掲載されています。

本記事では、この2020年版の「卒業生の進路」に掲載されている2019年卒業生のデータから、私立の音楽大学、私立の一般大学の音楽学部、国公立大学の音楽学部、国立大学の教育学部の音楽専攻、これらの数字を20校分抽出・合計し、その数値をもとに、音大卒業生の進路・就職状況を見ていきます。

仕事に就いた人と就いていない人は、およそ半々

グラフの数値を大きく2つに分類すると、卒業してすぐに仕事に就いた人(企業・団体、教員、演奏関係、音楽教室等講師)がおよそ半分の53%、仕事に就いていない人(進学・留学、その他)が47%、ということがわかります。

仕事に就いていない半数のなかの6割は進学・留学している

まず仕事に就いていない47%の人がどうしているかを見ていきましょう。そのうちの57%の人が進学・留学という道を選択しています。全体での割合にすると、27%となります。一般大学でも、文系学部よりも理系学部のほうが大学院に進む人が多いですが、音楽という分野もまた専門を極めるために研鑽を積み続ける人が多いということが言えると思います。

いっぽう、仕事に就いていない人のなかで、進学・留学をしていない「その他」の人は43%、全体では20%となります。この人たちが何をしているかというと、アルバイトをしながらフリーで演奏活動を始めて少しずつ仕事を増やそうとしている人、進学、留学、就職の準備をしている人など、さまざまです。

仕事に就いた半数のなかの5~6割が民間企業・公務員などの組織に

いっぽう仕事に就いた人は、どんな職種を選択しているのでしょうか? ここでもっとも多いのは、会社、自治体、各種団体など、組織に所属した人たちです。仕事に就いた53%の人のなかでは64%、全体からみると34%の人がここに入ります。このなかには音楽関係の仕事も、そうでない仕事も含まれますし、民間企業も公務員も入ります。

各音大の学生課や進路支援の担当者へのヒアリングを重ねると、この進路の比率は以前よりも上昇しているとのことです。「音大ガイド1.(1)音楽とともに歩む音大生の卒業後の人生とは?」および「音大ガイド4.(2)音大生の就職・就活・仕事上の強み、PRポイントは?」でもふれたように、音大卒業生の資質が各方面で評価されていること、また音大で音楽ビジネスを学ぶ専攻・コースが充実したことやキャリア開発支援・進路指導が進化してきたことと無縁ではないでしょう。

仕事に就いた半数のなかの4~5割が音楽教員、音楽教室等講師、演奏関係に

仕事に就いた人の36%が、音楽教員、音楽教室等講師、演奏関係に進んでいます。全体における比率をみると、小中高の音楽教員が9%、音楽教室や自宅での音楽講師が5%、演奏関係が5%、合計で19%となっています。

これは意外と低い数字に見えるかもしれません。しかし、これは統計上のマジックともいえます。この数字は卒業時のデータですから、実際は、卒業後すぐに仕事に就いていない47%の人のなかから、その後これらの仕事に就く人が一定数存在します。今回の統計データでは明らかになりませんが、最終的に全体の3~4割はこれらの仕事に就いていると思われます。

最終的には、企業・団体と、音楽関係は半々?

大学のホームページなどで公開されている客観的なデータは卒業時のものが中心ですので、最終的にどのような進路選択がされているかは、十分な情報がありません。しかし、上記の推測は大きな間違いではないと思われ、卒業してすぐに企業・団体(音楽関連企業・団体含む)に勤める人が半数程度、卒業してすぐ、もしくはその後進学・留学などを経て演奏関係、教員などの音楽関係に進む人も一定数存在する、ということが言えるのではないでしょうか。

音大ならではの進路選択

一般の大学ではあまりない話ですが、音大の場合、現役学生の間になんらかのオーディションに受かって入団するために退学する、というケースもあります。退学者のなかに就職者がいる、というのも一般大学ではなかなかない話ですね。

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執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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