ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』刑事と殺人鬼が入れ替わり《運命》も変化!?
ドラマをよりドラマチックに盛り上げているクラシック音楽を紹介する連載。
第4回は、刑事と犯罪者の魂が入れ替わるドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』。2人が「運命」に翻弄されるときに流れる、ベートーヴェン作品の展開とは?
1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...
太陽と月、入れ替わった運命
人と人の魂が入れ替わるだなんて、まさに「運命の扉が開く」音楽を流すに持ってこいのドラマである。
1月17日にスタートしたドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)は、警視庁捜査一課の女性刑事と猟奇的な殺人鬼の魂が入れ替わる物語だ。
2人は女と男、善と悪、刑事と犯罪者、といった点だけでなく、人柄やたたずまいも正反対。
刑事の望月彩子(演:綾瀬はるか)は「手柄を取る!」と奮闘する正義感のある女性。しかしあまりに真っすぐ突進していくため、過去に大きなミスをしでかして周囲から煙たがられている。
一方、殺人鬼とされる日高陽斗(演:高橋一生)は、敏腕経営者。愛想と落ち着きでジェントルマンを装っているが、その笑顔はどうも胡散臭く、時折見せる無機質な瞳はサイコな印象を与える。
2人の違いはまるで「太陽と月」のよう。まさに日高の口から、その明確な対比をほのめかす「シヤカナローの花の伝説」が語られる。
知っていますか?
本当は、月は太陽に、太陽は月になるはずだったんですよ。でも、シヤカナローの花を盗んだから——。
月は太陽に、太陽は月になった。
運命が入れ替わってしまったんですよ。
まったくの別人同士の魂が入れ替わることは、背負う運命までも入れ替わってしまうということ。
そんな想定外の「運命」を利用し、追い込み追い込まれ、新たな「運命」すら生み出していくのか——そんな展開への想像が捗る。
背負うはずのなかった「運命」に説得力を与えるベートーヴェン
劇中にサウンドトラックとして登場するのは、ベートーヴェンの交響曲第5番 《運命》。特に冒頭の「ダダダダーン」の4音が何度も現れる。
序盤はユーモアなアレンジ版ばかり登場するが、徐々に物語はシリアスさを増し、ようやくクライマックスを迎えてオーケストラによる原曲が登場する。望月が自らの魂が日高の体に宿されていることに気づき、絶句するシーンだ。
ベートーヴェンの弟子によると、ベートーヴェンは《運命》の冒頭4音について「運命はこのように扉を叩く」と話したのだそう。
しかしこのエピソードの信憑性は薄く、副題の《運命》も後付けに過ぎない。それでもなお、このモチーフは「運命が訪れた」と聴く者に息を飲ませるほどドラマチックだ。
まさにベートーヴェンも、音楽家でありながら聴力を失ってしまうという「背負うとは思っていなかった運命を与えられた」人物。だからこそ、《運命》の音楽はよりドラマに説得性を与える。
日高の姿になってしまった望月は「こんなのあり得ない」とうろたえるのだが、想定外の運命を与えられた人間はこんな姿になるのかと思う。
まだスタートしたばかりの『天国と地獄~サイコな2人~』。新たな運命を背負い出した2人は、今後の展開をいかにドライブしていくのだろうか。
放送:毎週日曜21:00~21:54
製作著作:TBS
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
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