読みもの
2020.11.03
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その28

プレスト:「速い」を意味するイタリア語。加速して最上級プレスティッシモも登場!

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 よりアリア「酒で酔いつぶれて」自筆譜冒頭。

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速いテンポを指示するときに使われるプレスト。現在では「陽気」を意味するアレグロや、「生き生きと」を意味するヴィヴァーチェも速いテンポで演奏されますが、今回取り上げるプレストは、イタリア語で「速いを意味する言葉です。

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最初にプレストを用いたのは、イタリアの作曲家ニコラ・ヴィチェンティーノ(1511〜1576年)ですが、当時はまだテンポを表す楽語が多くなかったので、アダージョなどの遅いテンポとの比較で使われました。なので、そこまで速くなかったようです。

のちに、アレグロなどの言葉がテンポを表すようになり、直接的に「速い」を意味するプレストはどんどん速くなります。さらに、プレストの最上級を表すプレスティッシモも用いられ、ものすごい速さのテンポを指示されることも増えました。例えば、ベートーヴェンの初期の作品には、プレスティッシモが多く見られます。若さですね!

プレストの表す速さは、ここに留まりません。シューマンは、自身のピアノ・ソナタ第3番の終楽章にはプレスティッシモ・ポッシービレ(できる限り最高に速く)という、もはや常軌を逸したテンポを登場させます。しかも、最後の最後でピウ・プレスト(もっと速く)という指示まで……矛盾してそうですが、これぞ火事場の馬鹿力です。

このようにプレストにはグルーヴ感、そして手に汗を握るような音楽が詰め込まれているのです。

シューマン:ピアノソナタ第3番 第4楽章の冒頭
シューマン:ピアノソナタ第3番 第4楽章の終盤

プレストを聴いてみよう

1. J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第4番 BWV1049〜第3楽章 プレスト
2. モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」 KV527〜第1幕よりアリア「酒で酔いつぶれて」(プレスト)
3. ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番 作品1-3〜第4楽章 プレスティッシモ
4. シューマン:ピアノソナタ第3番 作品14〜第4楽章 プレスティッシモ・ポッシービレ
5. ラフマニノフ:組曲第2番 作品17〜第2曲 ワルツ(プレスト)
6. ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調〜第3楽章 プレスト
7. 
バーンスタイン:ウェスト・サイド物語:マンボ(メノ・プレスト)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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