ポルカ:語源は「半分」を意味するチェコ語が有力! オーストリアやドイツでも大人気に
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第87回は「ポルカ」。
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
ニューイヤーコンサートでも、ワルツと並んで多く演奏される、ポルカ。2拍子の速い踊りで、陽気な雰囲気が漂っていることが特徴です。
ポルカの語源にはさまざまな説がありますが、チェコ語で半分を意味するpůlkaから来た説が有力です。ほかにも、チェコ語でポーランド人の女性を意味するpolskaから来た説がありますが、こちらの説は裏付け不足なのか、あまり積極的に語られません。
1834年、ある天気の良い日曜日。コステレツ・ナト・ラベムというチェコの小さな村で、当時25歳だったアンナ・スレツァコヴァ(Anna Slezáková)という女性が、「ニムラおじさんが白い馬を買った」というチェコ民謡に踊りを付けて、自ら踊ったことが起源だそうです。これをたまたま、ヨゼフ・ネルダ(Josef Neruda)という音楽教師でオルガニストだった人物が目撃し、その詳細を記録しています。
考えてみれば、もともと踊りではなく歌うだけの音楽だったものに、いい感じのステップをつけて踊るというのは、なかなか簡単なことではないかもしれません。しかし、それが踊りやすかったことから、似たようなチェコの民謡でも踊られるようになります。
そして、踊りがつけられた民謡が4分の2拍子(2/4)であることから、půlka(チェコ語で「半分」の意)と呼ばれるようになりました。
チェコ民謡「ニムラおじさんが白い馬を買った」
基本的なポルカは、「タタター、タタター」というリズムが特徴的ですが、他にもいろいろなリズムが存在します。
それに合わせてジャンプをしたり、男女で手をつないでくるくると回ったり、というのがポルカの振り付けです。複数の男女のグループと踊る際は、踊りの途中でパートナーを交換して踊ることもあります。
こうしてチェコを中心に人気となったポルカは、当時チェコを支配していたオーストリア帝国や隣国ドイツで流行します。特にオーストリアのウィーンでは、ギャロップに次ぐ踊りとして、頻繁に踊られるようになります。このときにチェコ語のpůlkaが、ドイツ語でPolkaと呼ばれるようになったとされています。
そんなポルカには、普通のポルカだけでなく、さまざまな種類のポルカがあります!
シュネルポルカ(ポルカ・シュネル)
ドイツ語で速いを意味するシュネル(schnell)がくっついた、シュネルポルカ(ポルカ・シュネル)です。特徴は曲名の通り、普通のポルカよりも速いことです。
さらに拍子も2/4拍子のものだけでなく、4/
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ・シュネル《観光列車》作品281、ポルカ・シュネル《雷鳴と電光》作品324、E. シュトラウス:ポルカ・シュネル《速達郵便で》
ポルカ・マズルカ
1840年ごろから作曲されるようになった、ポルカ・マズルカは、ポーランドの踊りであるマズルカとクラコヴィアクをポルカに取り入れた踊りとなっています。
なぜこの組み合わせで曲が書かれるようになったかというと、「愛国心」がキーワードになります。ポーランドには、これまでさまざまな国に占領されたのにもかかわらず、何度も主権を取り返したという歴史があります。その中でも、1830年11月にポーランドで発生した、ロシアの支配に対する反乱運動(11月蜂起)がきっかけとなり、愛国心の象徴として、ポーランドの踊りをポルカと組み合わせた音楽が書かれるようになりました。
拍子は3/4拍子ですが、ワルツと違って、1拍目が強調されます。そして、本家のマズルカとの違いは、ポルカの振り付けで踊れるマズルカという点です。
ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》〜第1幕より「忘れることこそ人生の幸福」、ヨゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ《とんぼ》作品204、
ポルカはワルツと同様に、ヨーロッパをはじめ、アメリカでも大人気となりました。そんなポルカやワルツを、家でも演奏したい! という人たちがどんどんと増え、ピアノ版のポルカやワルツがたくさん売れるようになりました。
それらの楽譜の表紙を見てみると、1曲1曲のタイトルに合わせて、こだわったイラストが描かれています!
今でいう、ジャケ買いのようなものが当時にもあったそうですが、当時はインターネットもなければ、CDもありませんし、音楽を聴きたければ自分で弾くしかありませんでした。
そんななかで、ポルカやワルツは、いろんな人たちに愛され、現在でも頻繁に演奏される音楽となったのです。
ご馳走を目の前に、足を放り投げて寝ている作曲者の絵が描かれています。
ポルカを聴いてみよう
1. 作者不詳(19世紀ごろ?):クラリネット・ポルカ
2. スメタナ:歌劇《売られた花嫁》〜第1幕より「おいでよ娘さんたち、踊ろうよ」
3. ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1集〜第3曲(ポルカ)
4. ラフマニノフ:イタリアン・ポルカ
5. マルティヌー:練習曲とポルカ〜第2巻より第4曲 ポルカ
6. ストラヴィンスキー:組曲第2番〜第3曲 ポルカ
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