音楽ジャンルや舞台のカルチャーが交差する多彩なプログラム——池袋西口広場に立つ東京芸術劇場
新たな文化施設の建設が進む池袋西口で、中心的な存在なのが東京芸術劇場。オーケストラやオペラ、吹奏楽、ジャズなどの多彩な音楽や、さまざまな舞台芸術を発信している。世界に一つしかない回転式のパイプオルガンのコンサートを毎月1回ほど開催し、GWには赤ちゃんからシニアまで楽しめる「TACT FESTIVAL」(タクト・フェスティバル)を音楽と演劇の枠組みを越えて行なうなど、公共のホールとして広く創造発信するほか、2つのアカデミーを開設して人材育成にも努めている。
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
音楽と演劇の両輪で創造発信する
池袋にある東京芸術劇場は、東京都の文化施設である。音楽専用のコンサートホール、演劇・舞踊・ミュージカルなどに使われるプレイハウス、シアターイースト、シアターウエストの4つのホールを有し、そのほか、ギャラリーや展示スペースも併せもつ。2009年から野田秀樹が芸術監督を務め、演劇部門では野田色の濃いプログラムが組まれている。
音楽部門では、「海外オーケストラシリーズ」、「東京芸術劇場シアターオペラ」、「芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー」、「オルガン・ア・ラ・カルト」、「NEO-SYNPHONIC JAZZ at 芸劇」など、オーケストラ、オペラ、吹奏楽、ジャズなど多彩な公演が提供される。
話題性でいえば、「海外オーケストラシリーズ」におけるフィンランドの作曲家・指揮者エサ=ペッカ・サロネンと、1990年の芸劇オープニング公演以来のいちばん近しいフィルハーモニア管弦楽団による3公演(2020年1月)、「東京芸術劇場シアターオペラ Vol.13」で振付家・ダンサー矢内原美邦が演出するオペラ《ラ・トラヴィアータ》(椿姫)(2020年2月)であろう。
はじめの一歩としてオススメなのは、東京芸術劇場が誇るパイプオルガンのコンサート。コンサートホールのオルガンは回転可能な2面に設置され、クラシック・デザイン面にはルネサンス様式とバロック様式の2台のオルガンがあり、モダン・デザイン面には19世紀から現代までの音楽に対応するオルガンがある。フランスのマルク・ガルニエ社製。
昼12時15分から約30分の「ランチタイム・パイプオルガンコンサート」と、夜7時半から約1時間の「ナイトタイム・パイプオルガンコンサート」がある。
東京芸術劇場コンサートホール・ジェネラルマネージャーの鈴木順子さんは「世界でも一つの回転するオルガンです。毎月1回、ナイトタイムかランチタイムのコンサートがあり、できるだけたくさんの方に来てもらえるように低料金(夜は1000円、昼は500円)に設定しています」と語る。
2019年5月4~6日には「TACT FESTIVAL 2019」(タクト・フェスティバル/TACT =Theater Arts for Children and Teens)が開催され、5月5日には鈴木優人&読売日本交響楽団の「マサト先生のミュージック・エデュケーション・プログラム ~リズム! リズム! リズム!~」がある。
鈴木さんは「管弦楽入門のために久石譲さんが書いた『オーケストラシリーズ となりのトトロ』という曲があるので、フルオーケストラと温水洋一さんの語りを入れて、楽器紹介もします。また、鈴木優人さんが『ライヒを入れたい』と言っていたので、打楽器やピアノが活躍するスティーヴ・ライヒのオーケストラ作品を入れます。そして最後はラヴェルの《ボレロ》です」と語る。子ども向けのプログラムだが、大人も十分に楽しめそうである。
東京芸術劇場内は、ショップやレストランも充実している。
2階には、2018年6月にオープンしたばかりのカフェ「ビチェリン メトロポリタンシアター」がある。1763年にトリノで創業されたイタリアン・カフェの老舗。プッチーニやヘミングウェイが愛したという。看板メニューは店名でもあるチョコレートドリンク「ビチェリン」。
しっかりと食べたいなら、同じく2階の本格的なイタリアン・レストラン「アル・テアトロ」。終演後に一杯飲んで感想を語り合いたいときは、1階にあるベルギービールカフェ「ベル・オーブ」がオススメ。また1階の「シアターアートショップ」ではアート・音楽系のグッズが買える。開演までのひとときを過ごすのもよい。
現在、東京芸術劇場に隣接する広場「池袋西口公園」(豊島区が管理)では、野外劇場を建設するための大規模な工事が行なわれている。クラシック・コンサートから演劇、イベントまで使える多目的ステージとして2019年11月完成予定。今後、東京芸術劇場との提携事業も予定されている。池袋駅西口前の風景が変わり、一層、音楽が楽しめる街となるだろう。
Vol.132 2019年5月23日(木) オルガン:都築由理江 発売:3月20日(水)
Vol.133 2019年7月18日(木) オルガン:小野なおみ 発売:5月29日(水)
Vol.134 2019年9月26日(木) オルガン:安杏菜 発売:7月24日(水)
Vol.135 2019年11月14日(木) オルガン:森亮子 発売:10月2日(水)
Vol.136 2020年1月16日(木) オルガン:川越聡子 発売:11月20日(水)
Vol.137 2020年3月12日(木) オルガン:平井靖子 発売:1月22日(水)
[各回]11:15開場、12:15開演、12:45終演予定
料金:全席自由500円
詳細はこちら
Vol.26 2019年4月18日(木) オルガン:湯口依子 発売:2月20日(水)
Vol.27 2019年6月20日(木) オルガン:小林英之 発売:4月24日(水)
Vol.28 2019年8月29日(木) オルガン:原田靖子 発売:6月26日(水)
Vol.29 2019年10月17日(木) オルガン:フロリアン・パギッチュ 発売:
9月4日(水)
Vol.30 2020年2月13日(木) オルガン:新山恵理、合唱:The Metropolitan Chorus of Tokyo ※松下耕/東京芸術劇場 新作委嘱作品、世界初演 発売:12月25日(水)
[各回]18:30ロビー開場、19:30開演、20:30終演予定
料金:全席指定1,000円
詳細はこちら
日時: 2020年2月22日(土)
出演: ヘンリク・シェーファー(指揮)、矢内原美邦(演出)、読売日本交響楽団(管弦楽)ほか
曲目: ヴェルディ『ラ・トラヴィアータ』
日時: 2020年1月23日 (木)・28日 (火)・29日 (水)19:00開演
出演: エサ=ペッカ・サロネン(指揮)、庄司紗矢香(ヴァイオリン)、フィルハーモニア管弦楽団(管弦楽)ほか
曲目:
[プログラムA]ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番、ストラヴィンスキー/バレエ音楽『火の鳥』 ほか
[プログラムB]ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』 ほか
[プログラムC]マーラー/交響曲第9番 ほか
問い合わせ: 東京芸術劇場ボックスオフィス Tel.0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)
会場: 東京芸術劇場
[運営](公財)東京都歴史文化財団
[座席数] コンサートホール1999席
プレイハウス834席+立ち見90人
シアターイースト272~324席
シアターウエスト195~257席
[オープン]1990年
〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-8-1
[公演問い合わせ]0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)
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