読みもの
2022.08.04
音大入試の「楽典」解き方のコツ

音大入試の楽典、「和音」問題の解き方のコツは?――鳴っている音を見逃すな!

音大(音高)入試の楽典に悩む人は多いと思います。テキストを読んだけれど問題は解けない。解くスピードが遅い。どうすれば良いかわからない。そこで今回、2022年7月27日刊行の『音大入試の「楽典」 解き方のコツ&過去問トレーニング』から、論点別に解き方のコツをお伝えします。第3回は「和音」。出題パターンに仕掛けられた罠をスマートにスピーディーに攻略しましょう!

*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。

菅原真理子
菅原真理子

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修士課程作曲専攻修了。昭和音楽大学附属音楽教室講師。元昭和音楽大学および同短期大学部非常勤講師。音楽之友社刊『音楽大学・高校 ...

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問題
次の楽譜に指定された部分の和音の種類を答えなさい。

今回は和音の問題です。なんというシンプルな問題文でしょう! わずか1行足らずですね。①も②も、指定された部分の音を読みさえすればそのままシンプルに解ける……といいのですが。まずは①から、そして次に②を、順に解きましょう。

①の和音の原形は?

和音の問題を解く最初の1歩は、原形に直すこと。①では、指定された部分の音を下から順に読むと「ヘ・ハ・ヘ・イ」ですね。調号の♭はどの音にも関係していませんし、臨時記号も付いていません。2個含まれている「ヘ」音は片方だけを残して考えると、原形は次のようになります。問題用紙の余白などに音符でメモしておきましょう。

①の和音の種類は?

メモした原形を見ると、根音から順に長3度+短3度の音程で積み重ねられているので、長三和音だということがわかります。
なかなか順調ですね。では次に、②に取り掛かりましょう。

②の和音の原形は……え? 音が足りない!

②では、指定された部分の音を下から順に読むと「イ・嬰ハ」。原形に直すどころか、これでは音が足りない気が……。種類を答える? 無理ですよね。

足りない音はどこにある?

こんなときには、あわてずに楽譜の前のほうに視線をすべらせましょう。付点2分音符の「ヘ」音が、②の時点でまだ鳴り続けていることに気が付きましたか?

こうした音を見落とすと、問題を解けなくなってしまったり、和音の種類を勘違いしたまま解答してしまったりと失敗を起こしがちです。これは、実にもったいないです。視野を広く持って、「指示された部分で実際に鳴っている音」を慎重に読み解きましょう。

さて、前から伸びていた「ヘ」音を「イ・嬰ハ」音に足してから、今度こそ原形に直すと、次のようになります。

②の和音の種類は?

原形を見ると、根音から順に長3度+長3度の音程で積み重ねられているので、増三和音だということがわかります。

正解は ① 長三和音  ② 増三和音

和音の問題には、「種類」だけでなく「転回形」や「所属調」などいろいろな切り口のものがあり、問題文は一見シンプルでも、中身が複雑な出題になっていることがあります。解答の過程をスッキリ頭に入れてスマートに問題を解くために、『音大入試の「楽典」解き方のコツ&過去問トレーニング』の第4章「和音」を役立ててください。

受験生待望の新刊!

『音大入試の「楽典」解き方のコツ&過去問トレーニング』

 

本書は、楽典の基本知識をインプットした人が入試問題を効率的に解けるようになるために、出題パターン別に解き方のトレーニングを行う、これまでになかった画期的な一冊です。

 

 

菅原真理子(監修・著)、井上ゆり子、堀優香、辻田絢菜(著)

2022年7月27日発売、B5判、176ページ、税込1870円



本書は、25年にわたり『音楽大学・高校 入試問題集』楽典問題の解答・解説執筆の中心人物であり、音大附属音楽教室で多くの受験生の指導も長年行うことで、音大の入試問題に精通している「受験生の味方」菅原真理子氏監修によるものです。

 

これまで楽典の入試対策書籍は、基礎知識の本と問題集は刊行されていたものの、これを繋ぐ入試対策のための「アウトプット・トレーニング」が効率的にできる書籍が見当たりませんでした。

 

本書はそこを解消すべく、菅原氏はじめ執筆陣の総力による知識体系と指導経験をベースにして、解き方や間違えやすいポイントを「まるで隣りで教えているように」わかりやすく解説しています。

 

特長は、近年の出題傾向に対応・実際に出題された近年の問題を使用、難問・奇問・レア問を排しオーソドックスな出題のすべてに対応、スムーズに学習が進む出題パターン別のアウトプット練習、「あるあるミス」「解き方のポイント」など工夫を凝らしたレイアウトなどです。

 

『音大入試の「楽典」解き方のコツ&過去問トレーニング』

菅原真理子
菅原真理子

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修士課程作曲専攻修了。昭和音楽大学附属音楽教室講師。元昭和音楽大学および同短期大学部非常勤講師。音楽之友社刊『音楽大学・高校 ...

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