エチュード:語源はラテン語のストゥディウム。初期にはスカルラッティが555曲書いた!
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
楽器をうまく弾けるようになりたい……そんなときに味方になってくれるのが、エチュードです。日本語では練習曲と呼ばれます。
エチュード(étude)はフランス語で「練習、勉強」という意味で、英語のスタディ(study)とほぼ同義語です。スペルを見ても似ていることがわかります。さらに遡ると、これらの言葉はラテン語のストゥディウム(studium)という言葉から来ているのですが、勉強という意味以外に、情熱という意味もあります。
さて、エチュードの歴史は鍵盤楽器に始まります。
ドメニコ・スカルラッティ(1685〜1757・イタリア)が、ポルトガル王女のもとに仕えた際、「わたし、どうしてもチェンバロが上手になりたい!」という王女の熱意に押され、技術向上のためのソナタを555曲書きました。
当時、まだ練習のための曲というのは一般的ではなかったため、結局ソナタという題名が付けられましたが、555曲中最初の30曲のみは、エクササイズ(イタリア語でesercizi)という副題も付けられていました。
スカルラッティ:ソナタ ニ長調 K.298
同音連打の練習曲です。
19世紀の産業革命により、ピアノがたくさん製造され、手軽にピアノを手に入れることができるようになりました。その結果、ピアノを趣味にする人が増えました。
しかし、手に入れてやみくもに弾くだけではなかなかうまくなりませんし、基礎練習ばかりでは飽きてしまいます……そんなときに役立だったのが、楽しく曲を弾きながら、技術も習得できてしまうエチュードです。
これによりエチュードの需要が高まり、多くのエチュードが書かれるようになりました。
エチュードが書かれるようになった初期は、テクニックの象徴として、作曲家たちのあいだでこんなやりとりもされました。
ショパンは、当時ピアニストとして有名だった同世代のリストに、まるで挑戦上のように《12の練習曲 作品10》を献呈しました。
そんなリストは、21歳の時にヴァイオリニスト・パガニーニの演奏を聴き、あまりの衝撃を受け、“ピアノ界のパガニーニ”になるべく《パガニーニ大練習曲 S.141》を書きました。
さらにリストは、自分をピアニストとして育ててくれた先生である、ツェルニーに《超絶技巧練習曲 S.137》を捧げました。
ショパンとリストの練習曲
1.ショパン:12の練習曲 作品10〜第1番
2.ショパン:12の練習曲 作品10〜第12番「革命」
3.リスト:パガニーニ大練習曲 S.141〜第3番「ラ・カンパネッラ」
4.リスト:超絶技巧練習曲 S.137〜第4番「マゼッパ」
このようにエチュードは、演奏者にとっての挑戦でもありますが、作曲者にとっても大きな挑戦なのです。ただ高い技術の曲を書くことはできても、それがいい音楽かどうかは、また別の話です。高い技術と深い音楽を結びつけること、これこそも作曲者にとっての練習(エチュード)なのです。
エチュードを聴いてみよう
1. ブルクミュラー:25の練習曲 作品100〜第1番「素直なこころ」
2. アルカン:練習曲「鉄道」 作品27
3. ショパン/ゴドフスキ編:12の練習曲 作品10〜第12番「革命」(左手のための)
4. ヘンゼルト:12の性格的練習曲 作品2〜第6番「もしも鳥だったら」
5. タレガ:練習曲 イ長調
6. ラフマニノフ:絵画的練習曲 作品39〜第6番 イ短調
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