モーツァルトを聴かせて醸造した日本酒を試飲してみた!(おつまみリスト付き)
ワインライター・近藤さをりさんの連載でも取材した、モーツァルトを聴かせて醸造された日本酒を、編集部で試飲してみた! ワイングラスの老舗、リーデルのグラスで日本酒の香りを楽しむという、なんともリッチな時間となりました。そして後半はなぜかおつまみセレクションに……。
オマケのプレイリスト付き。お花見のお酒にいかがですか?
某月某日、神楽坂上に位置するO社、17:00。会議室に灯りがともる。
どこからともなく集まってきたONTOMO編集部員たちの手に手に、日本酒と焼酎と酒のつまみ。
ある筋から「クラシックを聴かせて醸造したお酒があるらしい」という情報を入手したONTOMO編集部員は、酒好き編集長W指揮の下、北は福島、南は奄美からお酒を入手してきたのである。
しかし、我々はあくまで音楽メディアの編集部である。これではあまりにも心もとない……ということで、今回は「近藤さをりのお酒と音楽のおいしい関係」を連載するワインライター、近藤さをりさんをお招きして、テイスティングを教授していただくことになった。
テイスティングには器が欠かせない。
今回、近藤さんにワイングラスの老舗・リーデル社を紹介していただき、日本酒のテイスティング用にグラスをお貸しいただいた。
日本酒をお猪口とワイングラスで飲み比べてみた。
今回試飲したのは、酵母に音楽をモーツァルトの音楽を聴かせたという『純米 協奏曲蔵粋(くらしっく)』。蔵粋については近藤さをりさんの連載に詳しいので、ぜひご覧ください。
ところで、ワインのテイスティングで、赤や白などブドウの品種によってグラスの種類を変えているのを見たことがないだろうか。そもそもなぜグラスの種類を変えるの?
近藤 グラスのカーブによって、口に流れ込む速度や、口の中での広がり方、香りも変わるんです。
ワイングラスを回して空気に触れさせると、香りが開いてわかりやすくなります。グラスの中に香りが留まっているので、鼻をグラスの中に入れるくらいの感じで嗅いでみると、日本酒の香りを味わうことができます。
・ラベルを上にして注ごう! ラベルがお客様に見えるように、また液だれしてラベルを汚さないための配慮
・注ぎ終わったときにボトルをくるっと回して、しずくを口の周りに絡ませるようにすると、液だれせず綺麗に注げます
編集部員M もう酔いそうです。
と、近藤さんに勧められるがままに香りを嗅いでみた編集部員M。グラスだとふんわりと香りが広がる。日本酒がきつくて飲めない人も、グラスだとぐっと飲みやすくなる。
編集部員K お猪口とグラスで違いますね。
編集部員W ツンとくる感じは全然ないですね。
M 日本酒で香りを楽しむというのをはじめて知りました。
近藤 お猪口は空気に触れる面が小さいので、グラスほどは香りが立ちません。口の中に入れてするすると空気を含ませてすすり(ずるずると音を立てる感じ)、鼻から空気を抜くと、鼻から入ってくるのとはまた違った香りが口の中に立ち上がってきます。
お猪口だと口をすぼめて飲むことになるので、飲んだときにお酒っぽさがツーンと来るんですね。アルコールをがっと口に入れる感じです。
お酒をキューと飲みたい人はお猪口がいいかも。五臓六腑に染み渡る!
近藤 最近のお店ではお酒は冷やして出されることが多いですが、常温のほうが香りがわかりやすいんです。香りを感じるなら常温で。逆にすっきり飲みたいときは、冷蔵庫で冷やすと美味しくいただけます。
K お猪口のほうがアルコールの香りを強く感じて、グラスのほうがお米の香りがします。お猪口だったらもっと冷えてるほうが美味しいかな。
近藤 ビールも、爽やかさを求めるときは、小さいグラスでキューッと飲みますよね。
W お猪口のほうが、つまみながらクイクイクイクイ飲んじゃいますね。
Y どっちも鼻から空気を出すというのを試してみたんですが、断然グラスで飲むほうがやわらかいのはわかります。好みによるかもしれませんね。
W Yさん的にはお猪口かと思ったんですけど(笑)。丁寧に飲むタイプではなさそう。
一同笑
グラスの種類によっても変わる!
さて、ここでグラスの種類を変えてみよう。
近藤 香りをグラスの上で嗅ぐのと、鼻をグラスの中に入れて嗅ぐのとでは、感じ方が違いますよね。グラスの一番膨らんでいる部分の下に注ぐのは、テイスティングのときに、グラスの中で香りを立たせるためです。上まで注いでしまうと、空気が留まるスペースがなくなってしまいます。
どうでしょう、味わいが違いませんか?
M お猪口と広いグラスの中間という感じがします。
近藤 純米酒は重みがあるので、口径が広いグラスのほうが軽くなりますね。グラスの口が開いていると味と香りが上に向かいます。狭いグラスのほうが味の重心がより下にあり、重く感じます。
K 確かに、細長いグラスのほうがズドンとくる感じがしますよね。ストレートで。
近藤 お猪口はすすって飲みますよね。とっくりから注いで熱燗で飲んだりするので、すでに香りが立っている。すすりながら飲んでもはっきりと日本酒らしさが開いています。
奄美大島産「音楽を聴いて育った焼酎」登場!
ここで黒糖焼酎が登場! 奄美大島出身の編集部Yが入手してきた音響熟成の焼酎だ。
Y 「れんと」は飲みやすくて、結構流通しています。同じメーカーが出している「1/f ゆらぎ」をはじめて見たので、買ってきました。
近藤 れんとは、フルーツっぽい香りもありますね。
M 梅酒に近いかも。
K 杏仁の種みたいな。焼酎って香りと味のギャップこんなにありましたっけ? すごい甘い香りなのに、味はなんていうか、ギャップが!
W 上澄みの匂いは飲みやすそうだけど。
M ギャップが!
近藤 ゆらぎはラム酒っぽいというか、黒砂糖をなめた感じがありますね。れんとはフルーツっぽいですが、やっぱり黒砂糖のテイストはします。
K 加水しているほうが香りが甘くなりますね。
近藤 奄美の方は水で割って飲むんですか?
Y ロックで飲む人もいますが、水割りがメジャーな感じはしますね。
近藤 九州では割った状態で飲むことが多いようですね。
近藤さをりさんセレクト! おつまみベストマッチ発表
さて、いよいよおつまみの登場。「編集部員が食べたい」という理由で買い集めてきたおつまみ群、これだけあれば何かしらマッチするはず!
試食しつつ、近藤さんに「蔵粋」「れんと」「1/f ゆらぎ」それぞれに合うベストマッチを選んでいただいた。
美酒、おつまみと揃ったら、最後に音楽を! 編集部が選んだプレイリストもご一緒にどうぞ。
「蔵粋」に合うおつまみはこれ! 柿の種、鮭とば、ほたるいか
近藤 名前の通りクラシックな日本酒です。今流行りの酵母ではなく、酸味が出る酵母をずっと使っています。こくと旨味がある味。あっためてぬるかんで飲んでも旨味が出るかもしれません。
おつまみは何でも合いますが、柿の種。さすが米同士ですね。ローカルフードの相性を考えると、鮭とば、ほたるいかも合います。
「蔵粋」~ハイドン:交響曲104番《ロンドン》~2楽章
少しオールドファッションで、温かみのある雰囲気はハイドンの緩徐楽章を思い出すかも?
「れんと」に合うおつまみはこれ! カマンベール
近藤 かおりが華やかでフルーティーな焼酎。最初にバナナが思い浮かびました。ストーンフルーツ(ももやあんずなど、種が硬いもの)も思わせます。16度という焼酎にしては低い度数なので、味わいは軽やかでそんなに強くないぶん、何とでも合わせられるかなという万能さ。
カマンベールは癖がないので、れんとのようなまろやかな味わいの焼酎に良く合いますね。フルーティーな香りがカマンベールを引き立てます。
「れんと」ドビュッシー:《レントより遅く》
華やかで楽しいLento(ゆっくりと)にはドビュッシーが自身のピアノ曲をオーケストラ用に編曲した「レントより遅く」をどうぞ。
「1/f ゆらぎ」に合うおつまみはこれ! 黒糖かりんとう
近藤 黒糖らしさが前面に出ており、ラムに近い感じの焼酎です。かといって中米のダークラムのような濃さはなく、日本人が作った、抑制のきいた、静かに燃えている感じの味。黒糖の温かさをじんわり感じます。
黒糖同士、かりんとうはいかがでしょうか。他の原料のお酒だとそうはいきませんが、黒糖焼酎だからこそかりんとう。くるみのかわの渋さとも合いますね。
ゆらぎ~ナザレー:ピアノ曲集
南米のショパン/ブラジルの魂と評されるエルネスト・ナザレ―のピアノ曲。「静かに燃える」という近藤さんのコメントにもピッタリかな。
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