フィンランド出身のインキネンの理想を家族のような一体感でつくり出す、日本フィルハーモニー交響楽団
フィンランド人の母をもつ渡邉曉雄が創立指揮者である日本フィルハーモニー交響楽団。世界初のシベリウス交響曲全集のステレオ録音を手掛けた伝統を受け継ぎ、現在はフィンランドのシベリウス音楽院出身、ピエタリ・インキネンが首席指揮者を務める。
フィンランドと日本の外交樹立100周年である2019年は、まさに日本フィルの年。ヨーロッパツアーを予定し、大きな家族のような一体感がいっそう深まるであろう日本フィルから目が離せない!
シェフにきく「あなたのオーケストラは何色?」~首席指揮者 ピエタリ・インキネン
Q. あなたのオーケストラはいま何色ですか?
スカイブルー。
Q. その色を選んだ理由を教えてください。
空というのは果てしない感じがするし、私たちもお客さんと一緒に限界を超えるくらいの気持ちで遠いところを目指したいと思っているからです。
空は自由ですね。ベートーヴェンの第九にもあるように、自由な広い空の下で人類みな手を取ってというイメージをもっていきたいと思いますし、青い、自由な空の下で皆さんと音楽をつなげていきたい。
この間の日曜日に宇部でチャリティーコンサートがあって、少し前から私は広島入りして原爆ドームに行き、改めて原爆で被害に遭われた人々の悲惨な体験を見てきました。だからこそ人々はもっと手を取り合って、という思いを強くしたばかりだったので、よりいっそう空に込めた思いがあります。
ナビゲーターからの推薦状「日本フィル」
林田直樹(音楽ジャーナリスト)
一人一人の聴衆を意識しながら音楽を届けようとする気持ちがもっとも強い、そして沸騰するような心の熱さをもったオーケストラ。杉並区を本拠としながら、日本全国の地域とも密接な結びつきを強めてきた、草の根運動的なたくましい精神をもつ。教育活動やアウトリーチでも卓越した先駆的実績がある。創設者・渡邉曉雄の指揮による世界初のシベリウス交響曲全集の録音など、大胆なレパートリーの開拓も伝統のひとつ。
ナビゲーターからの推薦状「はじめの一歩にオススメの公演」
山崎浩太郎(音楽ジャーナリスト)
「第715回定期演奏会 ラザレフが刻むロシアの魂 SeasonⅣグラズノフ 5」
近代ロシアのオーケストラ作品は、憂いをたたえて情緒豊かなメロディと、重厚華麗なオーケストレーションで人気が高い。ストラヴィンスキー作曲の《火の鳥》は、20世紀初頭にパリで初演され、力強い躍動感でバレエの世界に革命をもたらした作品だ。ロシア民話を題材とする音楽はドラマチックで、バレエなしでも楽しめる。
ロシア生まれの名匠ラザレフが、篤い信頼関係に結ばれたオーケストラから、熱く輝かしい響きを引き出してくれるだろう。
日時 2019年11月1日(金)19:00開演/2日(土)14:00開演
会場 サントリーホール
指揮 アレクサンドル・ラザレフ(桂冠指揮者兼芸術顧問)
曲目
グラズノフ:交響曲第 6 番
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《火の鳥》(全曲)
料金
S席 8,000円/A席 6,500円/B席 6,000円/C席 5,000円/P席4,000円/Ys席(25歳以下) 1,500円
※1回券発売は2019年6月20日(木)
今後のラザレフの公演はこちら
日本フィルにきく! ファンと出会える場は?
Q. 社会貢献やアウトリーチなど、他の活動にはどのようなものがありますか?
1. 参加して楽しむ! 音楽創造ワークショップ
英国の第一人者のマイケル・スペンサー氏を迎え、15年以上にわたり、体験型のプログラム開発を推進しています。多様性、創造性、協働力を育む学びの場として注目されるワークショップですが、音楽を題材にすることで、音楽の魅力、アートの楽しみ方を広げる経験にも繋がっています。
2. 拠点の杉並で、区役所ロビーコンサートや公開リハーサル
友好提携を結ぶ杉並区内では、様々な音楽イベントを実施しています。区役所でお昼の時間に開催されるロビーコンサートでは室内楽を、杉並公会堂での公開リハーサルでは、普段見ることのできないオーケストラの練習風景をご覧いただけます。
3. 被災地に音楽を
東北に甚大な被害をもたらした震災から7年。今も私たちは音楽を届け続け、2018年11月末で263回を重ねました。刻々と変化する被災地の状況に合わせ、支援の方法も変化しています。子どもたちの自立心を育むワークショップや現状を伝えるためのシンポジウムも開催。
Q. はじめて日本フィルの公演を聴くとしたら、どれがオススメ?
2019年は日本・フィンランド外交関係樹立100周年のアニバーサリーイヤー。これを記念して「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念公演」を3公演、6月に予定しています。
東京定期演奏会では、日本人作曲家・湯浅譲二の「シベリウス讃」(ヘルシンキ・フィル委嘱作)と、現代フィンランドを代表する作曲家であり指揮者であるサロネンの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏いたします。ソリストには久しぶりの日本フィルとの共演となる諏訪内晶子が登場。スポーティでアクロバティックなサロネン作品を、冴えわたる彼女のヴァイオリンがどのようにドライヴするのか、非常に楽しみです。
後半は、フィンランドが誇る作曲家シベリウスの「レンミンカイネン組曲」を。フィンランドに伝わる神話を元に書かれたこの作品は、7曲ある交響曲(「クレルヴォ交響曲」を除く)以上に重厚長大な音楽です。長年シベリウス(とワーグナー!)で演奏実績を重ねてきたインキネン&日本フィルならではの深い響きに包まれてください。
そして横浜定期演奏会は、オール・シベリウス・プログラム。フィンランドの血をひく創立指揮者・渡邉曉雄(2019年は生誕100周年の記念の年!)の薫陶のもと、日本フィルはフィンランドと深い縁で結ばれてきました。そのDNAはオーケストラの中に現在も受け継がれ、現代のフィンランディア・インキネンにも共通するシンパシーとなって流れています。日本のオケで唯一、フィンランド人を首席指揮者にもつ日本フィルならではの、フィンランド関連プログラム。
ソリストにはフィンランドの個性派ヴァイオリニスト、ペッカ・クーシストを迎えます。フィンランド人として初のシベリウス国際ヴァイオリンコンクールの優勝者となり、活躍のフィールドを拡げるクーシストと盟友インキネンが紡ぎだす“真のフィンランドの魂の音”にどうぞご期待ください。
続く名曲コンサートは、「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念公演」のメイン・コンサートとなります。前半は横浜定期演奏会と同じくシベリウス・プログラム。そして後半は日本とフィンランドの新しい未来に願って《新世界より》をお楽しみください。プラハ響の首席指揮者も務めるインキネンのドヴォルジャークにもご期待ください。
日時 2019年6月7日(金)19:00開演/8日(土)14:00開演
会場 サントリーホール
料金 S席 8,000円/A席 6,500円/B席 6,000円/C席 5,000円【完売】/P席4,000円/Ys席(25歳以下) 1,500円
出演者
指揮:ピエタリ・インキネン[首席指揮者]
ヴァイオリン:諏訪内晶子
曲目
湯浅譲二:シベリウス讃−ミッドナイト・サン− Hommage à Sibelius−The Midnight Sun−
サロネン:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス:組曲《レンミンカイネン》―4つの伝説
公式ページはこちら
会場 横浜みなとみらいホール
料金 S席 8,000円/A席 6,500円/B席 6,000円/C席 5,000円/P席 4,000円【完売】/Ys席(25歳以下) 1,500円
出演
指揮:ピエタリ・インキネン
ヴァイオリン:ペッカ・クーシスト
シベリウス:交響詩《フィンランディア》 op.26
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 op.82
日時 2019年6月16日(日)14:00開演
会場 サントリーホール
料金 S席 7,000円/A席 5,500円/B席 5,000円/C席 4,000円/P席 3,000円/Gs席 (65歳以上) 4,000円/Ys席(25歳以下) 1,500円
※2019年2月22日(金)発売
出演者
指揮:ピエタリ・インキネン
ヴァイオリン:ペッカ・クーシスト
曲目
シベリウス:交響詩《フィンランディア》 op.26
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
ドヴォルザーク:交響曲第9番 変ホ短調 op.95《新世界より》
公式ページはこちら
1956年6月創立、楽団創設の中心となった渡邉曉雄が初代常任指揮者を務める。当初より幅広いレパートリーと斬新な演奏スタイルで、ドイツ・オーストリア系を中心としていた当時の楽壇に新風を吹き込み、大きなセンセーションを巻き起こした。1962年には世界初のシベリウス交響曲全集(渡邉曉雄指揮)を録音。また、イゴール・マルケヴィチ、シャルル・ミュンシュなど世界的指揮者が相次いで客演、1964年にはアメリカ・カナダ公演で大成功を収め、創立から10年足らずの間に飛躍的な発展を遂げた。
また2008年から8年間にわたり首席指揮者を務めたロシアの名匠アレクサンドル・ラザレフとともに2011年には香港芸術節にも参加。アジアへとその活動の場を広げ、演奏面でも飛躍的に演奏力が向上したと、各方面より高い評価を得た。
2016年より首席指揮者を務めるフィンランドのピエタリ・インキネンとは、日本フィルの伝統でもあるシベリウスに加え、ドイツ音楽の真髄に迫るプログラムを主要なレパートリーとして深める。特に創立60周年に演奏したワーグナー「ラインの黄金」全曲演奏は、日本フィルの新たな一面を全面に打ち出し、大きな話題となった。インキネンとは、2019年に13年ぶりのヨーロッパ公演が決まっており、そのスタートとして、外交関係樹立100周年を迎えるフィンランドを初めて訪れることが決まっている。
創立期から始められた「日本フィル・シリーズ」は、日本の音楽史上でも例のない委嘱制度として幅広い層の邦人作曲家への委嘱シリーズで、現在までに40作が世界初演されており、すでに“古典”と呼ぶにふさわしいポピュラリティを獲得したものも少なくない。
現在、日本フィルは、質の高い音楽を届ける「オーケストラ・コンサート」、音楽との出会いを広げる「エデュケーション・プログラム」、音楽の力で様々なコミュニティに貢献する「リージョナル・アクティビティ(地域活動)」という三つの柱に加え、2011年の東日本大震災以来継続的に行っている「被災地に音楽を」届ける活動を行っている。これらを通し、“音楽を通して文化を発信”していく。
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