トレモロ:イタリア語でゆらめく! トリルとの違いは?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
トレモロとは、ある1つの音、もしくは距離のある2つの音との間を、何度も素早く反復させる奏法のことを指します。トリルとは言葉も演奏法も似ていますが、実はちょっと違います。隣り合った音との反復であるトリルに対して、トレモロは、同じ音か、隣り合わない音との反復を意味します。
この言葉は、イタリア語で「ゆらめく、微かに震える」という意味の動詞tremolareの名詞形で、tremoloと書かれます。英語の動詞trembleと同じ語源をもつ言葉です。
トレモロという言葉が音楽史に登場したのは1517年、イタリアの作曲家ヴィンチェンツォ・カピローラのリュート曲集に収められたパヴァーヌにおいてです(カピローラは、強弱記号のピアノを初めて使った人です!)。
カピローラ:リュート曲集〜パヴァーヌ(Padoana descorda)
しかし、ここでのトレモロは、隣り合った音との1〜2往復程度の反復を想定されています。
さらに、カッチーニの曲集《新しい音楽》(1602年)の中では、歌唱法として、同じ音の反復が「トリル」と書かれています。
「どっちだよ!」と思われた方……本当にその通りです。このときのトレモロやトリルは、かなりあやふやなもので、トレモロをトリルと呼ぶこともありましたし、その逆もまた然りでした。
1624年、モンテヴェルディの《タンクレディとクロリンダの戦い》の弦楽器において、同音反復のトレモロ(同じ音を弓で反復する奏法)が使われました。弦楽器によるトレモロの最初の曲です。この曲は、ピツィカートが初めて使われた曲でもあります!
のちに、この奏法によるトレモロは多くの曲で用いられ、ざわめきを表したり、焦燥感を掻き立てるための効果として登場するようになりました。
ほかにも、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《美しく青きドナウ》の冒頭などで見られる朝靄のような、まるでヴェールに包まれた雰囲気を出す美しいトレモロなど、トレモロの先に広がる世界は実に広いのです!
トレモロを聴いてみよう
1. モンテヴェルディ:タンクレディとクロリンダの戦い
2. ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》作品68〜第4楽章「雷雨、嵐」
3. パガニーニ:24のカプリス〜第6番 ト短調
4. ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》〜序曲
5. ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ《美しく青きドナウ》作品314
6. ドビュッシー:牧神の午後の前奏曲(ラヴェルによる4手ピアノ版)
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly